お前を愛することはない、と妻に告げた男…の友人が相談を受けた話

もふっとしたクリームパン

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1、相談を受けた男

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 俺の名はトーマス・ドツイタロカ。王都に店を構えちゃいるが、しがない商家の息子さ。後継ぎとして商人として一人前になるべく毎日働いていると、久方ぶりに友人の屋敷に招かれた。気分転換にもなるかと、軽い気持ちで応じて指定された時間に赴くと驚く相談を受けた。

 妻にさりげなくアプローチしても応じてくれるどころか、態度が変わらない。何故だろうか、と。
 
 ――は?? 意味が分からん。

 噂で友人夫婦は仲睦まじいと聞いていた俺は、まずは経緯を話せ、話しはそれからだと説得し、共に過ごしたハイスクール時代の恥ずかしい話等で脅して事情を吐か――基、話させた。そうして経緯を聞いた俺は、コイツはアホだと心底思った。

 友人、ソレダ・メジャンは金髪碧眼の美男子(二十五歳)で、国中にその名を轟かす豪商の後継ぎ息子だ。性格にちょっとばかり難があるが女にモテまくるのは必然だろうと、同い年で男の俺でも理解する。だが、三年ほど前に没落した子爵家の娘と貴族の血欲しさに結婚したまではいいとしても、その相手とのよりにもよって初夜に『お前を愛することはない』と宣言し、そのまま清い関係でいる現状で、そんなこと言うのか? 結婚してから五年、愛する妻一筋の俺からしてみれば、コイツをぶん殴りたい衝動にかられた。

 一応ソレダの事情としては当時、恋人として付き合っていた平民の女性がいたそうだ。その女性に対しての操立ての為にしたことらしいが、そんなのソレダ側の一方的な都合でしかなく、結婚相手であるニゲヨウ子爵の娘アリーナに関係あるか? うん、ないよな。

「色々言いたい事はあるが、まず、一方的に愛さない宣言してるのに、どうして相手がお前に惚れてる前提なんだよ…」

「え、それは……私だぞ? 彼女が私に惚れていても可笑しくないだろ」

「結婚式で初めて顔合わせしたんだろ? 最初から両想いになる可能性潰しておきながら、改めてお前に惚れる可能性ってあんのか? 確かにお前は男前だ、でもな、相手にも好みってのがあるし、お前の事だから何でも恋人優先で妻に対して贈り物とかデートとか一切してなかったんだろ。そんなダメ夫からの今更のアプローチなんて、女が素直に受け入れると思ってたら大間違いだぞ。もう手遅れってやつなんじゃないか?」

 用意された紅茶に口を付ける。お、これは南のとこのだな…いい茶葉だ。

「そんなことはない! そもそも私との結婚に関しては、アリーナの…妻の実家からの申し出だったんだ。その時点で彼女は、私に惚れていたはずだ!」

「それ、ニゲヨウ子爵家からであって、本人から申し込まれた訳じゃないだろ。没落しても貴族の家なんだから、親に結婚するよう言われたら一般的な令嬢なら歯向かうなんてあり得ない。その辺り、本人に確認取ったのかよ?」

 俺が問えば、ソレダはぐぬぅと唸るような声を出し、ゆっくり首を左右に振った。

「…家の事は良くしてくれるし、私との会話だって盛り上がるんだ。だからアリーナだって、私の事を…」

「彼女の実家に融資してるんだろ? 愛がなくとも夫婦なんだから、歩み寄りぐらいはしてくれるだろ。配慮が出来る奥さんで良かったな」

 笑って言えば、ソレダはがっくり肩を落とした。

「……つまり、アリーナは、私に惚れていない、と?」

「下手したら、嫌われてても可笑しくないな」

「そんな……。どうしたら、妻は私を愛してくれるだろうか…」

 本気で落ち込んでる様子だが、都合の良い事言ってる自覚あんのかね? とは言え、俺はソレダから聞いた話を客観的に見て言っているだけであり、コイツの奥さんの心の内なんて分かる訳がない。

「何をおいてもまず謝罪だろ。いや、それも押し付けになる可能性もあるか…。なら、それより先に奥さんに自分の事をどう思っているのか、これからどうしたいかを確認するべきかもな」

 俺が助言できるのはこれぐらいで、結局のところ、二人でよく話し合うしかないのだ。夫婦の問題なのだから、これ以上俺を巻き込んでくれるなよ。

「……どうやって聞いたら…?」

「面と向かって話しにくいなら、手紙で確認したらいいだろ」

「そ、そうか、手紙か!」

 その手があったかと素直に喜ぶ姿を見れば、友人として応援してやりたい気持ちになる。…だがしかし、このソレダの様子では、奥さんに手紙を出すことさえも今までしてなかったんだろう事実が透けて見えてしまい――これ、やっぱり手遅れじゃないかなと、密かに思った。
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