7 / 15
内裏の魔性
月ノ輪
しおりを挟む
※新章です。本編から十数年前になります。
―――――――――――――――――
七郎は江戸郊外で野盗に遭遇した。
「身ぐるみ脱いで置いていけ」
野盗が手にした刀の刃が、月光に反射して淡く輝いた。落ち着いている。人を斬ったこともあるのだろう。
「物取りか」
右目が潰れた隻眼の七郎も落ち着いていた。その落ち着きぶりに野盗は緊張した。
しばし七郎と野盗の間に沈黙が満ちた。追いこまれていたのは野盗の方だ。
意を決した野盗、その目の色が変わった。
「――キィエーイ!」
野盗は一刀を打ちこんだ。
七郎は野盗の右手側に回りこみながら、鋭い一刀を避ける。そして左拳を野盗の鼻先に打ちこんだ。
野盗がうめいて刀を手放す。その隙に七郎は野盗の右腕に抱きついた。
次の瞬間、七郎の体は反転し、野盗の体が宙を舞った。
背中から大地に叩きつけられた野盗は、泡を吹いて失神した。
七郎がしかけたのは、父と先師より受け継いだ「無刀取り」の技の一つだ。
技の型は後世の柔道における一本背負い投げに似た。これが試合ならば文句無しの一本勝ちだ。
「……平和は遠いな」
七郎は夜空を見上げた。徳川三代将軍の治世は決して天下泰平とは呼べなかった。
**
沢庵禅師は共を連れて内裏に入った。
「魔物が出るとはな」
沢庵は憂いを浮かべた。内裏に魔物が出ると聞き、無理を承知で江戸を発ったのだ。
「帝の御身が心配なのです」
と言いつつ、内裏の女官は沢庵の隣に座した男を見た。
右目の潰れた隻眼の異相――
男は行儀よく座してはいるが、話に何の興味もなさげに大きなあくびをしている。
「この者は?」
「なに、江戸で暇をしていたので連れてきたのだ」
「禅師よ、小生は暇ではありませんぞ」
隻眼の男は苦笑した。
「何を言うか。己は何処か、刀一つで屍山血河の世界へ身を投げたいと愚痴をこぼしていたではないか」
「はて沢庵様この方は……」
「おお、紹介が遅れましたな。この者は沢庵ゆかりの者でして、魔物退治にうってつけと連れてまいったのですよ。なにせ将軍家剣術指南役の嫡男、腕は立ちますぞ」
「では、柳生の……?」
女官は険しい顔になった。内裏では幕府の横暴に煮え湯を飲まされている。
沢庵は徳ある高僧として内裏で敬愛しているが、その沢庵が幕府重鎮の息子を連れてくるとは。
「柳生十兵衛三厳でござる」
隻眼の七郎は――
いや、十兵衛は軽く頭を下げた。
**
月ノ輪という少女は大変なわがままで、手に負えないとのことだった。
「ほほう」
十兵衛は庭に出た。朝食の時間だというのに月ノ輪は姿を見せない。
庭に出て隠れてしまうので、女官たちは手を焼いている。
「月ノ輪様、朝食のお時間ですぞ」
十兵衛は庭で呼びかける。庭園とでも呼ぶべき広い庭は深緑に覆われていた。
「良いところだ……」
十兵衛は左の隻眼を閉じて深呼吸した。自然に微笑が浮かぶ。この緑あふれる庭園は大自然の一部であり、天地宇宙ともつながっている……
そんな感覚に包まれた十兵衛に、小石が数個、風を切って飛来した。
「おっとっとっ」
十兵衛、飛んできた小石を避け、右手で防ぎ、左手で払いのけた。
更に数個飛んできた小石を避け、しばらく待つ。やがて緑の繁みをかきわけ、十歳ほどの少女が現れた。
「さ、月ノ輪様」
「ふん」
月ノ輪と呼ばれた少女は、そっぽを向いた。
以前は女官が小石に悩まされたが、今は十兵衛が軽くさばいてしまう。
月ノ輪はそれが面白くないのだ。
「朝食なぞいらん」
「まあまあ、腹が減っては戦ができませぬ」
十兵衛は月ノ輪の手を引いて、歩き出した。はたから見れば親子くらいには見える。
「何の戦じゃ」
「生きるという戦でございます」
