【完結】わたくし、悪役令嬢になるんですの

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「え、わたくしが?」
「そうよ、あなたとの婚約を破棄して、王子は真実の愛にたどり着くのよ」
深夜、私の部屋に愛の女神シンファが突然現れました。部屋の中に紫色の神秘的な霞がかかったと思ったら、美しいという言葉では到底言い表せない女神様が、目の前にいたのです。
「あなたは悪役令嬢ってとこね」
女神様の目がキランと光りました。
「悪役令嬢?」
「そうよ、真実の愛の邪魔をして、嫌がらせをして、王子から婚約破棄させなさい、シャルリーン・ブレイムケイスト。筆頭公爵家のあなたがその性格で王子のそばにいるかぎり、王子はあなたに夢中なまま。それじゃ困るのよ」
セリス王子とは小さなときから、一緒に育ったようなものです。いきなりの女神シンファの言葉に私は固まってしまいました。
悪役令嬢ってなんでしょう?女神様にお聞きしてもよろしいのでしょうか?
「女神様、悪役令嬢にはどうしたらなれますか?」
「それ、その素直さ、庇護欲をくすぐる容姿。それをすべて利用しなさい。相手を信じさせて騙すのよ」

女神シンファがお部屋から消えた後も私は眠ることができませんでした。何が何だかわからなかったのもあります。セリス王子と婚約破棄しなければならない運命が悲しすぎたのもあります。だってセリスとは長い付き合いで、私はセリスが大好きなのです。それなのに、女神様は、別れなければならないと言いました。
「なぜ」
悲しすぎて、涙が止まらなくなりました。セリスとの思い出が頭の中にたくさん浮かんできました。小さな頃にかくれんぼをしたこと、真剣な目で婚約指輪をはめてくれたこと。それでも、私は悪役令嬢になるしかないのです。すべてはセリスのために。

「うちの可愛いお姫様を泣かせたのは誰だ?」
朝食の席で私の泣き腫らした目を見たお父様とお兄様が殺気立っています。これはよくない傾向です。2人とも魔法も剣も得意なのです。
「こわい夢を見ただけですの」
2人ともまだ殺気を消さずに私の様子を伺っています。
「こわい夢か。そんな夢を二度と見ないように、やはり、一緒に寝よう」
お兄様はごく真剣におっしゃいます。17歳にもなって、兄と同じベッドで寝るなんて考えられません。
「お兄様は心配性すぎますわ」
「いや、シルトの言うことはもっともだ。私も一緒に寝よう」
お父様もおかしいのです。生まれてくると同時にお母様を亡くした私に2人とも愛情をたっぷりと注いでくれることには感謝しています。けれども、常識を見失いすぎです。
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