上 下
10 / 10

番外編 セレナのドレス

しおりを挟む
可愛い孫に、ソンタラー夫妻は甘々だった。教育はきちんと受けさせているが、それ以外は可愛くて可愛くてしかたないから、ふたりともセレナを大事にしていた。
「明日は仕立て屋が来ますからね、セレナのドレスをたくさん作りましょう」

ドレス!セレナはほとんど着たことがない。まだセレナは10歳。
可愛らしいドレスがほしかった。できたら、ピンク色の。
でも、そんなこと言ったら叩かれるかな。
セレナはまだ、実家での生活から抜け出せなくて、祖父母にもうまく甘えられなかった。

翌日、仕立て屋がやってきた。
「お初にお目にかかります。サルバード商会のナスルと申します。本日はお嬢様のドレスを中心にとのことでしたので、
お持ちいたしました」
祖母はニコニコしながら、
「私の可愛い孫娘ですの。ドレスは数着、それに合わせてアクセサリーと靴がほしいの」
「こちらなどいかがでしょう?」
ピンク色の、リボンがついたドレスだ。
セレナは祖母を見た。まだ不安だったのだ。
「近くで見ましょう」
祖母が優しくセレナの肩を抱いた。

そのドレスはセレナが思い描いていたのとそっくりだった。
「試着されますか?」
ナスルの言葉に頷きたいが、まだ不安だった。お祖母様の顔を見た。
ニコニコして、試着を勧められた。
セレナは少し安心して、ドレスを試着することにした。

着替えて姿見を見る。くるっと回ってみた。似合うかどうかはわからないけど、かわいいドレスだ。
お祖母様にも見てもらう。
「まぁ、かわいい。セレナによく似合うこと。こういうパステル系のドレスをもっと見せてちょうだい」

この日、孫に甘々な祖母がドレスやアクセサリーにいくら使ったかは内緒だ。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...