十兵衛は答えた。彼にとって生きるとは戦いなのだ。
朝食後、沢庵は畳に横になってうたた寝しているようだ。
夜は月ノ輪の寝室の隣で、ひたすらに不動明王真言を唱えている。魔を降伏する不動明王の真言が、魔性を追い払うはずだから。
「無理もない……」
十兵衛、大きなあくびをした。彼もまた連日徹夜で月ノ輪と沢庵の護衛だ。
魔性が現れればそれを斬り、怪異を鎮める――
それが十兵衛の任だ。すでに死ぬ覚悟はしていた。
また、当初は幕府ゆかりの十兵衛を毛嫌いしていた内裏の者も、月ノ輪の投石を軽くあしらう様子に刮目した。
また、月ノ輪がわずかながらも十兵衛に心を許してきていることに、一目置いていた。
なんにせよ破格の大抜擢だ。数日で月ノ輪は十兵衛を側に侍るようになったのだから。
これには内裏の中で大いに嫉妬の念が湧き上がったが、かといって、十兵衛を前にしては何も言えない。
十兵衛は内裏の誰とも雰囲気が違っていた。暗い隻眼も月ノ輪と共にある時、優しい光を放つ。
何にも増して、その静かな迫力に内裏の者は気圧される。
十兵衛は人を斬ったことがあるのだ――
「おぬしは何をしておったのだ」
朝食の後、月ノ輪は十兵衛にたずねた。彼女は内裏の外で生活していた十兵衛に関心があった。
いや、月ノ輪は父母が側にいない寂しさを十兵衛でまぎらわせているのだ。
「将軍の小姓をしておりました」
十兵衛は三代将軍家光の小姓として城勤めしていた。
「どんなものか」
「またこれが七面倒なことで」
十兵衛は「おい、あれだ」と度々、家光から命じられた。
「あれとは?」
「それがわからないと小姓が務まりませぬ」
月ノ輪は目を丸くした。
「あれというのは、上様の飼い猫だったり、数日前の稽古のことだったり、朝食のことだったりするのですが」
「な、なぜ十兵衛はあれがわかったのだ?」
「勘…… ですかなあ」
と十兵衛は首をひねる。彼にもよくわからないことだ。
これは十兵衛が右目を失ったことと関係があるかもしれぬ。十兵衛の父の又右衛門は、よく言っていた。
――失った右目に、はるかに勝るものを得たようだ。
と。それが何なのか詳しい説明はなかったが、おそらくは五感を越えた第六感とでもいうべきものだったろう。
そうでなければ家光の「あれ」が何を指すのか理解できまい。実際、小姓の中には精神を病んだり、務めを辞した者もいる。
家光の小姓は著名な大名の子息ばかりだったが、その彼らですらが、家光の勘気に振り回された。世間から消えてしまった者までいる。
「ほう、なるほどなあ……」
月ノ輪は、十兵衛の顔をジロジロ見ていた。十兵衛は落ち着かなくなって咳払いした。
「その右目はどうした?」
「兵法修行で失ったのですよ」
十兵衛は幼い日に父との兵法修行で右目を失った。今にして思えば、失ったからこそ得たものがあると思う。
「ち、父親に潰されたのか……」
月ノ輪はうつむいた。十兵衛は目を細めた。二人は急に互いを理解したような心地がした。
父親によって右目を潰された十兵衛。
父親から遠ざけられている月ノ輪。
ひょっとすれば、二人は似た者同士ではないのか。
「小生は別に父上を憎んでおりません」
「うむ、私だって父上を憎んでいるわけではない」
十兵衛と月ノ輪、しばし沈黙した。
やがて月ノ輪は十兵衛の左頬を平手打ちした。
スパアン!という痛快な響きに、沢庵がうたた寝から覚めそうになった。
「き、気が合うな」
月ノ輪は咳払いした。十数歳も年齢の離れた十兵衛に、彼女は複雑な思いを抱き始めている。
あるいは、だからこそ側づとめを許しているのか。
「な、なんで……?」
十兵衛は顔から血の気すら引かせて呆然とした。月ノ輪の平手打ちに全く反応できなかった。
それはいつか父の説いた「無拍子」であろうか?
