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愛国心の骸
図書館を制圧して交渉に持ち込む 2
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「帝国構想」なる任を帯びたニュマール・トンファーがハムンタウンの図書館に到着したのは午前11時24分のことだった。
相変わらず照り付ける南国の日差しを手で遮りながらニュマールは車を降りた。そして、すぐさま異変を感じ取ったのだった。
グレーの迷彩の戦闘服は市街戦において"見えていても印象に残りにくくする"効果があると言う。
そのグレーの迷彩の戦闘服を着た兵たちが図書館の建物の周囲を武装して陣取っていた。
その光景をニュマールは幻覚ではないかと目を疑った。
しかし、それは幻覚ではなかった。しかもそれは、思い思いの作業服の類いを戦闘服として着ている革命政府の私兵隊とも明らかに違う、正式の軍服と装備で統一されたギース兵たちだった。
ニュマールの護衛に付く私兵隊の一人が拳銃を構え駆けつける。
「これは、一体…?」
ニュマールたちはギース兵に存在を察知されぬように車の陰に隠れる。
「見たまえ。図書館が、敵に占拠されてしまっているようだ」
「なんということだ」
鬼の居ぬ間に自分の国の図書館に居座るギース兵たち。怒りが沸騰した護衛の兵が飛び出して銃を向けようとした。
「ま、待て。奴等の構えるアサルトライフルが見えんか。私たちが今持っている拳銃より威力、命中率、射程において上だぞ。しかも何丁も。敵いっこない」
怒りの火を沈め気配を消し、様子を見ることにしたニュマールだったが…。
「ニュマール・トンファー氏ですね。是非貴方とお話しがしたいと思っておりました」
実は二階から監視していたため、ギース側はニュマールの来訪を既に確認していた。
客人をもてなすように敵を迎えたのはジギー・ヨシダ伍長であった。
呆気に取られた私兵隊たちは銃を構えることすら忘れ戦意喪失させられた。
「こちらへ」
何度も訪れているこの場所で他人行儀に案内されるとはニュマールも想像しなかった。途中の廊下にはところどころ、紙袋が置かれていたのをニュマールたちは認めた。
応接間ではイカ・メーシン中佐とその部下数名が敬礼で出迎えた。こちらにいる兵は武器の類いは持っていないよう。
「あい、お前らは下がってよい。私ひとりで十分なようだ」
相手に攻撃の意志がないことを悟ったニュマールは護衛に付いた二人を廊下で待たせ一人で入室した。応接間にはジャスミン茶の香りが漂う。
イカ・メーシン中佐はジギー・ヨシダ伍長を交渉人に指命し、当作戦における相当な権限を彼に与えた。
下士官である彼の階級から考えれば、やや特例の措置だったが、この場合は作戦立案者本人がイニシアチブを取ったほうが良いと判断したのであった。
「これは人間力の勝負になる」
イカ中佐はそう語ったと言う。
ジギー・ヨシダの右隣にイカ・メーシン中佐が座り向かい合わせに革命政府、ニュマール・トンファーが座る。 上品なクロスをかけたテーブルには茶、クーデター勢力を降伏せしめるための交渉がはじまる。
「ニュマール・トンファー殿、貴殿がこの図書館に出入りしていたのは噂に聞いておりました。つきましては、詳しくお話を伺いたいと思いまして…」
「ふん、そこまで調べておったか。お主らの目的は単なる談話ではあるまい。なにを企んでおる?」
「貴殿は革命政府の頭脳であると聞き及んでおりましたが、流石です。要求はあなた方、革命政府の降伏です。そのためにギース軍は派遣されましたので」
「それで、私たちが簡単に頷くわけなどなかろう…」
ニュマールの声が怪しくなって行く。
「このクーデターは単発的な暴動ではない。150年前に帝国主義者エイム・トンファーがなし得なかったトゥワイオ帝国の実現こそが真の望みなのだ。
おっと、しゃべり過ぎたかな」
茶を口にして、ジギーが語る。
「150年前と言えば確か、この国が民主主義の指導者ギン・ナンの率いた独立運動の結果、共和国として独立したころの話ですね。同時期にエイム・トンファーなる人物がいたとは初耳です」
読書家としての好奇心からジギーの口振りが少し弾む。しかし弾んだ好奇心のピンポン玉は却って対話者の堪忍袋の尾に触れてしまった。
「し、知った口を叩くな!元はと言えばお前らギースの連中が我が国を植民地にしていたのが悪いんだ!
