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愛国心の骸
国と国
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ルナ暦2180年2月15日、ひとつの戦争が終結した。
その戦争は、トゥワイオ共和国の内乱と言う名の落とし穴にギース王国が引き摺られる形で勃発した。
トゥワイオ共和国は赤道付近に位置する常夏の国で、温暖な気候のおかげでフルーツ類の栽培がさかんである。
この豊かな南国は、かつてギース王国の植民地であった。
ちょうど150年前にあたる2030年、トゥワイオの独立を求める運動が実り「トゥワイオ共和国」が成立した。
民衆が待ち望んだ自主独立!
しかしトゥワイオ共和国とかつての宗主国との間には不透明で不平等な関係が残った。
トゥワイオからギースにフルーツ類が輸出されるときだけ例外的に関税の存在は無視され、その結果としてトゥワイオ側に生じる不利益は、トゥワイオ農業省関係者への「便宜」として埋め合わせされた。
とうぜん、トゥワイオのフルーツ農家は自分が作った作物をとても安く売らねばならず、収入は植民地時代と変わらぬまま低く抑えられてしまった。
この既得権益構造を打破し、ギースと公正で対等な貿易関係を再構築すべくさっそうと現れた者たちがいた。
「トゥワイオ自由経済連合」と名乗るその運動は、現実的で説得力のある改革案を断続的な草の根のデモ・署名活動でうったえ、数年のうちに支持を広げた。
若き指導者であるレオ・サンドラと補佐役のシド・エベレストは理性的な改革派としてメディアでも人気を博した。
鋭さを感じさせるその容姿とはうらはらに温和で理知的なレオ。
レオの鋭さを中和するようなふんわりとした童顔のデータマンであるシド。
この頭のきれるコンビが率いる改革運動は民主主義の王道を堂々と歩み始めたが、やがて不協和音が流れた。
強硬派ベザルフ・ド・ボンの独断である。
ベザルフ・ド・ボンは頭より体を動かすのが得意な行動主義者であった。
学生時代からさまざまな社会運動に参加、デモの呼び掛けや署名活動を積極的にこなした。
彼が関わってきたのは、動物愛護から反核運動、大学の授業料値上げ反対運動まで多岐に渡る。
肉体派の彼にはよくも悪くも思想的なこだわりがなく「運動と名がつくものならなんでも満足する男」と揶揄されてきた。
レオはトゥワイオ農業省における既得権益の問題を深刻なものとして見ていた。
常夏のトゥワイオを彩るフルーツ、そのフルーツを育てる農家の人々の満足な収入が保証されていないからだ。
しかしながら、この状況は変えがたかった。
抜け目のない官僚たちが幾重にも築いた金目の隠れ蓑を破壊するには、あまりに力が足りなかった。
ベザルフの持つ強引さは、若く優しく理知的なレオたちにはなかった。
当初、レオたちの運動に集まった学歴の高い若者たちは公民館の一室を借りては大人しく勉強会ばかりしていた。
あのまま内向きの活動ばかりしていては外の世間へ支持を広げる望みはなかっただろう。
そんな活動にも一定の成果はあった
頭が柔らかく未来志向の若き者たちが熟考したそのアイデアは、この国の既得権益構造にくさびを打ち込む抜本的なものだった。
この改革案を実現させるためにはベザルフと言うパワー・エンジンを搭載する必要性があると思われた。
じっさい、ベザルフからデモや署名と言った行動論を学び推進力が増したこの運動の支持は拡大した。
彼らのデモや演説は常に歓声で迎えられるようになった。
運動が軌道に乗り、さらに本丸に食い込む段階にきた。
国政選挙に改革派の議員候補を擁立する。
しかしベザルフと言う名のパワー・エンジンはあらぬ方向へひとり先走っていった。
ベザルフは秘密裏に私兵をまとめ上げ、議会へ武力を持って侵入したのだ。
「このまま民主的な運動を続けても改革は20年遅れる、ならば実力行使でいま改革しよう」
それがベザルフの主張だった。
ベザルフは銃をちらつかせ脅迫的に議会に解散を迫った。
政府首脳部の面々は、この国の民主主義の命脈より自分の命を優先させ、即座にこの非民主的な要求を飲んでしまった。
かくして憲法に明記された手続きをふまない形で政権交代がなされ、一方的にベザルフ革命政府の樹立が宣言された。
レオ、シドら穏健派グループは革命政府に名指しで政治運動の禁止を命じられた。
為す術のない彼らは運動から手を引くしかなかった。
かつての宗主国でありトゥワイオ国内に不法に旨味を握りしめているギース王国はこの事態を傍観しておられなかった。