それにもまして平手打ちは理不尽ではないのか。
しかし、十兵衛は幼い日に右目を失ってから、感情の働きが鈍かった。それゆえに家光の小姓を務めることができたのかもしれない。
感情の働きが半ば凍った十兵衛に、人間的な感覚を取り戻させるとは。女性は偉大である。
―――――――――――――――――
七郎は江戸郊外で野盗に遭遇した。
「身ぐるみ脱いで置いていけ」
野盗が手にした刀の刃が、月光に反射して淡く輝いた。落ち着いている。人を斬ったこともあるのだろう。
「物取りか」
右目が潰れた隻眼の七郎も落ち着いていた。その落ち着きぶりに野盗は緊張した。
しばし七郎と野盗の間に沈黙が満ちた。追いこまれていたのは野盗の方だ。
意を決した野盗、その目の色が変わった。
「――キィエーイ!」
野盗は一刀を打ちこんだ。
七郎は野盗の右手側に回りこみながら、鋭い一刀を避ける。そして左拳を野盗の鼻先に打ちこんだ。
野盗がうめいて刀を手放す。その隙に七郎は野盗の右腕に抱きついた。
次の瞬間、七郎の体は反転し、野盗の体が宙を舞った。
背中から大地に叩きつけられた野盗は、泡を吹いて失神した。
七郎がしかけたのは、父と先師より受け継いだ「無刀取り」の技の一つだ。
技の型は後世の柔道における一本背負い投げに似た。これが試合ならば文句無しの一本勝ちだ。
「……平和は遠いな」
七郎は夜空を見上げた。徳川三代将軍の治世は決して天下泰平とは呼べなかった。
**
沢庵禅師は共を連れて内裏に入った。
「魔物が出るとはな」
沢庵は憂いを浮かべた。内裏に魔物が出ると聞き、無理を承知で江戸を発ったのだ。
「帝の御身が心配なのです」
と言いつつ、内裏の女官は沢庵の隣に座した男を見た。
右目の潰れた隻眼の異相――
男は行儀よく座してはいるが、話に何の興味もなさげに大きなあくびをしている。
「この者は?」
「なに、江戸で暇をしていたので連れてきたのだ」
「禅師よ、小生は暇ではありませんぞ」
隻眼の男は苦笑した。
「何を言うか。己は何処か、刀一つで屍山血河の世界へ身を投げたいと愚痴をこぼしていたではないか」
「はて沢庵様この方は……」
「おお、紹介が遅れましたな。この者は沢庵ゆかりの者でして、魔物退治にうってつけと連れてまいったのですよ。なにせ将軍家剣術指南役の嫡男、腕は立ちますぞ」
「では、柳生の……?」
女官は険しい顔になった。内裏では幕府の横暴に煮え湯を飲まされている。
沢庵は徳ある高僧として内裏で敬愛しているが、その沢庵が幕府重鎮の息子を連れてくるとは。
「柳生十兵衛三厳でござる」
隻眼の七郎は――
いや、十兵衛は軽く頭を下げた。
**
月ノ輪という少女は大変なわがままで、手に負えないとのことだった。
「ほほう」
十兵衛は庭に出た。朝食の時間だというのに月ノ輪は姿を見せない。
庭に出て隠れてしまうので、女官たちは手を焼いている。
「月ノ輪様、朝食のお時間ですぞ」
十兵衛は庭で呼びかける。庭園とでも呼ぶべき広い庭は深緑に覆われていた。
「良いところだ……」
十兵衛は左の隻眼を閉じて深呼吸した。自然に微笑が浮かぶ。この緑あふれる庭園は大自然の一部であり、天地宇宙ともつながっている……
そんな感覚に包まれた十兵衛に、小石が数個、風を切って飛来した。
「おっとっとっ」
十兵衛、飛んできた小石を避け、右手で防ぎ、左手で払いのけた。
更に数個飛んできた小石を避け、しばらく待つ。やがて緑の繁みをかきわけ、十歳ほどの少女が現れた。
「さ、月ノ輪様」
「ふん」
月ノ輪と呼ばれた少女は、そっぽを向いた。
以前は女官が小石に悩まされたが、今は十兵衛が軽くさばいてしまう。
月ノ輪はそれが面白くないのだ。
「朝食なぞいらん」
「まあまあ、腹が減っては戦ができませぬ」
十兵衛は月ノ輪の手を引いて、歩き出した。はたから見れば親子くらいには見える。
「何の戦じゃ」
「生きるという戦でございます」
十兵衛は答えた。彼にとって生きるとは戦いなのだ。
朝食後、沢庵は畳に横になってうたた寝しているようだ。
夜は月ノ輪の寝室の隣で、ひたすらに不動明王真言を唱えている。魔を降伏する不動明王の真言が、魔性を追い払うはずだから。