我が先祖であるエイム・トンファーもまたこの国の独立を真剣に考えた。そして当時、帝国だったギースと対等になるために、この国も帝国にする構想を打ち立てたのだぞ!」
残念ながら、エイム・トンファーの帝国構想は同時期に独立運動をもり立てたギン・ナンの民主化案ほど支持を得られなかった。独立してから35年間、トゥワイオ共和国の正統性を疑うような言論は規制され、エイム・トンファーの帝国構想も歴史の闇に消えた。
エイム・トンファーの曾孫にあたるニュマール・トンファーはトンファー家の唯一で最後の後継者として先祖の遺したこの帝国構想を形にすべく、クーデターを企てたのだった。
かつて祖国を植民地とし、今も権益をこの地に温存するギースの民への憤り、救国の志を貫徹できなかった先祖の無念、ニュマール・トンファーの意識の古層に積もったどす黒いものが噴出しそうになったときだった。
紳士的な読書家の脳天がニュマールの視界に映る。
「私たちの先祖たちが大変ご迷惑をかけました」
そこには、すっと立ち上がり、屈む水鳥のように端正な形で頭を下げるジギーの姿があった。
同席したイカ・メーシン中佐も思わず立ち上がり頭を下げた。
「わ、分かった。頭を上げてくれ…」
ニュマール・トンファーの心を狭隘にせしめた何かが少しだけ融解していくような気がした。
イカ中佐が口を開く。
「当初、私たちはあなた方をも脅迫するつもりでいました。廊下の隅に紙袋があったでしょう?あれは爆薬の用意をしようとしたためです。ジギー伍長に考え直してくれと言われましたが…」
「この図書館を破壊するつもりでいたと言う訳か…」
「けっきょく、この図書館を破壊する案は放棄しました。私たちは自分たちに降りかかるかもしれない危機を除去する"と言う名目"でここに来ました。革命政府が降伏してくださればそれで良いのですよ、ニュマール殿…」
ジギーが念を押す。
「ひとつ聞いてよいか?たとえ革命政府が降伏したとて、私たちは帝国構想を諦めない"かもしれない"ぞ?その芽を摘まなくてよいのか?」
「クーデターと言う手法は民主主義国家では許容されないものです。しかし、帝国構想と言う思想は民主主義国家における言論、表現の自由により許容されます」
「言論、表現の自由だと?笑止。
もし帝国構想と言う思想が民主主義をも喰らう怪物に育ったら?
じっさい帝国と言うのは国家のために個人の自由を制限しうるものだ。
民主主義そのものが食い尽くされる自由を民主主義によって保証できると言うのか?」
「あくまで私個人の考えですが、そのようなことは起こりません。
民主主義と言う思想は人類が長い年月をかけて蓄えてきた最大の深度を持つ思想と考えます
まるで幾つもの河が水を運び海を形成するように…
大海を飲み干せる生物など地上に存在できません」
「これは、これは。相当な理想主義者だね…」
降伏の条件については交渉前から、かなり「譲歩」された。降伏さえ受け入れたらそれで良い、本来ならばこれはトゥワイオ共和国における内乱であるため、クーデター関係者の処遇等についてはトゥワイオ政府に一存する、そのように方向性が決まっていた。
交渉の内容について前向きに考えると言い残しニュマール・トンファーはこの場をあとにした。
もし交渉が決裂したら、ギース本土をも危険にさらす本格的な戦争状態に入る。
そんな外野の心配を他所に、最も望ましい結論が出た。
図書館交渉の翌日、革命政府が降伏を受け入れると宣言し、ニュマール・トンファーが降伏文を読み上げる様子を映した動画がインターネット上にアップロードされたのだった。
相変わらず照り付ける南国の日差しを手で遮りながらニュマールは車を降りた。そして、すぐさま異変を感じ取ったのだった。
グレーの迷彩の戦闘服は市街戦において"見えていても印象に残りにくくする"効果があると言う。
そのグレーの迷彩の戦闘服を着た兵たちが図書館の建物の周囲を武装して陣取っていた。
その光景をニュマールは幻覚ではないかと目を疑った。
しかし、それは幻覚ではなかった。しかもそれは、思い思いの作業服の類いを戦闘服として着ている革命政府の私兵隊とも明らかに違う、正式の軍服と装備で統一されたギース兵たちだった。
ニュマールの護衛に付く私兵隊の一人が拳銃を構え駆けつける。
「これは、一体…?」
ニュマールたちはギース兵に存在を察知されぬように車の陰に隠れる。
「見たまえ。図書館が、敵に占拠されてしまっているようだ」
「なんということだ」
鬼の居ぬ間に自分の国の図書館に居座るギース兵たち。怒りが沸騰した護衛の兵が飛び出して銃を向けようとした。
「ま、待て。奴等の構えるアサルトライフルが見えんか。私たちが今持っている拳銃より威力、命中率、射程において上だぞ。しかも何丁も。敵いっこない」
怒りの火を沈め気配を消し、様子を見ることにしたニュマールだったが…。
「ニュマール・トンファー氏ですね。是非貴方とお話しがしたいと思っておりました」
実は二階から監視していたため、ギース側はニュマールの来訪を既に確認していた。
客人をもてなすように敵を迎えたのはジギー・ヨシダ伍長であった。
呆気に取られた私兵隊たちは銃を構えることすら忘れ戦意喪失させられた。
「こちらへ」
何度も訪れているこの場所で他人行儀に案内されるとはニュマールも想像しなかった。途中の廊下にはところどころ、紙袋が置かれていたのをニュマールたちは認めた。
応接間ではイカ・メーシン中佐とその部下数名が敬礼で出迎えた。こちらにいる兵は武器の類いは持っていないよう。
「あい、お前らは下がってよい。私ひとりで十分なようだ」
相手に攻撃の意志がないことを悟ったニュマールは護衛に付いた二人を廊下で待たせ一人で入室した。応接間にはジャスミン茶の香りが漂う。
イカ・メーシン中佐はジギー・ヨシダ伍長を交渉人に指命し、当作戦における相当な権限を彼に与えた。
下士官である彼の階級から考えれば、やや特例の措置だったが、この場合は作戦立案者本人がイニシアチブを取ったほうが良いと判断したのであった。
「これは人間力の勝負になる」
イカ中佐はそう語ったと言う。
ジギー・ヨシダの右隣にイカ・メーシン中佐が座り向かい合わせに革命政府、ニュマール・トンファーが座る。 上品なクロスをかけたテーブルには茶、クーデター勢力を降伏せしめるための交渉がはじまる。
「ニュマール・トンファー殿、貴殿がこの図書館に出入りしていたのは噂に聞いておりました。つきましては、詳しくお話を伺いたいと思いまして…」
「ふん、そこまで調べておったか。お主らの目的は単なる談話ではあるまい。なにを企んでおる?」
「貴殿は革命政府の頭脳であると聞き及んでおりましたが、流石です。要求はあなた方、革命政府の降伏です。そのためにギース軍は派遣されましたので」
「それで、私たちが簡単に頷くわけなどなかろう…」
ニュマールの声が怪しくなって行く。
「このクーデターは単発的な暴動ではない。150年前に帝国主義者エイム・トンファーがなし得なかったトゥワイオ帝国の実現こそが真の望みなのだ。
おっと、しゃべり過ぎたかな」
茶を口にして、ジギーが語る。
「150年前と言えば確か、この国が民主主義の指導者ギン・ナンの率いた独立運動の結果、共和国として独立したころの話ですね。同時期にエイム・トンファーなる人物がいたとは初耳です」
読書家としての好奇心からジギーの口振りが少し弾む。しかし弾んだ好奇心のピンポン玉は却って対話者の堪忍袋の尾に触れてしまった。
「し、知った口を叩くな!元はと言えばお前らギースの連中が我が国を植民地にしていたのが悪いんだ!