あくまで隠密行動としてギース軍がトゥワイオに投入されたものの、革命政府が臨時に司令部を置いたワイト・ホテル内にてギース軍のスパイ部隊の1人がベザルフ私兵隊に正体を掴まれ殺害された。
この事件はベザルフ革命政府により世界に向けて発表された。
ベザルフはギース王国がトゥワイオ内の権益隠しのために動くことを予測していた。
自身の縄張りにおけるギース軍の不穏な動きを牽制するため、ギース軍スパイ部隊が侵入しこれをやむなく殺害したと宣伝した。
ギース王国は国際秩序連盟の常任理事国でありその体面は保たねばならぬ、それが王国が貫いてきた外交態度だった
体面と権益のため、戦争は是非とも回避したかった。
しかしトゥワイオの内乱の最中に起こったギース軍の隠密行動が暴露されてしまった。
「なぜ、トゥワイオとは無関係なはずのギース王国が軍を出したのか」
「内政干渉ではないか」
国際社会は疑問を投げ掛けた。
ギース王国は後付けで理由を急拵えして宣戦布告した。
「トゥワイオ共和国における内乱は長期的には我が国の安全にも影響を及ぼす可能性があると我々は考えた
これを予防するため我々ギース王国はベザルフ革命政府を武力を持って制圧する」
我が国の安全?本当に守りたいのはもちろん別のものだった。
全部で50万はくだらないギース軍と2000人程度のベザルフの私兵集団では勝負の行方は知れたものと思われたが、蟻地獄にはまったのはギース軍だった。
ベザルフ側の地の利を生かしたゲリラ戦法は、プライドの高いギース兵を混乱させ大いに苛立たせた。
さらにギース側に血の気を引かせたのは、ギース王国本土への爆撃予告である。
ギース王国には1000年の王政の歴史と由緒正しき王宮がある。
下手にベザルフ軍団の逆鱗に触れて自国の宝物を破壊されては困るとスノッブなこの王国は肝を冷やした。
本土の安全面を気にしながらの戦争はギース国民やギース首脳部の気を揉ませた。
王国内に充満したその緊張感は11日後、安堵のため息に変わった。
ベザルフの代理人を名乗るニュマールと言う人物が降伏の申し入れの通信文をギース軍司令官あてに送ったのだ。
この申し入れをギース軍最高司令部は二つ返事で承諾することになる。
かくして泥沼に突入すると思われたギース・トゥワイオ戦争は早期に終結することになった。
このとき戦争終結へのきっかけとなる作戦を立案したのが人呼んでダークエース、ジギー・ヨシダその人である。
その戦争は、トゥワイオ共和国の内乱と言う名の落とし穴にギース王国が引き摺られる形で勃発した。
トゥワイオ共和国は赤道付近に位置する常夏の国で、温暖な気候のおかげでフルーツ類の栽培がさかんである。
この豊かな南国は、かつてギース王国の植民地であった。
ちょうど150年前にあたる2030年、トゥワイオの独立を求める運動が実り「トゥワイオ共和国」が成立した。
民衆が待ち望んだ自主独立!
しかしトゥワイオ共和国とかつての宗主国との間には不透明で不平等な関係が残った。
トゥワイオからギースにフルーツ類が輸出されるときだけ例外的に関税の存在は無視され、その結果としてトゥワイオ側に生じる不利益は、トゥワイオ農業省関係者への「便宜」として埋め合わせされた。
とうぜん、トゥワイオのフルーツ農家は自分が作った作物をとても安く売らねばならず、収入は植民地時代と変わらぬまま低く抑えられてしまった。
この既得権益構造を打破し、ギースと公正で対等な貿易関係を再構築すべくさっそうと現れた者たちがいた。
「トゥワイオ自由経済連合」と名乗るその運動は、現実的で説得力のある改革案を断続的な草の根のデモ・署名活動でうったえ、数年のうちに支持を広げた。
若き指導者であるレオ・サンドラと補佐役のシド・エベレストは理性的な改革派としてメディアでも人気を博した。
鋭さを感じさせるその容姿とはうらはらに温和で理知的なレオ。
レオの鋭さを中和するようなふんわりとした童顔のデータマンであるシド。
この頭のきれるコンビが率いる改革運動は民主主義の王道を堂々と歩み始めたが、やがて不協和音が流れた。
強硬派ベザルフ・ド・ボンの独断である。
ベザルフ・ド・ボンは頭より体を動かすのが得意な行動主義者であった。
学生時代からさまざまな社会運動に参加、デモの呼び掛けや署名活動を積極的にこなした。
彼が関わってきたのは、動物愛護から反核運動、大学の授業料値上げ反対運動まで多岐に渡る。
肉体派の彼にはよくも悪くも思想的なこだわりがなく「運動と名がつくものならなんでも満足する男」と揶揄されてきた。
レオはトゥワイオ農業省における既得権益の問題を深刻なものとして見ていた。
常夏のトゥワイオを彩るフルーツ、そのフルーツを育てる農家の人々の満足な収入が保証されていないからだ。
しかしながら、この状況は変えがたかった。
抜け目のない官僚たちが幾重にも築いた金目の隠れ蓑を破壊するには、あまりに力が足りなかった。
ベザルフの持つ強引さは、若く優しく理知的なレオたちにはなかった。
当初、レオたちの運動に集まった学歴の高い若者たちは公民館の一室を借りては大人しく勉強会ばかりしていた。
あのまま内向きの活動ばかりしていては外の世間へ支持を広げる望みはなかっただろう。
そんな活動にも一定の成果はあった
頭が柔らかく未来志向の若き者たちが熟考したそのアイデアは、この国の既得権益構造にくさびを打ち込む抜本的なものだった。
この改革案を実現させるためにはベザルフと言うパワー・エンジンを搭載する必要性があると思われた。
じっさい、ベザルフからデモや署名と言った行動論を学び推進力が増したこの運動の支持は拡大した。
彼らのデモや演説は常に歓声で迎えられるようになった。
運動が軌道に乗り、さらに本丸に食い込む段階にきた。
国政選挙に改革派の議員候補を擁立する。
しかしベザルフと言う名のパワー・エンジンはあらぬ方向へひとり先走っていった。
ベザルフは秘密裏に私兵をまとめ上げ、議会へ武力を持って侵入したのだ。
「このまま民主的な運動を続けても改革は20年遅れる、ならば実力行使でいま改革しよう」
それがベザルフの主張だった。
ベザルフは銃をちらつかせ脅迫的に議会に解散を迫った。
政府首脳部の面々は、この国の民主主義の命脈より自分の命を優先させ、即座にこの非民主的な要求を飲んでしまった。
かくして憲法に明記された手続きをふまない形で政権交代がなされ、一方的にベザルフ革命政府の樹立が宣言された。
レオ、シドら穏健派グループは革命政府に名指しで政治運動の禁止を命じられた。
為す術のない彼らは運動から手を引くしかなかった。
かつての宗主国でありトゥワイオ国内に不法に旨味を握りしめているギース王国はこの事態を傍観しておられなかった。
あくまで隠密行動としてギース軍がトゥワイオに投入されたものの、革命政府が臨時に司令部を置いたワイト・ホテル内にてギース軍のスパイ部隊の1人がベザルフ私兵隊に正体を掴まれ殺害された。
この事件はベザルフ革命政府により世界に向けて発表された。
ベザルフはギース王国がトゥワイオ内の権益隠しのために動くことを予測していた。
自身の縄張りにおけるギース軍の不穏な動きを牽制するため、ギース軍スパイ部隊が侵入しこれをやむなく殺害したと宣伝した。
ギース王国は国際秩序連盟の常任理事国でありその体面は保たねばならぬ、それが王国が貫いてきた外交態度だった
体面と権益のため、戦争は是非とも回避したかった。
しかしトゥワイオの内乱の最中に起こったギース軍の隠密行動が暴露されてしまった。
「なぜ、トゥワイオとは無関係なはずのギース王国が軍を出したのか」
「内政干渉ではないか」
国際社会は疑問を投げ掛けた。
ギース王国は後付けで理由を急拵えして宣戦布告した。
「トゥワイオ共和国における内乱は長期的には我が国の安全にも影響を及ぼす可能性があると我々は考えた
これを予防するため我々ギース王国はベザルフ革命政府を武力を持って制圧する」
我が国の安全?本当に守りたいのはもちろん別のものだった。
全部で50万はくだらないギース軍と2000人程度のベザルフの私兵集団では勝負の行方は知れたものと思われたが、蟻地獄にはまったのはギース軍だった。
ベザルフ側の地の利を生かしたゲリラ戦法は、プライドの高いギース兵を混乱させ大いに苛立たせた。
さらにギース側に血の気を引かせたのは、ギース王国本土への爆撃予告である。
ギース王国には1000年の王政の歴史と由緒正しき王宮がある。
下手にベザルフ軍団の逆鱗に触れて自国の宝物を破壊されては困るとスノッブなこの王国は肝を冷やした。
本土の安全面を気にしながらの戦争はギース国民やギース首脳部の気を揉ませた。
王国内に充満したその緊張感は11日後、安堵のため息に変わった。
ベザルフの代理人を名乗るニュマールと言う人物が降伏の申し入れの通信文をギース軍司令官あてに送ったのだ。
この申し入れをギース軍最高司令部は二つ返事で承諾することになる。
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