吉田の三題話、短編のじかんです

千田 陽斗(せんだ はると)

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短編集

寿司屋のない村(寿司、村、羽の三題)

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 この村には寿司屋がなかった。
 寿司屋だけじゃない。
 人口三〇〇〇人のこの村にはなにもない。 
 少年はそう思っていた。
 酪農家だけで経済が回っている村。
 お金じゃない経済が回っている村。
 海がないから寿司は回らない。
 でも、そんな村にも情報の波はやってくる。
 テレビでCMしている、らっぱ寿司とはなんなのか?
 おなじクラスのみーちゃんやまーくんは街で食べたことがあるらしい。
 うらやましいなあ。
 テレビでこんなCMもしている。
「原子力は未来のエネルギーです。クリーンです」
 大人たちはひそひそ話をする。
「なにがクリーンなものか。原発のゴミを受け入れてるのは、この村ぞ。トイレのないマンションでねえか」
 ただちに口は塞がれる。
「原発の悪口言っちゃならん。原子力の補助金でわしらいい思いしてるだ。だがら毎週街で寿司が食えるんだべ」
 口をつぐんだひとはこっそりノートに書きなぐる。
「チェルノブイリを見ろ。食品の汚染に住民の避難。なんかあったらおらたちはてんでばらばらで、自分たちでやっていげねぐされてっぞ!!」
 声は届かない。
 少年たちは街を作る。テレビゲームの世界に架空の町を作る。
「街の電力はどっちがいいの?火力?原子力?原子力は事故ると大変っぽいけど?」
 「いーじゃん、別にー」
 少年たちはいずれ羽ばたく、補助金で何も言えない大人たちからはなにも聞かされてない。
 丘から飛び立つグライダーを眺める。
「東京に行きたい!ミュージシャンになって有名になって毎日寿司食いたい!」
 無鉄砲な情熱になにかがメルトダウンしそうな予感は。
 
 
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