【完結】いつだって貴方の幸せを祈っております

ここ

文字の大きさ
1 / 10

第一話

しおりを挟む
*この物語の主人公は、人によってはイラつくしゃべり方をします。
なんでも大丈夫な方はそのまま読んでいただけたら、うれしいです。
イラつくと思ったらすぐ閉じてください。


「ごめんなさい、ヒールを引っかけてしまってぇ」
ピンク髪に翡翠の瞳。小柄で、ノエルに寄りかかっていても体重を感じさせない。
「いや、大丈夫だ。怪我はないか?」
周囲は大騒ぎだ。ノエルには浮ついた噂が一つもなくて、ノエルに寄りかかっているミーナにはいろんな噂があるから。
「助かりました。ありがとうございますぅ」
ミーナは笑顔で、ノエルを見上げる。
上目遣いに効果があるはずだ。ミーナはこの戦法で負けたことがない。
「気にしなくていい」
ノエルは素っ気なかった。すぐにその場を離れようとする。ミーナは意外に思ったが、気にしなかった。
「足が痛くて立てないのですぅ」
嘘だ。本当はこのままマラソン大会に出場できるほど体力も気力もある。

「仕方がないな」
ノエルのつぶやきはミーナにしか聞こえていなかった。ふわりと体が浮く。ノエルにお姫様抱っこされたのだ。今日は偵察程度の接触と思っていたので、予想外のラッキーだ。それを見ていた生徒たちが、悲鳴を上げた。
「うるさい」
ノエルはそれほど大きな声を出していないが、周囲は静まった。
「さすがですぅ。ノエル様はガラナ公爵家の方ですもの」
「家は関係ないと思うが?」
ノエルは女嫌いで有名で、ミーナみたいに寄ってくるのは、自信過剰か恥知らずのどちらかだ。ミーナは自信過剰だなと、ノエルは見立てた。

保健室まで、その姿で現れたふたりを優しい先生が迎えて、ミーナの足首を診た。
「あらあらまあまあ、大変だわ。捻挫してる。これはしばらく痛くて大変ね。痛み止めの薬草と杖を貸し出すわよ。よく今まで平気な顔をしていたわね」
「身体強化の魔法をかけていたのですぅ」
ミーナの返事に一番驚いたのは、ノエルだ。ミーナは魔法を使えないと思っていたのだ。
「それにしても、不思議な組み合わせね。公爵と男爵で、クラスだってちがうでしょう?」
「足首をひねったところにノエル様がちょうどいらして、助けてくださいましたぁ」
ミーナは無邪気に笑ってみせた。ノエルを観察しながら。ノエルは用は済んだから、戻ろうとしか考えていないように見えた。やはり、敵は手強い。今まで落としてきた男たちとはちがう。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今夜で忘れる。

豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」 そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。 黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。 今はお互いに別の方と婚約しています。 「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」 なろう様でも公開中です。

私、悪役令嬢に戻ります!

豆狸
恋愛
ざまぁだけのお話。

彼女はだれからも愛される。

豆狸
恋愛
ランキュヌという少女は、だれからも愛される人間だった。 明るくて元気で、だれに対しても優しく思いやり深い。

愛してもいないのに

豆狸
恋愛
どうして前と違うのでしょう。 この記憶は本当のことではないのかもしれません。 ……本当のことでなかったなら良いのに。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

この愛は変わらない

豆狸
恋愛
私はエウジェニオ王太子殿下を愛しています。 この気持ちは永遠に変わりません。 十六歳で入学した学園の十八歳の卒業パーティで婚約を破棄されて、二年経って再構築を望まれた今も変わりません。変わらないはずです。 なろう様でも公開中です。

愛されない花嫁はいなくなりました。

豆狸
恋愛
私には以前の記憶がありません。 侍女のジータと川遊びに行ったとき、はしゃぎ過ぎて船から落ちてしまい、水に流されているうちに岩で頭を打って記憶を失ってしまったのです。 ……間抜け過ぎて自分が恥ずかしいです。

この世で彼女ひとり

豆狸
恋愛
──殿下。これを最後のお手紙にしたいと思っています。 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

真実の愛の言い分

豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」 私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。

処理中です...