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第三章 魔王の真実
第142話 魔王城へ
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ファルクの【龍化】を奪い、フォースドラゴンへと変身したロック。
ティナ・ミラ・リッチェル・ファルクを乗せて魔王城へと向かっていた。
魔王城はアルカトルの南東、海の遥か向こうの孤島にある。
元々レイナルドという国だったその孤島は、ロックの故郷でもある。
とはいえ、赤子の時に滅ぼされてしまったため、故郷の記憶はない。
滅ぼされ、魔王の根城となってしまった故郷へ降り立つことになるロックの胸は、不安で満たされていた。
イーザの救出が間に合うか、そして、自分の大切な場所が魔王たちによって踏み躙られている様を目にしなければいけないことに。
ふと、背中に心地よい感触を覚える。
不安が伝わったのか、ロックの事情を知るティナとミラが優しく背中を撫でていた。
(そうだ、僕は、1人じゃないんだ…。)
2人がいることが安心を与えてくれ、心が軽くなったロックは、自分の故郷だった場所へ向かって全速力で空を駆けた。
数時間後、魔王城が見えてきた。
速度を落とし、城の周りを旋回するロック。
(ここが…、僕の故郷の城…。)
滅ぼされとはいえ、魔族が今も使い続けている城。
破損などはないが、生気を感じない不気味な雰囲気を醸し出している。
城の周りの街も遠目で観察するロック。
ゴブリンなどであろうか?
人型のモンスターが闊歩している。
知能のある魔族が居住する城と違って、モンスターは家屋を活用する知能がないのだろう。
街はかなり荒廃しているようだった。
【気配察知】でミラが魔王城の様子を探る。
「1番上に、めっちゃ強い気配がある…。
多分魔王だね。
S級の気配がその辺りに集中してる。
さっきの魔族、デルベルトも魔王の近くだよ。」
ロックは城の中庭に降り立った。
そして、【龍化】を解き、スキルをファルクに返した。
「早速おいでなすったね。」
そう口にしながら周りを見回すリッチェル。
ロックたちをぐるりと囲むモンスターたち。
「今いるのは…、A級モンスターみたい。」
「時間がねえ!
強行突破して城の中に入ろう!」
イーザが連れ去られてから追いかけるまでのタイムラグは数十分。
飛龍とフォースドラゴンの速度は変わらないので、おそらくイーザを攫ったデルベルトも数十分前には到着しているはず。
「ファルク、落ち着いて。
全員で生きて帰るんだろう?
冷静さを失ったら終わりだよ。」
焦るファルクをリッチェルが諭す。
「そう…、だったな。
みんな、すまないが頼む。」
ロックが【分裂】スキルで分裂体を16体生み出す。
「絶対に助けましょう。
確かに、ここで時間は使えませんから、みなさんは進行方向の敵に集中してください。
周囲の敵は僕が引き受けます。」
「ざっと見た感じ、力で押してくるスキル構成だね。
みんな武術系の上級スキルを持ってるから[武技]に気をつけて。
【威圧】や【咆哮】を使ってくる奴がいるから、ティナとミラは前に絶対出ないように気をつけて。
男性陣ならステータス差で効果はほとんどないはず。
あと、一つ目のサイクロプスは全MPと引き換えに威力がやばい一撃を放ってくるから、絶対にもらわないようにね。」
【スキルコピー】の副次的な能力として、相手のスキルを知ることができるリッチェルが的確に指示を出していく。
ロックの【スキルスナッチ】も同じようなことができるが距離を縮める必要がある上、発動したら必ず何かのスキルを奪うことが前提のため、時間もかかる。
【スキルコピー】は応用力に関してはユニークスキルの中でも随一であろう。
「じゃあ行こう!」
みんなに嫌われていたリッチェルだが、まるで主人公かのように輝き、活躍している。
(リッチェルさんが一緒に来てくれてよかった…。)
ロックだけでなく、毛嫌いしていた女性2人もそう思うほどに。
「ウゥゥウオオオオオオ!!!」
筋肉隆々の巨大なモンスター、オーガが【咆哮】を使った。
心の底から恐怖を湧き上がらせるような叫びに、ティナとミラの動きが止まった。
…そして、格好良く前に出ていたリッチェルも。
S級になりたてで、ステータスも高めではないリッチェルは【咆哮】の効果により、敵の集団の目の前でフリーズする。
凶悪な顔をしたモンスターたちが醜悪な笑みを浮かべながらリッチェルに飛びかかっていく。
「リッチェルさん!」
…しかし、その全ての攻撃はリッチェルのスキル【深淵の闇】により、全て吸収された。
リッチェルは吸収したダメージを『闇球』へと変換し、モンスターにお返しする。
「…びっくりしたじゃないか!!」
そのまま攻め立てるリッチェルに、呆れて一瞬ポカンとしていたファルクも後に続く。
「頼りになるのかならねえのかわかんねえ奴だな!」
ティナも後方から弓や魔法で援護し、ミラが【光輝の壁】でダメージを半減させる。
しかし、A級モンスターの群れを突破することは容易ではない。
「ォォォオオオオオ!!!」
再び【咆哮】スキルによる叫びが響き渡る。
ティナ・ミラ・リッチェル・ファルクを乗せて魔王城へと向かっていた。
魔王城はアルカトルの南東、海の遥か向こうの孤島にある。
元々レイナルドという国だったその孤島は、ロックの故郷でもある。
とはいえ、赤子の時に滅ぼされてしまったため、故郷の記憶はない。
滅ぼされ、魔王の根城となってしまった故郷へ降り立つことになるロックの胸は、不安で満たされていた。
イーザの救出が間に合うか、そして、自分の大切な場所が魔王たちによって踏み躙られている様を目にしなければいけないことに。
ふと、背中に心地よい感触を覚える。
不安が伝わったのか、ロックの事情を知るティナとミラが優しく背中を撫でていた。
(そうだ、僕は、1人じゃないんだ…。)
2人がいることが安心を与えてくれ、心が軽くなったロックは、自分の故郷だった場所へ向かって全速力で空を駆けた。
数時間後、魔王城が見えてきた。
速度を落とし、城の周りを旋回するロック。
(ここが…、僕の故郷の城…。)
滅ぼされとはいえ、魔族が今も使い続けている城。
破損などはないが、生気を感じない不気味な雰囲気を醸し出している。
城の周りの街も遠目で観察するロック。
ゴブリンなどであろうか?
人型のモンスターが闊歩している。
知能のある魔族が居住する城と違って、モンスターは家屋を活用する知能がないのだろう。
街はかなり荒廃しているようだった。
【気配察知】でミラが魔王城の様子を探る。
「1番上に、めっちゃ強い気配がある…。
多分魔王だね。
S級の気配がその辺りに集中してる。
さっきの魔族、デルベルトも魔王の近くだよ。」
ロックは城の中庭に降り立った。
そして、【龍化】を解き、スキルをファルクに返した。
「早速おいでなすったね。」
そう口にしながら周りを見回すリッチェル。
ロックたちをぐるりと囲むモンスターたち。
「今いるのは…、A級モンスターみたい。」
「時間がねえ!
強行突破して城の中に入ろう!」
イーザが連れ去られてから追いかけるまでのタイムラグは数十分。
飛龍とフォースドラゴンの速度は変わらないので、おそらくイーザを攫ったデルベルトも数十分前には到着しているはず。
「ファルク、落ち着いて。
全員で生きて帰るんだろう?
冷静さを失ったら終わりだよ。」
焦るファルクをリッチェルが諭す。
「そう…、だったな。
みんな、すまないが頼む。」
ロックが【分裂】スキルで分裂体を16体生み出す。
「絶対に助けましょう。
確かに、ここで時間は使えませんから、みなさんは進行方向の敵に集中してください。
周囲の敵は僕が引き受けます。」
「ざっと見た感じ、力で押してくるスキル構成だね。
みんな武術系の上級スキルを持ってるから[武技]に気をつけて。
【威圧】や【咆哮】を使ってくる奴がいるから、ティナとミラは前に絶対出ないように気をつけて。
男性陣ならステータス差で効果はほとんどないはず。
あと、一つ目のサイクロプスは全MPと引き換えに威力がやばい一撃を放ってくるから、絶対にもらわないようにね。」
【スキルコピー】の副次的な能力として、相手のスキルを知ることができるリッチェルが的確に指示を出していく。
ロックの【スキルスナッチ】も同じようなことができるが距離を縮める必要がある上、発動したら必ず何かのスキルを奪うことが前提のため、時間もかかる。
【スキルコピー】は応用力に関してはユニークスキルの中でも随一であろう。
「じゃあ行こう!」
みんなに嫌われていたリッチェルだが、まるで主人公かのように輝き、活躍している。
(リッチェルさんが一緒に来てくれてよかった…。)
ロックだけでなく、毛嫌いしていた女性2人もそう思うほどに。
「ウゥゥウオオオオオオ!!!」
筋肉隆々の巨大なモンスター、オーガが【咆哮】を使った。
心の底から恐怖を湧き上がらせるような叫びに、ティナとミラの動きが止まった。
…そして、格好良く前に出ていたリッチェルも。
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…しかし、その全ての攻撃はリッチェルのスキル【深淵の闇】により、全て吸収された。
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ティナも後方から弓や魔法で援護し、ミラが【光輝の壁】でダメージを半減させる。
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再び【咆哮】スキルによる叫びが響き渡る。
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