【完結】虐げられた少女は優しい婚約者に巡り会う

第五話

ナティは孤児院の場所をお店の人に教えてもらって、なんとかたどり着いた。
夜になってしまったが、ごめんくださいと声をかけてみると、パタパタと足音がして、優しい顔をした母親くらいの年齢の女性が出てきた。

「あの‥親に捨てられてしまって、ご飯を少しでいいので分けてもらえないでしょうか？」
ナティは泣きながら、なんとか言葉にした。
優しそうな女性は、にっこりと笑った。
「ご飯とお風呂とベッド、洋服をあげますよ。入って」

ナティは奇跡が起きたと思った。ご飯だけではなく、ナティに必要なものをすべてくれるというのだ。

お風呂では、何年かぶりに髪を洗った。
髪を乾かしながら、髪の毛を見ると、綺麗な銀髪だった。食事もとてもおいしかった。食べたら、自分たちでお皿を洗う。
ナティは家事はすべてできたから、とまどうことなく、綺麗にお皿を洗った。

「洋服はこっちをまずは昼に着て、夜はこっちね。ベッドはこちら」
他の子どもたちが、ナティをちらちら見て気にしている。新入りがどんな人間なのか、警戒心と好奇心があふれていた。

ナティは、初めてベッドで寝ることに興奮していて、他の子どもに気づいていなかった。まだ寒い季節だから、毛布まである。ナティは、毛布を洗ったことはあるが使ったことはなかった。

孤児院での生活は伯爵家の生活と比べものにならないほど幸せだった。
他の子どもたちには貴族だったことは言えなかったが、ともかく毎日食べ物に困って、家事を必死にやっていたことを告げた。

ナティは孤児院の生活にすっかり慣れた。久しぶりに鏡を見たら、どんよりしていた目は青空みたいな碧眼に戻っていた。そうすると、ナティの外見は目立った。平民の親に捨てられた子どもには到底見えなかった。