【完結】私ですか?ええ、愛されていません

ここ

文字の大きさ
12 / 13

第十二話

しおりを挟む
アランの大量プレゼントは止まったが、次は、お休みの日のデートに変わった。カフェかレストラン探検する、に方向を変えたものの、散財はひどい。邸の者全員にお土産を買うせいでもある。それはスリスタも止める気にはならなかった。アランは愛情深い人なのだ。彼がずっと絶望していたから、気づかなかったけれど。
「チェルシーのお墓を作りたい」
それは前から思っていたこと。けれど共同墓地に入れられたチェルシーの骨を特定することはこの世界では無理だ。骨はなくても、気持ちがあればいい。チェルシーの眠るところはアランのいるところ。そう思っていたが、なかなか踏み切れなかった。チェルシーは生きていると信じたかったからだ。スリスタを得て、アランは強くなった。
「チェルシーのお墓は庭に作りたい」
スリスタも頷いた。アランの愛情がいかに深いものか、身に沁みているスリスタは、母のお墓を作ってくれることがうれしかった。その日ふたりだけで、チェルシーの墓を訪れた。チェルシーの骨の代わりにチェルシーが大好きだった花を大量に埋めた。スリスタはチェルシーのことをたくさんは覚えていない。好きな花までは知らなかった。母娘の生活には余裕がなく、好きな花について考えたこともなかった。

いつか、とアランは考えた。いつか、スリスタは結婚する。そのときは絶対に好きな人しか認めない。両思いで、スリスタを大事にする男にしか譲らない。スリスタを守る立場を。そんな日は来てほしくないが、スリスタを自分に縛り付けるわけにはいかない。スリスタはこれから、いろいろな世界を見て動いて、いろいろな物を得て失くして生きねばならない。
「スリスタ」
今はまだ、スリスタは幼い。アランの腕の中にいてくれる。この短い貴重な時間を少しでも長く一緒に過ごしていきたい。

スリスタはもうマイナがうらやましくなくなった。自分と誰かを比べてもしかたないから。相手が幸せそうに見えて自分は惨めでも、それがすべてではないから。
「パパ、早く!」
スリスタは駆け出した。スリスタの大事な人は、慌ててスリスタを追いかけてくる。
「パパ、大好きよ!」
スリスタのその言葉にアランは立ち止まる。顔が真っ赤だ。スリスタは将来、とんでもない男泣かせの令嬢になるかもしれない。アランはこれからたくさん振り回されそうだ。それを人は幸福という。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

男の仕事に口を出すなと言ったのはあなたでしょうに、いまさら手伝えと言われましても。

kieiku
ファンタジー
旦那様、私の商会は渡しませんので、あなたはご自分の商会で、男の仕事とやらをなさってくださいね。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?

もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。 政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。 王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。 王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。 オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

私の愛しいアンジュ

毒島醜女
ファンタジー
横暴でメンヘラなアンジュ。 でも唯一の妹だと思って耐え、支えてきた。 そんな時、妹が取り換えられた子だと判明した。 本物の私の妹はとてもいい子でこれからも上手くやっていけそう。 一方で、もう片方は……

私の、虐げられていた親友の幸せな結婚

オレンジ方解石
ファンタジー
 女学院に通う、女学生のイリス。  彼女は、親友のシュゼットがいつも妹に持ち物や見せ場を奪われることに怒りつつも、何もできずに悔しい思いをしていた。  だがある日、シュゼットは名門公爵令息に見初められ、婚約する。 「もう、シュゼットが妹や両親に利用されることはない」  安堵したイリスだが、親友の言葉に違和感が残り…………。

処理中です...