生きる、食べる

千田 陽斗(せんだ はると)

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ことばひとつ

ナツミとマサキ 一

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 ナツミは助手席の窓から外を眺めている。
 運転手の発する言葉をBGMにしながら。
「あそこのカツ丼うまいんだよね」
 ぼくとつな口調でつぶやく運転手の名前はマサキ。
 ナツミとマサキは合コンで出会い、本人たちいわく"ゆるく"意気投合。
 休日に二人で食事をすることにした。
 ナツミは物流会社の事務員で二八歳、趣味はゲーム、自己評価は"可もなく不可もない"人間。たまご型の輪郭をしたおっとり顔、付き合った人数は人並みだが、ドラマや映画のような大恋愛はしたことがないし期待もしていない。
 なぜかマサキという人物とはテンポが合うようだった。マサキは二九歳で農家をしている。肌は連日の外仕事で浅黒く日焼けしているが、さわやか風な顔立ちで、性格も大人しいめだ。
 ナツミは、周りが囃し立てるほどテンションは上がってない。
 「農家の人と話せるなんて珍しいじゃない。そんぐらいの感じ」と親しい人には話している。
 目的地の定食屋である「かなだ屋」に向かう途中でナツミの目に飛び込んだものがあった。
「あの大きな看板、なんで真っ白なんだろう」

 ほどなくして二人は、かなだ屋に到着した。
「うちで採れたトマトさ、ここで使ってもらってるんだ」
「そうなんですか」
 とりとめのないやり取りをしながら、二人は店内へ。
「禁煙席あるけど?」
「あ、うん。マサキさんは吸わないの?」
「うん。吸わない。禁煙席にしよっか」
 マサキはナツミを先に席に座らせ、自分は水を二人分コップに汲んだ。
 席につくと、マサキはかしこまってナツミに挨拶しなおした。
「今日はあらためてよろしく」
「そ、そんなご丁寧に。こちらこそよろしくお願いいたします」
 ナツミは少し恐縮しつつも、目の前の紳士ふうな男に好感をいだいた。
「さ、メニュー、メニュー。俺的にはカツ丼がおすすめなんだけど、好きなもの頼んでよ」
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