神仏魔邪な異変怪談

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校舎の幽霊

学校の七不思議という怪談

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chapter10

彼女と別れ、俺は現実で暮らしている神社へと向かった

鳥居が見えないほど高く続いている階段。ここを毎日上り降りしてるのだから、そりゃ勝手に体力が増えるのも当たり前だよな

夕暮れの空が次第に沈んでいくのを背に、俺は階段を慣れた足取りで上っていく

小さい頃からこの階段を上り続けたおかげで、フリーホラーゲームの主人公のような、化け物に終われても逃げ切れるだけの体力が身に付いた

まあ、今回の異界ではそういった事態にならないことを願おう。体力が身に付いたとはいえ疲れるものは疲れるのだから

そんなこんなで階段を上りきり、鳥居を通って中に入る。神社には誰もおらず、あるいにいつも通りの光景が広がっていた

神社の本殿を横目に、俺は現実世界で暮らしている古い一軒の家に向かう。そして、現実通りの外見はぼろぼろな一軒の家を見つけた

扉に手を掛けるが鍵がかかっていて開かない。チャイムを鳴らしても人の気配を感じられない

そして、実は学校で自分の鞄を漁ったさいに俺は家の鍵をすでに見つけていた。それは現実世界で今でも使っているものだったので一目でわかった

鞄から鍵を取り出し鍵穴へと差し込み、捻る。するど"ガチャ"という音がなり鍵が開く

扉を横に引き、扉を空ける

「ただいまぁー…」

警戒しつつ小声でそう言って俺は玄関に入る。家の中はどうやら誰も居ないらしく、寂しい暗闇に包まれていた

玄関の電気を付けてから気づいたのだが、間取り自体は同じだけど現実とは明確に違う点があった

それは無装飾というところだ。現実の玄関には置かれている小物や装飾が何一つなく、それどころか靴が1つも置かれていない

その後、内装を一通り確認したが、あまりにも何も無さすぎて人が暮らしているようには思えなかった

幸い、ベットはあったので睡眠はなんとかできる。水も通っているし、電気も使える。ただ…水を飲むのは危険なので、あくまでお風呂や洗濯で使うことしによう

異界の物を食べると異界に取り込まれる…昔から言われている定説の1つで、多くの神話がこの話を裏付けているらしい…海花からそう聞いた

水は異界の物に含まれるかは微妙なラインなので、飲まないに越したことはない

そして、今になって気づいたのだが、お腹がまった
く減っていない。無限の校舎の時からそうだったので、その性質は変わっていないらしい

それにともなってなのか、トイレも必要なさそうだ。ただ、動けば疲れるし、眠くもなる

「さて…」

俺は部屋で制服からパジャマ代わりのジャージに着替え、お風呂を沸かす。そして、お風呂が沸くまでの時間で色々とノートにまとめる

なんか、時間さえあればノートに情報を書いている気がするが、スマホが使えない都合上やることがないのだ。うちポケットに本でも忍ばせておけばよかった

あっ、ちなみにノートにまとめている情報はこの異界攻略に必要な情報じゃなくて、今日受けた授業の復習だ…

アイアム.スチューデント.アーユーオーケー?

