ダークエース 国籍なき英雄

千田 陽斗(せんだ はると)

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愛国心の骸

戦争のあと

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 ギース・トゥワイオ戦争終結後、ジギー・ヨシダ伍長は任務を終え帰国した。
 しかしある命令のために彼には帰宅の準備をする暇も与えられなかった。
 国防委員長代理の名前で出されたその命令の内容はこうだった。
「ジギー・ヨシダ伍長はただちに国防省へ立ち寄るように」
 それは決して寄り道と呼べるような気軽な訪問ではなかった。
 と言うのもジギー・ヨシダ伍長の功績を表彰するための式が国防省にて急に執り行われることになったからだ。
 ジギー伍長はピューレ陸軍少佐が運転する軍用ジープの助手席に乗り込み灰色の古い様式の建造物が並ぶ官公庁街へ向かう。
 国防省の建物の中は帝国時代からの伝統をこれでもかと誇るような華美な装飾であふれ、プライドだけは高い制服組があわただしく動いている。
 ジギー・ヨシダ伍長は、ギース・トゥワイオ戦争の早期解決に関わる重大な作戦の発案者として国防委員長代理から表彰され少尉に昇進した。
「自分で言うのもなんですが下士官待遇の私への表彰にしちゃ、これは大げさではないですか」
 この表彰式の最中、ジギーがピューレ少佐にこぼした。
「ま、今に分かるさ」
 昇進のための手続きや挨拶を済ませ、国防省のロビーを出ようとしたそのときである。
 彼を待ち構える人だかり。
 一斉にたかれたカメラのフラッシュの奇襲にジギーはたじろぐ。
 ジギー軍人の本能で一瞬だけ警戒心を覚えた。
「ジギー少尉おめでとうございます」「どんなお気持ちですか」「私たちの番組だけにコメントを」
 戦争から帰り面倒事を済ませたばかりのお疲れジギーにマスコミ各社が矢継ぎ早にマイクを向けた。
「えーと、あの…」
 陸軍でめちゃめちゃにしごかれたジギーだったが、こんな訓練はしたことがない。
 何を聞かれたって、何をどう答えたらいいのやら。

「こっちだ、早くジープに」
 機転を利かせたピューレ少佐がマスコミの人だかりの隙間からまごつくジギーを手招く。
 ジギーはどんなゲリラ兵よりも手強そうなマスコミの群れを掻い潜りはなんとか脱出に成功。
 ジープに乗り込みカメラのフラッシュが瞬く報道の戦争からあっという間に逃走。


 ギース王国民にしてみたら今回の戦争は寝耳に水の出来事だった。
 国際秩序連盟の常任理事国としての体面を保つと言う建前があったとは言え、80年もの長い期間においてこの国は戦争を回避してきた。
 結果として蓄積されてきた戦争そのものに対する国民の忌避感情は拭いがたいものがあった。
 そもそも理由も分からない戦争で家族や恋人が兵として命を落とすなんて誰でも耐えれないことだろう。
 いやな戦争を終わらせてくれた英雄、それがジギー・ヨシダといういち軍人への民衆の評価だった。

 ジギー・ヨシダは戦争を武力ではなく頭脳で終わらせたダークエースだった。
 武勲を立てるもの(エース)は表舞台で輝くが策略を練る知略家は暗い裏部隊にいる、だからエースはエースでも暗いエースダークエースと言うわけだ。

 こうして国民の声に後押しされる形で、この大げさな「表彰の儀」が執り行われたと言うわけである。

 さてジギー・ヨシダはどんな作戦を立案して、このいやな戦争を終わらせたのだろうか。
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