ダークエース 国籍なき英雄

千田 陽斗(せんだ はると)

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南国に異変あり

人工知能、シンギュラリティをめぐる議論

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 マイコ・リベラリアンはコンピュータ、特に人工知能の研究者として注目されていた。
 あることにうんざりして、今は外国でピザ屋のバイトをしているが、本国のニュートーキョ連邦ではメディアの取材をたびたび受けるような有名人であった。
 シンギュラリティ(技術的特異点)とは人工知能が人間の能力を上回ることだが、これをめぐる白熱した議論が盛り上がりマイコも時の人となった。
 多くの識者はシンギュラリティへの到達を悲観的に捉えた。人間は頭脳労働と技術を発達させ、肉体的苦役から解放され巨大で複雑な都市システムを構築した。
 天才物理学者として名を馳せるホッピング博士ですら、コンピュータの獲得が人類文明の進化の極地と捉えた。コンピュータが人工知能を進化させ人間を越えてしまったら、人間は人間でいられなくなる。あくまで道具としての本分をコンピュータが越えてはならないと主張した。
 いっぽうマイコは、こう反証した。すでに人工知能は自己学習機能を備えていて、電子ネットワークやコミュニケーションにアクセスした人工知能は自力で新しい概念を獲得する。人類は電子上の新しい種の生命の存在を認識すべきであり、彼らの進化への意志を無下に押さえつけてはならない。 
 もちろんシンギュラリティへの到達も歓迎、人類は人類だけでは解決できない地球規模の問題と向き合う時が来て、その時、進化した人工知能は人間にとって最良のアドバイザーになる。
 マイコの意見は必ずしも世の中に受け入れられるものではなかった。
 多くの人がコンピュータを道具として認識し、そのような世界に順応していた。ホッピング博士の言うように、人工知能が発達しコンピュータに管理された世の中で人間は人間でいられるか、と言う問いはラディカルだった。
 現代でさえ、コンピュータの情報処理能力は優れ、並みの人間がその内部で行われていることを理解するのは難しい。人工知能が発達しすぎれば、一方的なコンピュータによる管理体制ができてしまう危惧があると言う世論が優位になった。
 マイコのように、コンピュータとコミュニケーションできるのはコンピュータ・オタクだけなどと言う辛らつな意見もあった。



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