【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

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第十話

リリアス・イルマン公爵夫人は、複雑な思いでいた。女性に興味がなかった次男の思い人アリサ・バーグマン。家格の釣り合いは取れないから、親戚筋の侯爵の養女にしてから結婚。それはかまわない。次男であるリュエルならば。
しかし、問題はアリサの記憶喪失にある。記憶が戻ったら別人ということもありうる。
リュエルと同じように仲睦まじく暮らせるかわからない。

それでも、会ってみようと思うほど、アリサの存在がリュエルの中で大きくなっているのだ。
「そんなに緊張しなくていいわ。おばさんとちょっとお話してほしいだけよ」
そう声をかけてみると、
きれいなカーテシーで、
「アッアリサ・バーグマンです。リューさまのお母様」
カーテシーだけ思い出したのかしら?
リリアス夫人は緊張しすぎのアリサをチラッと観察した。
今日は気合い入れておめかししてきたらしい。化粧はしていないが、本来の15歳の若さが溌剌としていて、ちょっとうらやましい。

リリアス夫人は今も美しいが、リュエルと色が似ており、若い時は男達の憧れで、誰が射止めるのかと注目の的だった。
なんてことを思い出しつつ、アリサは目立たないがずいぶん愛らしい顔立ちだなと思った。磨き方次第だ。
リリアス夫人ならば、アリサを別人のように美しく育てることができる。
その点でも、興味をそそられた。
「お菓子は何が好きかしら?」
「なんでも!サムの料理は何でも好きです!」
なんだか緊張だけじゃなく気合いも入ってるわね、とリリアス夫人は不思議に思った。
「緊張していて、あとはどうしたのかしら?私がこわい?」
「アリサにはお母様いません。リューさまのお母様うらやましいの」
目に涙が溜まっていく。あらあら。リリアス夫人は意地悪をしてるつもりはないのだが、アリサには実の母がいないことを思い出す。
「こちらにいらっしゃい」
リリアス夫人は持っていたハンカチで、
アリサの涙を拭いた。

「アリサのお母様になってくれますか?この邸にいる間だけ」
リリアス夫人はニッコリ笑った。
「期間限定はないわ。ずっとお母様と呼んでいいわ。アリサちゃん」
「お母様、ありがとう」
輝く笑顔。さっき泣いてたのが嘘のようだ。
「では、お茶とお菓子をいただきましょう」
ふたりの優しいお茶会が始まった。

お茶会に関わっていた使用人たちも緊張していたが、アリサが無事にリリアス夫人に好かれたようで安心した。
人目がなければ、よっしゃ!と言いたいところだった。
アリサは公爵家使用人のかなりの数を味方にしていた。

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