「無理もない……」
十兵衛、大きなあくびをした。彼もまた連日徹夜で月ノ輪と沢庵の護衛だ。
魔性が現れればそれを斬り、怪異を鎮める――
それが十兵衛の任だ。すでに死ぬ覚悟はしていた。
また、当初は幕府ゆかりの十兵衛を毛嫌いしていた内裏の者も、月ノ輪の投石を軽くあしらう様子に刮目した。
また、月ノ輪がわずかながらも十兵衛に心を許してきていることに、一目置いていた。
なんにせよ破格の大抜擢だ。数日で月ノ輪は十兵衛を側に侍るようになったのだから。
これには内裏の中で大いに嫉妬の念が湧き上がったが、かといって、十兵衛を前にしては何も言えない。
十兵衛は内裏の誰とも雰囲気が違っていた。暗い隻眼も月ノ輪と共にある時、優しい光を放つ。
何にも増して、その静かな迫力に内裏の者は気圧される。
十兵衛は人を斬ったことがあるのだ――
「おぬしは何をしておったのだ」
朝食の後、月ノ輪は十兵衛にたずねた。彼女は内裏の外で生活していた十兵衛に関心があった。
いや、月ノ輪は父母が側にいない寂しさを十兵衛でまぎらわせているのだ。
「将軍の小姓をしておりました」
十兵衛は三代将軍家光の小姓として城勤めしていた。
「どんなものか」
「またこれが七面倒なことで」
十兵衛は「おい、あれだ」と度々、家光から命じられた。
「あれとは?」
「それがわからないと小姓が務まりませぬ」
月ノ輪は目を丸くした。
「あれというのは、上様の飼い猫だったり、数日前の稽古のことだったり、朝食のことだったりするのですが」
「な、なぜ十兵衛はあれがわかったのだ?」
「勘…… ですかなあ」
と十兵衛は首をひねる。彼にもよくわからないことだ。
これは十兵衛が右目を失ったことと関係があるかもしれぬ。十兵衛の父の又右衛門は、よく言っていた。
――失った右目に、はるかに勝るものを得たようだ。
と。それが何なのか詳しい説明はなかったが、おそらくは五感を越えた第六感とでもいうべきものだったろう。
そうでなければ家光の「あれ」が何を指すのか理解できまい。実際、小姓の中には精神を病んだり、務めを辞した者もいる。
家光の小姓は著名な大名の子息ばかりだったが、その彼らですらが、家光の勘気に振り回された。世間から消えてしまった者までいる。
「ほう、なるほどなあ……」
月ノ輪は、十兵衛の顔をジロジロ見ていた。十兵衛は落ち着かなくなって咳払いした。
「その右目はどうした?」
「兵法修行で失ったのですよ」
十兵衛は幼い日に父との兵法修行で右目を失った。今にして思えば、失ったからこそ得たものがあると思う。
「ち、父親に潰されたのか……」
月ノ輪はうつむいた。十兵衛は目を細めた。二人は急に互いを理解したような心地がした。
父親によって右目を潰された十兵衛。
父親から遠ざけられている月ノ輪。
ひょっとすれば、二人は似た者同士ではないのか。
「小生は別に父上を憎んでおりません」
「うむ、私だって父上を憎んでいるわけではない」
十兵衛と月ノ輪、しばし沈黙した。
やがて月ノ輪は十兵衛の左頬を平手打ちした。
スパアン!という痛快な響きに、沢庵がうたた寝から覚めそうになった。
「き、気が合うな」
月ノ輪は咳払いした。十数歳も年齢の離れた十兵衛に、彼女は複雑な思いを抱き始めている。
あるいは、だからこそ側づとめを許しているのか。
「な、なんで……?」
十兵衛は顔から血の気すら引かせて呆然とした。月ノ輪の平手打ちに全く反応できなかった。
それはいつか父の説いた「無拍子」であろうか?
それにもまして平手打ちは理不尽ではないのか。
しかし、十兵衛は幼い日に右目を失ってから、感情の働きが鈍かった。それゆえに家光の小姓を務めることができたのかもしれない。
感情の働きが半ば凍った十兵衛に、人間的な感覚を取り戻させるとは。女性は偉大である。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】『からくり長屋の事件帖 ~変わり発明家甚兵衛と江戸人情お助け娘お絹~』
月影 朔
歴史・時代
江戸の長屋から、奇妙な事件を解き明かす! 発明家と世話焼き娘の、笑えて泣ける人情捕物帖!