我が先祖であるエイム・トンファーもまたこの国の独立を真剣に考えた。そして当時、帝国だったギースと対等になるために、この国も帝国にする構想を打ち立てたのだぞ!」
残念ながら、エイム・トンファーの帝国構想は同時期に独立運動をもり立てたギン・ナンの民主化案ほど支持を得られなかった。独立してから35年間、トゥワイオ共和国の正統性を疑うような言論は規制され、エイム・トンファーの帝国構想も歴史の闇に消えた。
エイム・トンファーの曾孫にあたるニュマール・トンファーはトンファー家の唯一で最後の後継者として先祖の遺したこの帝国構想を形にすべく、クーデターを企てたのだった。
かつて祖国を植民地とし、今も権益をこの地に温存するギースの民への憤り、救国の志を貫徹できなかった先祖の無念、ニュマール・トンファーの意識の古層に積もったどす黒いものが噴出しそうになったときだった。
紳士的な読書家の脳天がニュマールの視界に映る。
「私たちの先祖たちが大変ご迷惑をかけました」
そこには、すっと立ち上がり、屈む水鳥のように端正な形で頭を下げるジギーの姿があった。
同席したイカ・メーシン中佐も思わず立ち上がり頭を下げた。
「わ、分かった。頭を上げてくれ…」
ニュマール・トンファーの心を狭隘にせしめた何かが少しだけ融解していくような気がした。
イカ中佐が口を開く。
「当初、私たちはあなた方をも脅迫するつもりでいました。廊下の隅に紙袋があったでしょう?あれは爆薬の用意をしようとしたためです。ジギー伍長に考え直してくれと言われましたが…」
「この図書館を破壊するつもりでいたと言う訳か…」
「けっきょく、この図書館を破壊する案は放棄しました。私たちは自分たちに降りかかるかもしれない危機を除去する"と言う名目"でここに来ました。革命政府が降伏してくださればそれで良いのですよ、ニュマール殿…」
ジギーが念を押す。
「ひとつ聞いてよいか?たとえ革命政府が降伏したとて、私たちは帝国構想を諦めない"かもしれない"ぞ?その芽を摘まなくてよいのか?」
「クーデターと言う手法は民主主義国家では許容されないものです。しかし、帝国構想と言う思想は民主主義国家における言論、表現の自由により許容されます」
「言論、表現の自由だと?笑止。
もし帝国構想と言う思想が民主主義をも喰らう怪物に育ったら?
じっさい帝国と言うのは国家のために個人の自由を制限しうるものだ。
民主主義そのものが食い尽くされる自由を民主主義によって保証できると言うのか?」
「あくまで私個人の考えですが、そのようなことは起こりません。
民主主義と言う思想は人類が長い年月をかけて蓄えてきた最大の深度を持つ思想と考えます
まるで幾つもの河が水を運び海を形成するように…
大海を飲み干せる生物など地上に存在できません」
「これは、これは。相当な理想主義者だね…」
降伏の条件については交渉前から、かなり「譲歩」された。降伏さえ受け入れたらそれで良い、本来ならばこれはトゥワイオ共和国における内乱であるため、クーデター関係者の処遇等についてはトゥワイオ政府に一存する、そのように方向性が決まっていた。
交渉の内容について前向きに考えると言い残しニュマール・トンファーはこの場をあとにした。
もし交渉が決裂したら、ギース本土をも危険にさらす本格的な戦争状態に入る。
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