虹のアジール ~ある姉妹の惑星移住物語~

千田 陽斗(せんだ はると)

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惑星動乱

闇夜に語り合う

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 皆の笑い声に紛れるようにジャックとヒカリは庭に出た。
 外があまりにも暗かったためヒカリは電気ランタンを点けた。
 この電気ランタンは、スイッチを入れると「ぼっ」と火がついたような音がするし、疑似炎がなかでゆらゆら揺れるし、赤外線効果で暖かみが伝わってくる。ローテクをハイテクで再現した感じがして、あんがいヒカリのお気に入りの品なのだ。
 地球から持ってきたと思われる木のテーブルと椅子があったので、二人は向かい合わせに座った。
 なぜテーブルや椅子が地球のものか分かるのか?この惑星には林や森がほとんど存在せず、一部を除いては岩肌がむき出しの殺風景な景色が広がっている。
 例外は「遠回りルート」と呼ばれる虹と蒼を結ぶ道。そこには、この惑星に原生する植物(のようなもの)が生い茂っている。
 その植物のようなものは赤や紫色の海草のようなもので、長いもので一〇メートルほどの高さまで育つが、食用にも他の用途にも使えないため放置されている。

 揺らめく疑似炎が二人の顔を照らす。
 この貴重な暗闇のなか、ヒカリの澄んだ目は幻惑されそうなほどきれいだった。
「なんで君たちはこんな惑星までやってきたの?」
「ダークマター災害にある姉妹が巻き込まれたの。ひとりは後遺症を患い、もうひとりは……」 
「それで、どうしたの?治療とか補償は?」
「すべては無かったことにされたわ。光輝く科学の未来のため、犠牲は闇のなかへ」
 ヒカリの悲しげな顔はこの世のものとは思えないくらい淡く浮かんでいる。
「辛いことを聞いたね」
 ジャックはヒカリに赤ワインを告いだ。
「でも、俺も似たようなものさ……」
「あなた、ほんとうに孤独そうね」
 聖母かと思うような哀れみの眼差しがジャックを射る。
「そうさ、俺は天涯孤独さ。俺にはあなたみたいな人が必要だとおもう。もしよかったら……」
「もしよかったら?その前にあなたの話も聞かせてよ。あなたはなぜここに?」 
 ジャックは咳払いをした。そして言葉を選びながらぽつりぽつり語りだした。
「知り合いがさ、新薬の実験に参加したんだ。でも彼女は新薬の影響で回復不可能な後遺症を負った。けっこう君の話と似てるね」
「なるほど。それで彼女さんはどうしたの?」
「これも君の話と同じさ。けっきょくなんの補償もないまま話はうやむやにされた。そうだ、チョコとか言うカルトじみたテロリストがいただろう」
「チョコちゃんは私たちの仲間だったわ。どこで道を間違えたのか」
 ジャックが捧げた赤ワインをヒカリは一口飲んだ。
「おかしいと思わないか?チョコや何人かの仲間だけであんな大胆なことやれると思うか?」
「言われてみたらそうかも。武器までしっかり調達していたわ。他にも協力者がいるのかしら?」
「そう。その協力者として俺が睨んでいるのがノッペラー社だ」
「ノッペラー社?!」
 その名前にヒカリも聞き覚えがあった。
「そう。ノッペラー社。そいつらはダークマター技術を科学や医療に応用しようとマッドな実験を繰り返した。君の話や俺の彼女の話にもノッペラー社が絡んでいる」
「そのノッペラー社が?まさか」
「ノッペラー社はあらたなダークマター資源を求めて宇宙で暗躍している。この惑星で発生したバグスターやドラゴン人間やテロなどにも絡んでるだろうな」
「だとしたら、真正面から対立したくないわね。私たちはこの居住区で自治を取り戻すだけで精一杯なんだから。ところで」
 ヒカリがワインを飲み干した。
「ジャックさん。あなた地球に彼女がいらっしゃるんですか?しかもご病気でいらっしゃる」
「あ、えーとそれは……」
「彼女さんがかわいそうですよ」
「ヒカリさん、すいません。でも僕のような男はたくさんの愛を所有していますゆえ」
 ヒカリはジャックの両手をしっかり握って、目をまっすぐ見た。
 ジャックのヒカリの目がいっそう輝きを湛えていることに気づいた。
「あなた、復讐の鬼になろうとしているのね?私がこんなこと言っていいのか……。でも私だったら復讐なんかしてほしくない。生きて、そばにいてあげてほしい」
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