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赤道直下のドタバタ

群衆に紛れて

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 虹から陽へ出向してきたヤミとヒカリをミラグロスたちは本部へ案内したが、それは形式的なものになった。型通りの挨拶、説明等を済ませるとミラグロスは緊張の仮面をとりにやりとした。
「お買い物タイムだ」
 陽のサイバーパトロールがヤミとヒカリに声をかけた目的は、拡大する居住区に合わせた人員増員が建前だが、じっさい陽の治安は驚くほどよい。
 しかし保安要員のたぐいは治安のよさに応じて人数を減らしたり増やしたりはできない。居住区の規模が大きくなれば不測の事態への備えもよけい必要になるとミラグロスは説明した。
「ま、難しいことはさておき、我々の目の前にあるのは暇と言う現実だ。現実を受け入れていざ買い物に行こうではないか」
 
 四人は市場に向かった。ガマズミは留守番だ。陽の青空市場はけっこう人でごった返していた。それは虹にはない賑わいだった。
 通りには露天売りのお店が並ぶ。
 バナナやマンゴーなどフルーツ、骨董品 乾燥させたゼリーフライや宇宙エビ、洋服などの色彩がヤミとヒカリの目に飛び込む。
「わー」 
 ヤミはおおげさにはしゃいでみせた。
 人が次から次に往ったり来たりする。いつか見たゼリーフライの群れみたく四人は群衆に紛れた。
 バナナの試食品を生で食べてみせるミラグロスを見て心配そうな姉妹。
「君たちは生食が不安かい?加工品ばかり食べているのだろう。大丈夫お腹は壊さないさ」
 ミラグロスはタガメやカブトムシの揚げたやつもぼりぼりとつまみながら市場を闊歩した。
「ミラグロスさん。ワイルドな方ですねー」
 ヒカリはカブトムシの揚げたやつを見ておっかなびっくり。 
 モデスタはある服屋の店頭に並ぶカラフルなドレスを指差して言った。
「ムームー」
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