【完結】私ですか?ええ、愛されていません

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第十話

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「いいじゃないの、殿下、いえ、トルパ公爵のしたいようにさせてあげなさい」
マリン母様はそう言うけれど、お父様は普通じゃない。
「いいのよ、持て余していた愛情を注ぐ相手がいて幸せなだけなんだから」
「普通の範囲ならそうだけど、お父様はおかしいんだもの」
マリン母様はふふふと笑った。
「早く帰った方がいいわよ。見てないと何を買い集めてくるかわからないんじゃなくて?」
そうだ、とスリスタは思う。ドレスの次は靴で、その次は帽子。スリスタのサイズが変わったらまた買おうとか言ってた。お金があるってこわい。スリスタの最近知った事実だ。令嬢に必要なものはまだたくさんある。何とかして、お父様を普通のお父様に戻さねば。マリン母様の授業とお茶の後、スリスタは急いで帰る。

ラピス商会では、スリスタは一時休職扱いになっていた。王族だったとわかり、リイマも悩んでいた。公爵になったとはいえ、公爵令嬢が働いていてもいいものだろうか。
「いいんじゃないかしら。実家の商会を手伝う高位貴族はいるもの。それより、リイマはやることがあるんじゃない?これからのスリスタはモテモテ一直線よ」
「だから、選択肢を広げてからだよ。今のスリスタは自分の立場をわかってない。それに知り合いも少なすぎる」
「そんなこと言ってると誰かに取られてしまうわよ」
「運命の相手ならそんなことにはならない」
リイマは15歳で、来年には成人する。スリスタのことは可愛いと思っている。婚約者にするなら、スリスタだとも。けれど、まだ幼いスリスタに恋情は抱いてなかった。スリスタが大きくなるのを待ちたいのだが、貴族の婚約は早い。スリスタの年齢で婚約する事も珍しくないくらいだ。アラン公爵はスリスタをすぐ婚約させたりしないだろう。将来的に政略結婚にするかもあやしい。

「何にしても、スリスタの婚約者はトルパ公爵と張り合わなきゃならないだろうな」
スリスタは可愛い。あと数年すれば、身分ではなく本人に惹かれての求婚者が行列を成すだろう。その中から、スリスタは選ぶ立場だ。今、リイマが独占するべきではない。今なら、他を知らないスリスタはリイマとの婚約に頷くかもしれない。だが、広い世界を知ってからならどうだろう?スリスタが後悔するかもしれないことをしたくはない。

「お父様!」
「おかえり。スリスタ。お父様にご挨拶しておくれ」
そう言うと、公爵はスリスタを抱き上げた。毎回この挨拶をしないとスリスタはお部屋に入れない。嫌なわけではないけれど、お父様って大変なんだなあと思う。
「お父様、まさか」
公爵は笑った。
「気に入るコートがあの中にあるといいんだが‥」
スリスタは今日もお父様に負けた。
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