【完結】かなわぬ夢を見て

ここ

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第八話

「ルーディ、また来たわ。あの男は何?追い払いましょうか?」
「あ、あの‥」
「え?あの人が?サンタナ公爵の三男?ルーディの憧れの先輩?」
「あ、その、研究に夢中なときはあんな感じですけど、ちゃんとしたら、すごくかっこいいんです」
「ってことはルーディ見た目に弱いタイプ?貢がされてないでしょうね?」
店長と店員のみんなに囲まれて、ルーディは慌てた。
「憧れだけで、今は研究の一環に協力してるだけです。三男とはいえ公爵家ですよ?平民の私が何かできるわけがありません」
「そうかなぁ?ルーディくらい可愛かったら関係ない気がするけど」
「まぁ、正式に結婚は難しいかもしれないけど」
ルーディはこの間突然やって来たアーデル・サンタナに驚かされた。孤児院に戻る時思い浮かべた憧れの先輩。でも、なんだかモジャモジャの顔をしていた。
「母上に聞いたんだ。ルーディは布に詳しいだろう?今の研究でいろいろな布を試したくてな。協力してくれないか?」
ルーディは先輩が自分の名前を覚えていることに驚いた。学園で先輩と話したことはなかった。少しでも、先輩と話せるなら、協力するに決まっている。ルーディは久しぶりに恋する女の子に戻って、頬を染めた。

それから週の半分くらいはアーデル先輩と会うことになって、実験以外のいろいろな話もするようになった。アーデル先輩はたまにきちんと髭を剃り、麗しいと評判の顔を見せて、ドレスショップのみんなを驚かせた。そうしたら、ルーディはこのままだとまずいと感じるようになった。本気になってしまいそうだ。現実的ではない。即座に頭の中の方向性を変えねばならない。回れ、右だ。恋人がほしいなら、貴族ではなくて平民の恋人を作らなければ。

「あら、最近ルーディはなんとなくご機嫌ね?」
ミルエンズ夫人は元の娘のことだ。すぐに気がついた。
「ルーディ、相談したくない?」
新しいドレスを作る相談をするために訪れたお客様に恋愛相談なんてできない。
「お母様。それは無理です」
「じゃあ勤務時間外ならいいでしょう?この間のドレスそろそろできてるでしょう?今日のお仕事が終わったら、うちにらっしゃい」
お母様と呼ばないなら、ドレスの代金払わないわ、とミルエンズ夫人は言った。ちゃんとお金を払わない場合、ミルエンズ夫人の方が不利になる。変な脅しだ。リハ店長を見たら、こくりと頷く。ミルエンズ夫人の宣伝でかなり儲かっていることもあり、多少の特別待遇はありらしい。ドレスのお届けも同じ感じかな、と思いつつ、リハ店長を見ると、にっこり笑顔で了承された。

「まぁ、サンタナ公爵夫人の?それで向こうはなんて言ってるの?」
「何にも言ってない。だって、先輩はそういうタイプじゃないもん」
ミルエンズ伯爵家に来ると、ルーディは無意識に昔の自分に戻っていた。しゃべり方は母である夫人に甘えたものになった。それを指摘しない夫人はニコニコ笑った。
「じゃあまずは、アーデル様の気持ちを確認なさい。そうしたら、うちの養女として嫁げばいいわ。実は籍はまだ抜いてなかったりして」
「え?」
「ライドが落ち着いたら、また相談しましょうって話ていたの。最初から。まさかすぐにお仕事し始めるとは思わなくて。ごめんなさい、ルーディ。伯爵は公爵家に嫁ぐのギリギリの身分だけど、三男なら可能性あると思うわ」



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