【完結】たとえ雨が降っても

ここ

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俺には家族はいない。だから、もしもルメリアが俺の申し込みを受けてくれたら、初めて家族ができる。王都に旅立つ前の日の夜、俺は似合わない花束片手にルメリアの前にひざまづいた。
「ルメリア、俺と結婚してくれ」
緊張して返事を待つ俺に、ルメリアは声を飛ばしてくれた。
(いいけど‥物好きね)
俺はルメリアを抱きしめて、誓った。
「呪いを解いて夫婦で魔物ハンターやろう!」
(本当あなたって変わってる)
なんと言われても幸せな俺だったが、呪いの解呪については心配だった。ただ、ひとりだけ心当たりがあった。なぜ、すぐに思い出せなかったのか不思議なくらいの人だ。あの人ならあるいは。

ルメリアの体力を見ながら、ゆっくり進んで、やっと王都に着くと、祭りの季節だった。にぎやかで人がたくさんいる。俺はまず、心当たりの口うるさいばあさんを探した。人を探す魔法は得意ではないが、不得意でもない。居場所をすぐに見つけると、ルメリアの体調も考えて、馬車で行くことにした。
「おぉ、坊主。久しぶりじゃの」
第一声がこれだ。小さい時に知り合ったから、ずっと変わらない呼び方をする。
「そちらのきれいな嬢ちゃんは?」
「俺の嫁さん」
「はぁ。騙して連れてきたんじゃろ?」
「ちがうよ。もうわかってるだろ?早く見てくれよ」
「ふん」
ばあさんは、ルメリアの手を取ったり目を見たり、いろいろ触った末、
「これでどうじゃ?」
「あれ?嘘でしょう?私見えるし話せる!」
ばあさんの腕がいいのは確かだが、あの魔物討伐に出た後、何人にも見てもらって駄目だったのがうそみたいだ。
「まあ私が優秀なのは確かじゃが、そのとき見た全員が呪いを解かないように命令されてたんじゃろ。おそらく聖女がお前ほしさに、邪魔な女を始末しようとしたら、かえってお前たちがうまくいってしまい、今頃地団駄踏んどるわ」
「誰が俺を?」
「お前耳が悪くなったか?聖女がお前を好きだと気付かなかったのか?さすが鈍感じゃ」
俺は言葉もない。聖女様も素敵な女性だが、俺のタイプじゃなかった。それにしても、聖女なら王子と結婚だって普通にあるんだぜ?嘘だろう?

「まあ気づいてないのは、あなただけだったと思うわ」
ルメリアも同意する。
「えー、俺にはルメリアがいるし」
「まぁ、そういうとこじゃない」
「そうじゃ、そういうとこじゃ」
知らないうちにすごい人から、想われてた?でも、ルメリアの呪いが解けた喜びに比べたら、申し訳ないが、聖女様、ごめんなさい。
「ルメリア、結婚式したい?俺はウェディングドレス姿見たいな」
って本心から言っただけなのに、
「そういうところよ」
「そういうとこじゃ」
ふたりのレディに何やら納得されてる。
でも、平気。
俺、幸せだもん。
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