\¥\¥

chapter11

今日は疲れたのでお風呂から上がったらそのままベットにダイブし、死んだように眠りたかったが、その前にやっておきたいことがあり、俺は夜の学校へと向かった

季節は春の終りほど。異界にもかかわらず、気温は現実と同じで、夜…それも深夜はかなり冷え込んでおり、ジャージだけでは凄く寒かった

残念ながら、あの家には1着も服が見つからなかった。そのため、しばらくは制服とジャージでやりくりしていくしかない

「さて…」

校門の前にたどり着き、俺はなんのためらいもなく校門をよじ登って校舎の中に入る。防犯カメラが無いのは確認済みだ

昼間は時間がなくてできなかった校内探索をしながら、例の情報源に接触する。そのためにここにきた

向かう場所は校舎3階の女子トイレ。その3番目の扉…ここまでくれば、誰に会いに来たかは一目瞭然だろう

俺は扉に3回ノックをする。すると「あ…え? はい」という声が聞こえ、扉がゆっくりと開く

扉の中のトイレには1人の少女が座っていた

紫がかった黒い髪は元々おかっぱヘアだったが、今は髪が伸びてストレートヘアとなり、前髪で両目は隠れているけど、髪の隙間から真っ赤なお目目が垣間見える

オーバーサイズのワイシャツとこの学校のスカートを着ており、体躯は小学生のように小柄で、潤んだ瞳で俺のことを上目遣いで見上げていた

彼女こそ、俺が言っていた情報源…3階に3つ並んだ女子トイレがある校舎であれば、どんな校舎でも会うことができる怪異

そう…『トイレの花子さん』だ

「あ、えっと…久しぶり…ですね。えへへ」

「コトリバコの一件以来だから、8ヶ月ぐらいしか経ってないだろ」

コトリバコの一件とは、中学最後の夏休みに巻き込まれた怪談の1つで、コトリバコが色々な女性や子供怪異を取り込んで巨大な化け物に進化した話だ

実質コトリバコVSそれ以外の学校の怪異という構図の大決戦が行われて、中学最後の夏に相応しい大規模な怪談…というか冒険となった

その時、トイレから離れられない花子がコトリバコに取り込まれた上でその特性を生かして脱出し、コトリバコの中身を分解するという功績を残したのだ

「わたしからしたら…全然長かったし、寂しかったんだよ」

「うちの高校、階数が多すぎて3階にトイレがないんだよな…」

「え…そんな…寂しいよ」

花子は今にも泣き出しそうな顔で、そう言ってきた。しかし、彼女に心を許すわけにはいかない。だって彼女はれっきとした怪異なのだ

だから、彼女が次に何て言うか予想できる。彼女からは何度もこういうアプローチをされてきた

可愛くとも「トイレの花子さん」は「トイレの花子さん」なのだ。これでも、彼女は罪悪感なく何人かの人間を殺している

まあ、花子のことを知った上で会いに来てるので、それを完全に花子のせいにするのもどうかと思うのだが…流石に死人が出てるからな~

「骸お兄ちゃん…ここで死んで一緒に居てよ…」

「断固として断る」

「なんでぇ…」

「死にたくないの!」

「むぅー!」

花子は立ち上がり、俺の胸辺りをポカポカと優しく叩く。もちろん、まったく痛くない…

まったく…と呟き、俺は頭を抱える

「この世界なは死にたい奴なんてごまんといる。それに、お前みたいな美少女と居れるなら喜んで命を授ける奴はいるだろ」

俺がそう言うと、花子はポカポカと叩くのを止めて、次の瞬間お腹の辺りな暖かさが広がった

それは、とても人間らしく怪異らしくない温もりだった。視線を下に落とすと、そこには俺に抱きついている花子の姿が

「お兄ちゃんだから…一緒にいたいの。この温もりは、あなたにしか与えられないから…」

その後、抱きついている花子をどうしても引き剥がせず、しばらくそのままでいた

&☆&☆

chapter12

「お兄ちゃんと~一緒~」

上機嫌に俺の前を歩く花子を見ながら、俺達は音楽室へと向かっていた

花子の話によると、この校舎で交流が可能な七不思議は花子を含めて3人だけ

残りの2人は「音楽室の絵画」と「理科室の人体模型」…数え方は「人」でいいのか?

それで、今は花子の案内によって音楽室に向かっているところだ

ちなみに、花子がトイレから離れられている理由は「トイレットペーパーの切れ端」を寄り代として使うことによって、一時的にトイレから離れられるのだとか

ちなみに、この方法でも長くて1時間しか花子はトイレから離れられない。それ以上は「トイレの花子さん」として成立しなくなってしまうからだそうだ

そして、怪異としての性質なのか、花子は現れた学校に関する知識を、ある程度保持している。そのため、校舎の構造も頭に入っている

まあ…本人は1人じゃトイレから出れないのに、外の知識を押し付けられても嫌味にしか思えないらしい…地縛霊は世知辛い

そういうこともあって、花子はトイレから出れたことでかなり興奮している。夜の学校の何が楽しいのやら…

「なあ、花子」

「なんですか? お兄ちゃん」

「ここの七不思議に『開かずの扉』は無いんだよな?」

学校の七不思議はいくつか存在しており、学校ごとにレパートリーが違う

「トイレの花子さん」
「音楽室の動く絵画」
「夜な夜な勝手に鳴るピアノ」
「夜な夜な動く二宮金次郎像」
「誰も居ない体育館で跳ねるバスケットボール」
「夜な夜な動く人体模型」
「恐怖の13階段」
「未来の自分を写す鏡」

このように、あげようと思えばキリがない。そして、その中には「誰も入ったことのない開かずの扉」というものもある

大抵、そういった扉は『異界』に繋がっている。そして、異界にとっての『異界』が現実世界の可能性は無いわけではない

いざってときの手段の1つとして、あるのなら場所を把握しておきたいのだけど…

「んーとですね…なさそうです」

「そりゃ残念」

軽く肩を落とすが、実際はそこまで落ち込んでいない。あくまでいざってときの手段に過ぎない、他に正攻法はいくらでも見つけられる

そんなこんなで、俺達は音楽室にたどり着いた。中からはピアノ音が不気味に聞こえてくる…

しかし、俺は慣れているので怖がる素振りも見せず思いっきり扉を開ける。すると、それに驚いたのか、ピアノから「ベェーン」って感じの不協和音が鳴った

「よお、ピアノも久しぶりだな」

俺がそう言うと、ピアノから「ド」「レ」「ミ」と音が鳴った。これがピアノからの挨拶だ

「ベートーヴェンに会いに来たんだが…居るか?」

レ・ミい る

その音を聞いてから、俺はベートーヴェンの絵画の前に移動して話しかける

「お久しぶりです、ベートーヴェンさん」

俺がそう話しかけると、ベートーヴェンの絵画が瞬きをして、瞳を時計回りに回してから口が動き始めた

「やあ、骸君ではなぁ~いかね。6ヶ月ぶりだね」

「そうですね」

「なんか、わたしの時と態度が違う…」

「花子、目上の人には敬意を持って接するんだぞ」

「ヴェンさん今人じゃないし、わたしが発生したの骸が産まれるよりも前だから、わたしにも敬意を持つべきじゃないですか?」

「花子、大事なのは…心だ」

音楽室の怪談組は基本的に「怖い」以外は無害だし、花子みたいに人を殺したりしない。そして、精神年齢がちゃんと高くて人間らしい理性もある

海花曰く、人間がもとになった怪談だから、怪談そのものも人間らしくなっているらしい

逆に「トイレの花子さん」は話の内容として人を殺すので、本人は理性とか関係なくそういった行為をしてしまうし、子供という設定なのでいくら知識を身に付けても精神年齢は成長しないのだ

「それって…遠回しに貶してないですか? ねぇねぇ…ねぇねぇ…ねぇねぇ…」

花子は俺の服の裾を掴んで、何回か引っ張ってきた。それを無視しながら、俺は絵画と話を続ける

「この異界について、何か知りませんか?」

「ふぅ~む…そうだねぇ。私からみたら普通の異界にしか見えないようだ。怪物も特に居るわけでもない、ただの幻影…覚めない夢だ」

「では、この異界は安全ということで?」

「ああ、安全だろう。おそらくだが、ここに居れば何の驚異もなく永遠を過ごせるだろうねぇ」

「永遠…?」

その言葉が気になって自然と口にしてしまった。永遠…それは言い方を変えれば無限になる。この世界の本質は、やはり無限の校舎から変わっていないらしい

「ああ、永遠に…だよぉ」

「俺からしたら、それも驚異に入るんですが…」

「まあ、この世界でも死ねない訳じゃない。実際、今にも君を殺したそうにしている子が隣に居るではないか」

そう言って絵画は、俺の斜め横でいまだに裾を引っ張っている花子へと目を向けた

確かに、花子レベルの怪異であれば無名の永遠程度は打ち破って殺すことができそうだ

「まあ、とにかく普通に過ごすだけなら死ぬような驚異はないんですよね」

「ああ、そうだろうね」

「この場所から現実世界に戻るには、どうしたらいいんですかね?」

「相棒の怪談家君がいれば話は早いのだが、いないのならしばらくはこの怪談に付き合ってみるといい。自然と夢の核が浮き彫りになるはずだ」

あらゆる現象には意味が生じている、怪談ならばなおのことだ。意味のない幽霊や怨霊には『異界』を作るような力はない

つまりは、この『異界』にも作られる理由や意味が存在しており、それを遂行するために活動している

ここの意味はすでに分かっている。俺が与えた怪談によって、その形は青春となり、青春を遂行するための舞台であるこの『異界』が生まれたのだろう

「幸い、この場所でいくら時が流れようと、現実世界では一切時は進んでいないみたいだからね」

「それを聞いて安心です。今回は、数日で終えられるほど柔な怪談じゃなさそうですから…」

青春の遂行…それはつまり、最低でも3年…いや、その3年を何度もループするはめになる。エンドレスアオハル編の始まりってことだ

俺の口から吐き出されるため息
目を輝かせて嬉しそうにする花子
「あらら」といっているような音を鳴らすピアノ

こうして、俺は何故か現実世界よりも先に怪談としての青春を歩むこととなった…

いや、なんでだよ

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