2 / 3
短編集
侍の末裔のギャル (ギャル、刀、炎の三題)
しおりを挟む
九〇年代、この町のコギャルというものは、強いエネルギーをもっていたという。
そのありあまるエネルギーは、なんにでも向けられていた。
プリクラやたまごっちだけじゃない。
先生の説教臭い態度に反発したかと思えば、学校に迷いこんだタヌキを保護してみたり、消費増税に憤ってみたかと思えば、学校に子供向けの塗り絵本を持ち込んでみたり。
あるいは、普段なら興味も持たないような科学の授業に興味を示したり。
「すげー!火って赤だけじゃなくて緑や紫もあるんだ!やべー!ちょっとビジュアル系?」
「ビジュアル系ってなんだよ。意味ふめー」
「だからさ、ビジュアル系の人たちもがんばって髪の毛赤とか緑とか紫にしてんじゃん。メラメラしてるかんじ?」
「ギャハハハ、やべー、やべー!」
炎色反応というものがある。特定の金属イオンにガスバーナーなどで点火すると炎の色が変わるというものだ。
たとえばリチウムなら赤、銅なら緑、カリウムなら紫といった具合に。
コギャルたちは、授業中にこの炎色反応に突然感動して大声で語りはじめたのだ。
初老の科学教師は騒ぐコギャルたちを諭そうとした。
「科学の不思議さに驚いてくれるのはいいけど、授業中は静かにね」
コギャルたちは大声で返事をした。
コギャルたちにはリーダー格の存在がいた。
その名は宮本エリサ。
張りのあるハスキー・ヴォイスで「カラオケ行くよ!」と叫べば、落ち着きのないギャルたちがすぐに着いてくる。
宮本エリサはカリスマだった。
正義感もあった。
「あたしんち、日本刀あるんだけど」
この一言でいじめっこの男子を黙らせたこともあるが、本当に彼女の家には日本刀がある。
彼女は武士の末裔なのだ。
夏休み目前に宮本エリサに子分のコギャルたちが提案した。
「炎色反応の実験しないっすか?」
「は?実験?だりーよ」
「いや、あたしたち調べたんすけど、花火が色んな色を出すのは炎色反応なんですよねー。こないだの科学の授業以来それにハマっちゃって」
「お前ら真面目かよ。でも花火はいいな。今夜やるべ」
ちなみになぜか炎色反応にハマってしまったコギャルは、後に地元初の女性花火師としてちょっとした有名人になる。
その晩はスパークした。
他校のライバルのコギャルたちが夜の公園を陣取っていたのだった。
「佐々木アミ?あいつ、昔あたしに剣道でぼろ負けしたやつじゃん!」
佐々木アミは宮本エリサの幼なじみでありライバルだった。
もはや一触即発。
二人とも幼いころから剣道を習っていたのだが、どこからか二人分の竹刀が調達され、夜の公園は現代の巌流島となった。
戦いの炎はどんな花火より派手に燃えたという。
おまけに近頃この付近に出没していた下着泥棒まで捕まったという。
彼女たちは燃えたぎっていた。
そのありあまるエネルギーは、なんにでも向けられていた。
プリクラやたまごっちだけじゃない。
先生の説教臭い態度に反発したかと思えば、学校に迷いこんだタヌキを保護してみたり、消費増税に憤ってみたかと思えば、学校に子供向けの塗り絵本を持ち込んでみたり。
あるいは、普段なら興味も持たないような科学の授業に興味を示したり。
「すげー!火って赤だけじゃなくて緑や紫もあるんだ!やべー!ちょっとビジュアル系?」
「ビジュアル系ってなんだよ。意味ふめー」
「だからさ、ビジュアル系の人たちもがんばって髪の毛赤とか緑とか紫にしてんじゃん。メラメラしてるかんじ?」
「ギャハハハ、やべー、やべー!」
炎色反応というものがある。特定の金属イオンにガスバーナーなどで点火すると炎の色が変わるというものだ。
たとえばリチウムなら赤、銅なら緑、カリウムなら紫といった具合に。
コギャルたちは、授業中にこの炎色反応に突然感動して大声で語りはじめたのだ。
初老の科学教師は騒ぐコギャルたちを諭そうとした。
「科学の不思議さに驚いてくれるのはいいけど、授業中は静かにね」
コギャルたちは大声で返事をした。
コギャルたちにはリーダー格の存在がいた。
その名は宮本エリサ。
張りのあるハスキー・ヴォイスで「カラオケ行くよ!」と叫べば、落ち着きのないギャルたちがすぐに着いてくる。
宮本エリサはカリスマだった。
正義感もあった。
「あたしんち、日本刀あるんだけど」
この一言でいじめっこの男子を黙らせたこともあるが、本当に彼女の家には日本刀がある。
彼女は武士の末裔なのだ。
夏休み目前に宮本エリサに子分のコギャルたちが提案した。
「炎色反応の実験しないっすか?」
「は?実験?だりーよ」
「いや、あたしたち調べたんすけど、花火が色んな色を出すのは炎色反応なんですよねー。こないだの科学の授業以来それにハマっちゃって」
「お前ら真面目かよ。でも花火はいいな。今夜やるべ」
ちなみになぜか炎色反応にハマってしまったコギャルは、後に地元初の女性花火師としてちょっとした有名人になる。
その晩はスパークした。
他校のライバルのコギャルたちが夜の公園を陣取っていたのだった。
「佐々木アミ?あいつ、昔あたしに剣道でぼろ負けしたやつじゃん!」
佐々木アミは宮本エリサの幼なじみでありライバルだった。
もはや一触即発。
二人とも幼いころから剣道を習っていたのだが、どこからか二人分の竹刀が調達され、夜の公園は現代の巌流島となった。
戦いの炎はどんな花火より派手に燃えたという。
おまけに近頃この付近に出没していた下着泥棒まで捕まったという。
彼女たちは燃えたぎっていた。
0
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる