【完結】シュゼットのはなし

第二話

「わぁ」
父のマリナー伯爵に連れられて、シュゼットは王宮の夜会にやって来た。
王宮はシュゼットの想像以上に広くすべてが煌めいていた。
シュゼットは思わず、声を出していた。
「シュゼット、今夜はどうするんだったかい」
「はい、お父様。お淑やかにして、陛下にご挨拶します」
「うん。覚えているならいい」
いつもなら、伯爵は愛娘の頭を撫でているところだが、今夜はセットされた髪を乱さないよう我慢する。

シュゼットは、金髪緑眼で、親の目から見てもとてもかわいい子だ。その証拠に同じように親に連れられている男の子の視線を集めている。
ついでに男の子の親にも注目されている。むしろ、親の方が熱心かもしれない。
まだ13歳とはいえ、多くの親が婚約者をすでに決めているか、探している。

シュゼットは今でこそ完璧な人型だが、子猫に変身できる。獣人はこの国ではいないこともないし、他国で聞くような差別もないのだが、偏見を持つ人も中にはいる。
だから、伯爵は、シュゼットを簡単に婚約させるわけにはいかない。

今夜は特別な夜会で、13歳の男女が集まり、大人への第一歩を進む。恐れ多くも国王陛下にお言葉をいただき、適正のある魔法がわかる。
シュゼットは無邪気に、
「お父様。あのお菓子はいつ食べられるの？」
なんて聞いてくる。我が娘ながら、のんびりした子だ。
獣人のこともあるし、伯爵は何事も慎重にならざるをえない。

伯爵の番になると、高らかに
「ビリー・マリナー伯爵、御息女シュゼット様、御前に」
と呼ばれた。国王陛下の近くに寄り、深く礼をする。この一連の動作だけでも一週間みっちり練習したのだ。運動が得意なシュゼットができないわけがない。
「マリナー伯爵家に幸いあらんことを」
国王陛下はしわがれた声で、続けた。
「シュゼット嬢の魔力をはかろう」

国王陛下の目の前に大きな水晶が置いてある。この水晶に手をかざすと、自分の魔法の属性がわかる。最近は魔法使いが少ないので、獣人のシュゼットが、魔力持ちである可能性は低い。
「おぉ、これは」
シュゼットが手をかざすと、水晶は虹色に輝いた。