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ことばひとつ
ナツミとマサキ 二
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けっきょく二人ともカツ丼を頼んだ。
ナツミはふとマサキの手元に置かれたものが気になった。
「そういえばガラケーなんですね」
なんと、マサキの携帯はいまだにアイフォーンではなくガラケーだったのだ。
「もっと前だと、着メロとか自作していたよね」
「なつかしいですね。ところで、あの看板は?来る途中にあった大きくて真っ白な看板」
「あああれは、ラブホの…」
「ラ、ラブホ」
「あの看板さ、むかしはお城の絵が描かれてたの。通学路だったから小さいころは気にしてた。ま、ガッコが近いから真っ白にされちゃったんだけどね…」
この付近には小学校もあり、そこにマサキも通っていた。そのころには大きな看板にお城の絵が描いてあり子供たちの興味をひいていた。
しかし近年になって「子供への悪影響」とやらを考慮してあの看板は真っ白に塗り替えられたのだ。
これは聞かなければよかったとナツミは思った。むしろ嫌悪感とかではなかったが昼の食事時にしたい話でもなかろう、空気が微妙な感じになったところで注文の品が来た。
無言でカツ丼を食べ始めるふたり。
さすがに、ずっと無言なのはイヤ…。
店内では有線がかかっている。マサキは沈黙をやぶった。
「こ、この曲知ってる?」
「わかんないです」
「そ、そか。ぼくもわからない…」
ナツミはおおげさに話題を提示した。
「そう!音楽!九〇年代は音楽盛り上がってましたね。マサキさんは昔はなにが好きだったんですか」
「小林旭」
「え、それって演歌?歌謡曲?」
「いや親父の趣味に影響されてさ。『熱き心に』にとか好きなんだけど…」
ナツミさんはなんの音楽が好きだったの?とマサキが聞いた。
「マイラバとか好きでしたね」
「マイラバ?」
「わかんないですか」
「あんま聞かなかったな。マイラバって『LOVE LOVE LOVE』だっけ」
「やだー。それドリカムですよー」
ナツミはからかうようにけらけら笑った。
マサキの表情が思わず弛んだ。そして
「ナツミさんってめんこいな。"お嫁さん"に来てほしいよ。なんつって、はは」
マサキは虎の尾を踏んでしまった。農村のような環境で育ってきたマサキにしてみたら「お嫁さんに来てほしい」というようなフレーズは挨拶変わりのフレーズだったのだが…。
そう、ブーワードは"お嫁さん"だった。
「は?今なんと?」
ようやく和らいできたナツミの表情がまずい色に染まっていく。
「"嫁"って漢字はどう書きますか?」
せっかくの楽しいデートが口喧嘩の応酬にはやがわりしてしまった。
ナツミはふとマサキの手元に置かれたものが気になった。
「そういえばガラケーなんですね」
なんと、マサキの携帯はいまだにアイフォーンではなくガラケーだったのだ。
「もっと前だと、着メロとか自作していたよね」
「なつかしいですね。ところで、あの看板は?来る途中にあった大きくて真っ白な看板」
「あああれは、ラブホの…」
「ラ、ラブホ」
「あの看板さ、むかしはお城の絵が描かれてたの。通学路だったから小さいころは気にしてた。ま、ガッコが近いから真っ白にされちゃったんだけどね…」
この付近には小学校もあり、そこにマサキも通っていた。そのころには大きな看板にお城の絵が描いてあり子供たちの興味をひいていた。
しかし近年になって「子供への悪影響」とやらを考慮してあの看板は真っ白に塗り替えられたのだ。
これは聞かなければよかったとナツミは思った。むしろ嫌悪感とかではなかったが昼の食事時にしたい話でもなかろう、空気が微妙な感じになったところで注文の品が来た。
無言でカツ丼を食べ始めるふたり。
さすがに、ずっと無言なのはイヤ…。
店内では有線がかかっている。マサキは沈黙をやぶった。
「こ、この曲知ってる?」
「わかんないです」
「そ、そか。ぼくもわからない…」
ナツミはおおげさに話題を提示した。
「そう!音楽!九〇年代は音楽盛り上がってましたね。マサキさんは昔はなにが好きだったんですか」
「小林旭」
「え、それって演歌?歌謡曲?」
「いや親父の趣味に影響されてさ。『熱き心に』にとか好きなんだけど…」
ナツミさんはなんの音楽が好きだったの?とマサキが聞いた。
「マイラバとか好きでしたね」
「マイラバ?」
「わかんないですか」
「あんま聞かなかったな。マイラバって『LOVE LOVE LOVE』だっけ」
「やだー。それドリカムですよー」
ナツミはからかうようにけらけら笑った。
マサキの表情が思わず弛んだ。そして
「ナツミさんってめんこいな。"お嫁さん"に来てほしいよ。なんつって、はは」
マサキは虎の尾を踏んでしまった。農村のような環境で育ってきたマサキにしてみたら「お嫁さんに来てほしい」というようなフレーズは挨拶変わりのフレーズだったのだが…。
そう、ブーワードは"お嫁さん"だった。
「は?今なんと?」
ようやく和らいできたナツミの表情がまずい色に染まっていく。
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