上 下
6 / 10

第六話

しおりを挟む
ミラルカは、王妃様の決めた通り、宰相の令息と会うことになった。
場所は王宮のガゼボ。薔薇が美しい。
優しい人だといいなと思った。前に会ったときは少しだけだから、見た目しかわからなかった。
落ち着いていて、綺麗な人という印象だった。
将来宰相になる可能性が高いから、レベルの高い教育を受け始めたと聞いている。


レディオナは、やっと王都カルバナに着いた。皇帝との謁見もすぐに行われる予定だ。意外なことに皇帝には正妃がいない。ハーレムのある国だが、そこにも妃は1人もいないらしい。
自分は人質だから、ハーレムの住人になるのだと思うのだが、1人なのは驚いた。レディオナはまだ7歳なのだ。
もしかして皇帝は小さな女の子が好きなタイプなのだろうか。レディオナは不謹慎なことを考えた。

馬車に乗るときも降りるときも、騎士たちは紳士的で、到底人質にする態度ではなかった。その騎士たちに囲まれて着いた皇城は見事な美しい建物だった。騎士たちに皇帝との謁見の間に案内されている。騎士たちは見張りなのかもしれないが、みんな丁重だ。
「お疲れのところ、恐縮ですが、陛下がどうしてもすぐ会いたいとのことでして‥」

謁見の間に入ると、そこには美のすべてを持つ皇帝がいた。
髪は銀色、瞳は薄紫、綺麗に刺繍の入った服。すべてに見惚れてしまう。
「よく来てくれた。レディオナ。
貴方が我が国の救世主なのだ」
突然言われて、一体何のことなのか、レディオナは戸惑った。
「救世主ですか?」
「そうだ」
そう言うと皇帝は、掌を広げて見せた。
そこには、小さな小さな女の子がいた。
レディオナのリルディの女の子版だ。
ただ、ぐったりしていて、今にも消えてしまいそうに薄くなっている。
「あ!」
リルディが自ら飛んできて、皇帝の掌に乗った。
「レディオナ、手を貸して」
リルディが必死に手を伸ばす。
何を貸せばいいのかわからないまま、文字通り手を出した。
それでよかったらしい。リルディとレディオナの手から、光が満ちた。
その光は女の子を柔らかく包み込んだ。
しばらくして光が女の子に取り込まれ、
消えかけていた姿がはっきりした。
ぐったりしていたのが元気になったようで、立ち上がった。
「あ!花の妖精じゃない。うちに来たの?」
「ミリア、その前に言うことがあるだろう」
皇帝に嗜められたミリアは、ぺこりとおじきをして
「ありがとう、花の妖精とそのお姫様」
と言って綺麗に笑った。
彼女は土の妖精だと言う。彼女が消えれば、帝国の土は何も育てられない土になっていた。
「貴方をずっと探していたのだ」
美しい皇帝は優しく微笑んだ。
しおりを挟む

処理中です...