江戸、とある長屋に暮らすは、風変わりな男。
名を平賀甚兵衛。元武士だが堅苦しさを嫌い、町の発明家として奇妙なからくり作りに没頭している。作る道具は役立たずでも、彼の頭脳と観察眼は超一流。人付き合いは苦手だが、困った人は放っておけない不器用な男だ。
そんな甚兵衛の世話を焼くのは、隣に住む快活娘のお絹。仕立て屋で働き、誰からも好かれる彼女は、甚兵衛の才能を信じ、持ち前の明るさと人脈で町の様々な情報を集めてくる。
この凸凹コンビが立ち向かうのは、岡っ引きも首をひねる不可思議な事件の数々。盗まれた品が奇妙に戻る、摩訶不思議な悪戯が横行する…。甚兵衛はからくり知識と観察眼で、お絹は人情と情報網で、難事件の謎を解き明かしていく!
これは、痛快な謎解きでありながら、不器用な二人や長屋の人々の温かい交流、そして甚兵衛の隠された過去が織りなす人間ドラマの物語。
時には、発明品が意外な鍵となることも…?
笑いあり、涙あり、そして江戸を揺るがす大事件の予感も――。
からくり長屋で巻き起こる、江戸情緒あふれる事件帖、開幕!
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
『五感の調べ〜女按摩師異聞帖〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸。盲目の女按摩師・市には、音、匂い、感触、全てが真実を語りかける。
失われた視覚と引き換えに得た、驚異の五感。
その力が、江戸の闇に起きた難事件の扉をこじ開ける。
裏社会に潜む謎の敵、視覚を欺く巧妙な罠。
市は「聴く」「嗅ぐ」「触れる」独自の捜査で、事件の核心に迫る。
癒やしの薬膳、そして人情の機微も鮮やかに、『この五感が、江戸を変える』
――新感覚時代ミステリー開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
半蔵門の守護者
裏耕記
歴史・時代
半蔵門。
江戸城の搦手門に当たる門の名称である。
由来は服部半蔵の屋敷が門の側に配されていた事による。
それは蔑まれてきた忍びへの無上の褒美。
しかし、時を経て忍びは大手門の番守に落ちぶれる。
既に忍びが忍びである必要性を失っていた。
忍家の次男坊として生まれ育った本田修二郎は、心形刀流の道場に通いながらも、発散できないジレンマを抱える。
彼は武士らしく生きたいという青臭い信条に突き動かされ、行動を起こしていく。
武士らしさとは何なのか、当人さえ、それを理解出来ずに藻掻き続ける日々。
奇しくも時は八代将軍吉宗の時代。
時代が変革の兆しを見せる頃である。
そしてこの時代に高い次元で忍術を維持していた存在、御庭番。
修二郎は、その御庭番に見出され、半蔵門の守護者になるべく奮闘する物語。
《連作短編となります。一話四~五万文字程度になります》
【完結】『江戸めぐり ご馳走道中 ~お香と文吉の東海道味巡り~』
月影 朔
歴史・時代
読めばお腹が減る!食と人情の東海道味巡り、開幕!
自由を求め家を飛び出した、食い道楽で腕っぷし自慢の元武家娘・お香。
料理の知識は確かだが、とある事件で自信を失った気弱な元料理人・文吉。
正反対の二人が偶然出会い、共に旅を始めたのは、天下の街道・東海道!
行く先々の宿場町で二人が出会うのは、その土地ならではの絶品ご当地料理や豊かな食材、そして様々な悩みを抱えた人々。
料理を巡る親子喧嘩、失われた秘伝の味、食材に隠された秘密、旅人たちの些細な揉め事まで――
お香の持ち前の豪快な行動力と、文吉の豊富な食の知識、そして二人の「料理」の力が、人々の閉ざされた心を開き、事件を解決へと導いていきます。時にはお香の隠された剣の腕が炸裂することも…!?
読めば目の前に湯気立つ料理が見えるよう!
香りまで伝わるような鮮やかな料理描写、笑いと涙あふれる人情ドラマ、そして個性豊かなお香と文吉のやり取りに、ページをめくる手が止まらない!
旅の目的は美味しいものを食べること? それとも過去を乗り越えること?
二人の絆はどのように深まっていくのか。そして、それぞれが抱える過去の謎も、旅と共に少しずつ明らかになっていきます。
笑って泣けて、お腹が空く――新たな食時代劇ロードムービー、ここに開幕!
さあ、お香と文吉と一緒に、舌と腹で東海道五十三次を旅しましょう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる