バケモンスター

千田 陽斗(せんだ はると)

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呪われし場所

無重力洞にて

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 少年と少女が邂逅する日は近かった。それは必然であり、運命であり、宿命であり、使命でり、試練であり、はじまりであり、終わりであり、すべてであり、ゼロである。誰かがそう告げた気がした
 恐竜人たちは少年をある場所まで導いた。
「キュバア…」
 そうか、キュバア…なのか、少年は項垂れた。とうとうキュバア…の日がやってきたのだ。
 日が南の空に昇ったころたどり着いた。
 その場所は洞穴、恐竜人の住み処よりもずっと小さな入口だが、中は広い。野球ができるくらいの広さだ。
「ギュン!ギュワヨーン!」連れ添いの恐竜人が語気を荒くする。 
 少年はきょう、この洞穴の中に入り成長しなければならないのだ。  
 ちなみに洞穴の内部はなんらかの影響により重力が働かない。さしずめ無重力洞と言ったところか。
 縦に裂けたような狭い入口を少年はくぐり抜けた。薄暗い何もない空間に脚を踏み出す。
 それは聖なる闇、静寂と言う名のノイズ、宇宙的な気分が恍惚を誘う。
 徐々にからだが浮遊する感覚を覚えた。
 心地よい。まるで母胎のなか、羊水を泳いでいるようだ。
「オギャアアアアア!」
 
 少年は目を醒ました。あまりの浮遊の心地よさに眠ってしまったようだ。
 あるイメージが脳内に侵入してきた。 
 非音楽的な爆発音、戦闘機、それも旧式の丸みを帯びた機体。ダークグリーンの戦闘機は何機もの群れをなしていていて、次々に巨大な空母へぶつかって行く。巨大な鉄の塊に衝突した機体は力負けして爆発する。
 いっぽう空母の大群はなかなか倒れず大海に鎮座している。
 まるでクジラに襲われた魚群がパニックを起こし集団自決をしているようだった。
「サト子、ちゑ、ごめんよ。父さんは英霊になって帰るから…」
 そう聞こえた気がした。どれぐらいぶりだろう"ことば"を耳にしたのは。
 やがて浮遊感は薄れ、別のリアリティーが全身に伝わる。
 少年の意識は一九四五年の知覧に飛んでいたのだった。ここから多くの若者が特攻隊として生涯一度きりの出撃の任務にあたった。少年の意識はある特攻隊員の身体に入り込んでいた。そのことを理解するのにすこしだけ時間を要した。
 
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