36 / 283
第二章 美少女とはじめる、むっつりスケベの冒険
第35話 ゴルド家の事情
しおりを挟む
ゴルド家での夜は、とても楽しい時間だった。
ロックとティナは報奨金が入ったので、宿泊代や食費を払おうとしたが、ゴルドとダニスは受け取らなかった。
「大丈夫だ。
今回の依頼でも、おめえたちより稼いだからな。」
ニヤリと笑いながら、そう言って。
フォーレン王国へ行くための相談もした。
別の大陸にあり、世界を半周することになる旅。
馬車を乗り継いで行くのだが、出発はバルキア帝国の首都がいいとのことだった。
2人にとっては帰りたくない場所だが、それ以外だとかなり遠回りになる。
世界一の大都市であるため、顔見知りと遭遇する可能性はかなり低い。
しかし、ロックはスキル5つ持ちという世界でも数少ない存在。
それなりに知名度がある為、顔を見られにくいよう、深めのフード付きのマントを羽織っていくことにした。
ゴルドによれば、到着するまでレベルはほとんど上げられないだろう、ということだった。
この世界では、モンスターが生息域外に出ることはほとんどない。
稀にはぐれモンスターが襲ってくるが、低レベル帯のものがほとんどだ。
安全だが、経験値を得る機会もない、ということだ。
フォーレン王国に行くまでに、モンスター生息域は3ヶ所あるらしい。
そして、フォーレン王国に2ヶ所。
もしレベル上げをするなら、この大陸の東端、シークという国か、フォーレン王国を勧められた。
他の2ヶ所は馬車のルートから遠いためだ。
シークは世界で唯一の港町がある国。
15年以上前までは世界各地に港があったのだが、海にモンスターが生息しはじめ、船を出せなくなったのだ。
水中にいるモンスター相手では、まともに戦うことは難しい。
また、船を守り切ることが不可能なため、沈没してしまう。
ただ、シークとフォーレン王国間の海峡は距離が短く、さらにモンスター避けの対応がされているらしい。
詳しくは知らされていないらしいが。
問題は、旅の費用。
ゴルドとダニスは細かく教えてくれた。
フォーレン王国までは、馬車を最短で乗り継いで160日ほど。
1日あたりの馬車の費用は1人10,000ゴル。
途中何度も町に立ち寄るので、その際の宿泊費もいる。
相場は大体8,000ゴルだが、宿泊者が多いと高くなる場合もある。
フォーレンまで15ヶ所の街を経由する。
食費は1日1人2,000ゴル程度。
日持ちするものは美味しくない代わりに金額は控えめらしい。
ざっと計算して、
馬車代:320万ゴル(2人で20,000ゴル×160日)
宿泊費:30万ゴル(2人で余裕を見て20,000×15ヶ所)
食費:58万ゴル(2人で4000ゴル×145日 ※宿に泊まる日以外)
合計:408万ゴル
その他の雑費や不測の事態に備えて500万ゴルは欲しいところだ。
「ご、ごひゃくまんごる…。」
2人は目が回りそうになった。
「出兵の時は国がら費用が出るがらな~。
個人で行ぐにはながなが辛いべな。」
「あんだ、それぐらいだしでやれ~!
…っでいいだいどこだが、それは自分たぢでやらねばな。」
「はい。
ゴルドさん、エシアドの崖で稼ぎやすいモンスターはいますか?」
「う~ん。
報奨金や素材買取金はBランクがら跳ね上がるんだべよ。
それまでは似だり寄っだりだな~…。」
「そうですか…。
Dランクをたくさん狩っても、持ち帰れないんですよね…。
かといって毎回持って帰るとなると、どれだけかかるかわかりませんし…。」
「特殊個体の討伐依頼だどしでも1.5倍にしがならねえがらな~。」
ダニスさんも冒険者について詳しいようだ。
「…よし、特別サービスだべ。
毎日馬車をエシアドの崖まで往復させる。
それに狩っだ獲物を載せろ。」
「え!?
…ゴルドさん、これ以上ご迷惑おかけできません…。」
「乗りかかった船だべよ。
そんかわり、苦しいこどあっでも途中で投げ出さないこどと、死なないこど約束しでくれ。」
「ゴルドさん…。」
そこまでお世話になることに踏ん切りがつかないロックとティナ。
ダニスさんが口を開いた。
「おめえたぢに、死んだ息子を重ねでるだよ。」
「…!
息子さん…、亡くなられてたんですね…。」
「あんだ、言っでながったんだべな。
息子は冒険者になっでしばらぐして家を出たんだ。
16歳だっだな。
B級までトントンっと強ぐなっで、もうちょっとでA級さなりそうだったんだと。
そごで出兵要請があっでね。
魔族と戦っで、死んじまったみたいだ。」
「そう…、だったんですね…。」
ゴルドが拳を握りしめて、絞り出すよう声で言った。
「正直いうと、おらも魔王をぶっ潰しでやりでえ。
でも、そんだけの力もねえし、魔王がいなぐなったあどの責任も取れねえ。
こごだけの話、おめえらに期待しぢまってんだ。
卑怯だとわがってるだ。
その後ろめださを誤魔化すために、おめえらにおせっがいしでんのかもしんねえ。」
「…ゴルドさん、僕たち、きっとなんとかします。
魔王を倒しちゃダメでも、他の方法を考えます。
ゴルドさんとダニスさんの気持ちも一緒に持っていきますから。」
「ロッグ…。」
「それに、死ななようにがんばります。
ちゃんとお2人に報告しなきゃいけませんから。」
「ティナ…。」
「…ありがどな。」
こうしてゴルド夫妻の協力のもと、500万ゴルを稼ぐことになった2人だった。
ロックとティナは報奨金が入ったので、宿泊代や食費を払おうとしたが、ゴルドとダニスは受け取らなかった。
「大丈夫だ。
今回の依頼でも、おめえたちより稼いだからな。」
ニヤリと笑いながら、そう言って。
フォーレン王国へ行くための相談もした。
別の大陸にあり、世界を半周することになる旅。
馬車を乗り継いで行くのだが、出発はバルキア帝国の首都がいいとのことだった。
2人にとっては帰りたくない場所だが、それ以外だとかなり遠回りになる。
世界一の大都市であるため、顔見知りと遭遇する可能性はかなり低い。
しかし、ロックはスキル5つ持ちという世界でも数少ない存在。
それなりに知名度がある為、顔を見られにくいよう、深めのフード付きのマントを羽織っていくことにした。
ゴルドによれば、到着するまでレベルはほとんど上げられないだろう、ということだった。
この世界では、モンスターが生息域外に出ることはほとんどない。
稀にはぐれモンスターが襲ってくるが、低レベル帯のものがほとんどだ。
安全だが、経験値を得る機会もない、ということだ。
フォーレン王国に行くまでに、モンスター生息域は3ヶ所あるらしい。
そして、フォーレン王国に2ヶ所。
もしレベル上げをするなら、この大陸の東端、シークという国か、フォーレン王国を勧められた。
他の2ヶ所は馬車のルートから遠いためだ。
シークは世界で唯一の港町がある国。
15年以上前までは世界各地に港があったのだが、海にモンスターが生息しはじめ、船を出せなくなったのだ。
水中にいるモンスター相手では、まともに戦うことは難しい。
また、船を守り切ることが不可能なため、沈没してしまう。
ただ、シークとフォーレン王国間の海峡は距離が短く、さらにモンスター避けの対応がされているらしい。
詳しくは知らされていないらしいが。
問題は、旅の費用。
ゴルドとダニスは細かく教えてくれた。
フォーレン王国までは、馬車を最短で乗り継いで160日ほど。
1日あたりの馬車の費用は1人10,000ゴル。
途中何度も町に立ち寄るので、その際の宿泊費もいる。
相場は大体8,000ゴルだが、宿泊者が多いと高くなる場合もある。
フォーレンまで15ヶ所の街を経由する。
食費は1日1人2,000ゴル程度。
日持ちするものは美味しくない代わりに金額は控えめらしい。
ざっと計算して、
馬車代:320万ゴル(2人で20,000ゴル×160日)
宿泊費:30万ゴル(2人で余裕を見て20,000×15ヶ所)
食費:58万ゴル(2人で4000ゴル×145日 ※宿に泊まる日以外)
合計:408万ゴル
その他の雑費や不測の事態に備えて500万ゴルは欲しいところだ。
「ご、ごひゃくまんごる…。」
2人は目が回りそうになった。
「出兵の時は国がら費用が出るがらな~。
個人で行ぐにはながなが辛いべな。」
「あんだ、それぐらいだしでやれ~!
…っでいいだいどこだが、それは自分たぢでやらねばな。」
「はい。
ゴルドさん、エシアドの崖で稼ぎやすいモンスターはいますか?」
「う~ん。
報奨金や素材買取金はBランクがら跳ね上がるんだべよ。
それまでは似だり寄っだりだな~…。」
「そうですか…。
Dランクをたくさん狩っても、持ち帰れないんですよね…。
かといって毎回持って帰るとなると、どれだけかかるかわかりませんし…。」
「特殊個体の討伐依頼だどしでも1.5倍にしがならねえがらな~。」
ダニスさんも冒険者について詳しいようだ。
「…よし、特別サービスだべ。
毎日馬車をエシアドの崖まで往復させる。
それに狩っだ獲物を載せろ。」
「え!?
…ゴルドさん、これ以上ご迷惑おかけできません…。」
「乗りかかった船だべよ。
そんかわり、苦しいこどあっでも途中で投げ出さないこどと、死なないこど約束しでくれ。」
「ゴルドさん…。」
そこまでお世話になることに踏ん切りがつかないロックとティナ。
ダニスさんが口を開いた。
「おめえたぢに、死んだ息子を重ねでるだよ。」
「…!
息子さん…、亡くなられてたんですね…。」
「あんだ、言っでながったんだべな。
息子は冒険者になっでしばらぐして家を出たんだ。
16歳だっだな。
B級までトントンっと強ぐなっで、もうちょっとでA級さなりそうだったんだと。
そごで出兵要請があっでね。
魔族と戦っで、死んじまったみたいだ。」
「そう…、だったんですね…。」
ゴルドが拳を握りしめて、絞り出すよう声で言った。
「正直いうと、おらも魔王をぶっ潰しでやりでえ。
でも、そんだけの力もねえし、魔王がいなぐなったあどの責任も取れねえ。
こごだけの話、おめえらに期待しぢまってんだ。
卑怯だとわがってるだ。
その後ろめださを誤魔化すために、おめえらにおせっがいしでんのかもしんねえ。」
「…ゴルドさん、僕たち、きっとなんとかします。
魔王を倒しちゃダメでも、他の方法を考えます。
ゴルドさんとダニスさんの気持ちも一緒に持っていきますから。」
「ロッグ…。」
「それに、死ななようにがんばります。
ちゃんとお2人に報告しなきゃいけませんから。」
「ティナ…。」
「…ありがどな。」
こうしてゴルド夫妻の協力のもと、500万ゴルを稼ぐことになった2人だった。
30
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる