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愛国心の骸
さよなら祖国 1
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疑惑の英雄に対する、苛烈なバッシングはつづいた。
「無国籍者にこの国への忠誠心はあるか」
「あの無国籍者はスパイではないのか」
テレビ、週刊誌、インターネット…あらゆるメディアにそのような論調の批判記事が載り、それらはジギーを包囲網のごとく追い詰めた。
国籍の有無がこれほどまでに、功績への評価に影響を及ぼすのか。
ジギーは彼の部屋に閉じ籠り、非難の嵐をしのいでいた。
アメニモマケズ…。
幼いころに読み聞かせてもらったあの本を枕元に置いては、頁を開く。精神状態は限界に達しつつあった。
孤立無援状態の彼を気にかける者もいた。しかし、いくつかのしがらみが彼への救いの手を妨げていた。
「やつをなんとかしてやりたい」
ギース陸軍所属のイカ・メーシンとピューレは同じ日に辞表を書いて、同じ日に辞表を提出した。
国籍を持たぬジギーをスパイと疑うジギー懐疑派は陸軍内部にも大勢いた。
心の中で懐疑するだけならまだいい。なんと軍上層部は、解雇したジギーと隊員との接触をも禁止してしまった。こうなっては、どうにも手が出せない。
ならばいっそ国への忠誠を誓う身から身軽な私人となり、ジギーの助けになってやろうというのが彼らの考えだった。
スターダスト・シティー、モス通り54番街にジギーは部屋を借りていた。
「ずいぶん狭くて暗い路地だ」
ある日の昼下がり、ピューレを伴ってここを訪れたイカ・メーシンは、彼が身を潜めるように暮らす通りへ向かった。なるほど、この狭さ、暗さなら厳しい世間の目から少しは逃れられるかもしれない。
「電話も実名SNSのフェースノートのアカウントも、つながりやしない。ダークエース氏は闇に紛れるのがお上手だ」
ジギーは常に暗闇に身を置いていた。あるいはこの国の暗黙の存在、無国籍者の街に、あるいは戦場の裏舞台に、あるいは軽薄な世論に追いやられ世間の闇に。
そんなジギーのことを考えるとイカ・メーシンはピューレのジョークに応える気持ちにはなれなかった。
「無国籍者にこの国への忠誠心はあるか」
「あの無国籍者はスパイではないのか」
テレビ、週刊誌、インターネット…あらゆるメディアにそのような論調の批判記事が載り、それらはジギーを包囲網のごとく追い詰めた。
国籍の有無がこれほどまでに、功績への評価に影響を及ぼすのか。
ジギーは彼の部屋に閉じ籠り、非難の嵐をしのいでいた。
アメニモマケズ…。
幼いころに読み聞かせてもらったあの本を枕元に置いては、頁を開く。精神状態は限界に達しつつあった。
孤立無援状態の彼を気にかける者もいた。しかし、いくつかのしがらみが彼への救いの手を妨げていた。
「やつをなんとかしてやりたい」
ギース陸軍所属のイカ・メーシンとピューレは同じ日に辞表を書いて、同じ日に辞表を提出した。
国籍を持たぬジギーをスパイと疑うジギー懐疑派は陸軍内部にも大勢いた。
心の中で懐疑するだけならまだいい。なんと軍上層部は、解雇したジギーと隊員との接触をも禁止してしまった。こうなっては、どうにも手が出せない。
ならばいっそ国への忠誠を誓う身から身軽な私人となり、ジギーの助けになってやろうというのが彼らの考えだった。
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