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第二話
孤児院での暮らしは思っていたよりさらにつらかった。物心ついたときには、伯爵家のご令嬢として暮らしてきたのだ。着替えさえ、自分一人でできなかった。ただ孤児たちが着ている服は伯爵家で着ていたドレスよりはうんと着替えやすい。ルーディはなんとか一人で着替えられるようになった。茶色いワンピースは、今まで着てきた可愛い飾りがいっぱい付いたドレスと比べることもできないほど粗末だったが、他の孤児もみんな同じ服を着ている。文句はなかった。本当なら、ルーディだって、ドレスを着る機会など一生なかったのだから。
「お母様」
何よりつらいのは、父母や弟にもう二度と会えないことだ。伯爵家での暮らしを時々思い出す。そんなとき、ブローチを握りしめて、ルーディはひっそりと泣いた。ルーディは孤児院に来て半年過ぎたが、馴染むことができないでいた。友達もひとりもいない。一言もしゃべらずに、黙々と作業をしていた。その作業は日によってちがうのだが、ルーディはしばらく掃除担当になった。伯爵家ではメイド達の仕事だった。慣れないことに、ルーディは失敗ばかりしていた。より一層他の子どもたちとの距離が開いた。
「私、ルーディと言いますわ。よろしくお願いします」
最初の子どもたちへの挨拶で、ルーディは失敗した。ルーディの話し方は孤児たちとはまったくちがう。それにすぐ気がついた子どもたちから、距離を置かれてしまった。しかし、長い間話してきた言葉遣いを急に変えるのは難しい。それから、ルーディは協力し合う作業でも、必要なこと以外一切口をきかなくなった。
「ルーディ、待って」
孤児院のシスターマリアが話しかけてきた。ルーディは、2階の窓から下を見ていただけだ。ただそれだけだ。だが、シスターマリアは危機感でいっぱいだった。ルーディの暗い目。2階の窓から外を見る強い視線。
どう見てもルーディは飛び降りようとしていたのだ。
「なんですの?シスターマリア」
本人に自覚はないようだった。ルーディはシスターマリアとだけは話をした。年齢も近いし、シスターマリアは教養があってルーディの話を理解してくれる。
ルーディは今は気持ちがいっぱいいっぱいで将来のことまで考えられなかった。あと一年半でどうやって生きるか考えなくてはならない。伯爵家にいたときは、ルーディは学園の成績がよかったから、王宮の文官になることを夢見ていた。でも、その夢ももはや叶うことはない。文官はどんな下級文官でも、貴族でなくてはならないのだ。ルーディは14歳になって半年。足元が、急に崩れて何もなくなってしまったのだ。すぐに次のことを考える余裕が今はなかった。けれど、16歳から働くためにはそろそろ見習いに行かなくてはならない。
「ルーディ、ここはどうかしら?」
シスターマリアはルーディが勤めるのに向いていそうな求人をいくつか持ってきた。
そのひとつのドレスのデザイナーでの下働きはルーディ向きに思えた。高位貴族用ではないけれど、低位貴族のドレスをオーダーメイドで作るお店だった。ルーディなら、話し方やドレスの知識が活かせるから、向いていると思ったのだ。ルーディは何も考えずにこう返事をしていた。
「シスター、ありがとうございます。どこまで出来るかわかりませんが、やってみたいです」
「お母様」
何よりつらいのは、父母や弟にもう二度と会えないことだ。伯爵家での暮らしを時々思い出す。そんなとき、ブローチを握りしめて、ルーディはひっそりと泣いた。ルーディは孤児院に来て半年過ぎたが、馴染むことができないでいた。友達もひとりもいない。一言もしゃべらずに、黙々と作業をしていた。その作業は日によってちがうのだが、ルーディはしばらく掃除担当になった。伯爵家ではメイド達の仕事だった。慣れないことに、ルーディは失敗ばかりしていた。より一層他の子どもたちとの距離が開いた。
「私、ルーディと言いますわ。よろしくお願いします」
最初の子どもたちへの挨拶で、ルーディは失敗した。ルーディの話し方は孤児たちとはまったくちがう。それにすぐ気がついた子どもたちから、距離を置かれてしまった。しかし、長い間話してきた言葉遣いを急に変えるのは難しい。それから、ルーディは協力し合う作業でも、必要なこと以外一切口をきかなくなった。
「ルーディ、待って」
孤児院のシスターマリアが話しかけてきた。ルーディは、2階の窓から下を見ていただけだ。ただそれだけだ。だが、シスターマリアは危機感でいっぱいだった。ルーディの暗い目。2階の窓から外を見る強い視線。
どう見てもルーディは飛び降りようとしていたのだ。
「なんですの?シスターマリア」
本人に自覚はないようだった。ルーディはシスターマリアとだけは話をした。年齢も近いし、シスターマリアは教養があってルーディの話を理解してくれる。
ルーディは今は気持ちがいっぱいいっぱいで将来のことまで考えられなかった。あと一年半でどうやって生きるか考えなくてはならない。伯爵家にいたときは、ルーディは学園の成績がよかったから、王宮の文官になることを夢見ていた。でも、その夢ももはや叶うことはない。文官はどんな下級文官でも、貴族でなくてはならないのだ。ルーディは14歳になって半年。足元が、急に崩れて何もなくなってしまったのだ。すぐに次のことを考える余裕が今はなかった。けれど、16歳から働くためにはそろそろ見習いに行かなくてはならない。
「ルーディ、ここはどうかしら?」
シスターマリアはルーディが勤めるのに向いていそうな求人をいくつか持ってきた。
そのひとつのドレスのデザイナーでの下働きはルーディ向きに思えた。高位貴族用ではないけれど、低位貴族のドレスをオーダーメイドで作るお店だった。ルーディなら、話し方やドレスの知識が活かせるから、向いていると思ったのだ。ルーディは何も考えずにこう返事をしていた。
「シスター、ありがとうございます。どこまで出来るかわかりませんが、やってみたいです」
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