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被災地のユーレイに会いにいこう
白熱議論 ユーレイは物質か?
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三人はまずエミィを訪ねた。
ノリカは心霊写真についての追加取材を兼ねて、話を聞いておきたかったのだ。
Z市郊外のエミィの自宅兼研究所は、海から離れた高台にあったため津波の被害は免れた。
震災後には近所の人のための避難所としても解放されたくらいで、その
二階建ての一軒屋はけっこう広い。
「エミィ、こないだ振りだね」
「こんにちは。話はメールで聞いてます。レオさんにマコトさんもよろしく」
兄弟もエミィと挨拶を交わした。
頭は金髪、白衣をまとった変わりもの研究者、UMAがすきな遊び人、そんな遊び人の兄をしかたなく思いながらも、自分は真面目に職務をこなす記者。
よく考えると、なかなか変な組み合わせだなと思いノリカは内心微笑んだ。
この写真は浜辺で撮ったとか、この顔はあのひとのお父さんかもしれないとか、心霊写真が撮られた場所や撮ったひとの話をひとつひとつ取材していった。
「被災地で話を聞くと幽霊の目撃談をよく聞く。死んだ人や生き残った人の思いが被災地には強くのこってるんだろう」
しっかりと胸に響く低い声でレオがそう語ると、一同は神妙な気持ちになった。
「なんかお茶がしょっぱいや」
人々の無念を思い悲しさに打たれたマコトの目から流れ出した水は、彼の湯飲みに注がれていた。
「忘れないようにしなくちゃね」
ノリカも声を詰まらせ、絞り出すようにやっと気持ちをはきだした。
そして、四人はいろんなことをしゃべった。
ちなみにエミィは、在野の研究者として著書をだしている。
タイトルは『ユーレイは物質である』という。
これに関して、レオは引っ掛かるものがあった。
「ちょっと待ってくれ。エミィ氏が研究者以前に人として被災した人たちを思う気持ちは共感できる。ただひとつだけ理解できないことがあるんだ」
レオは腕を組んで作業椅子にどかっと座り込んだ。
"ユーレイは物質である"というのは違和感がある。
それは心的事実とでも言えばいいものなのか。
レオの頭のなかでもそこらへんの知識は整理がついていなかったが、あくまで霊というのはそれを信じるひとのなかに見えるものだと、近代科学的にそう考えるのが当たり前だとレオは思っている。
エミィの考えはこうだ。人は亡くなった直後に必ず二十一グラムだけ体重が減る。からだから抜け出した二十一グラムの「なにか」とはエクトプラズム。かつて自称霊能者がクチから吐き出したのとはちがう、無色透明の物質ということだ。
霊が写真に写るとは、その無色透明のエクトプラズムに何らかの光りの反射があり、それをレンズが捉えるということだとエミィは解説した。
いまいち納得がいかない、という表情のレオ。
いまいち理解はできていないが、エミィの新説に神秘性を認め、テンションがあがりぎみのマコト。
ノリカは対照的なこの兄弟のリアクションを交互に見比べておもしろがった。
まだ話したりない。そう言わんばかりにエミィは講義をつづけようとした。
「このユーレイ物質論でだいじなのは、エクトプラズムを構成する要素はなにかということ。これは尊厳とはなにかを考えるためにも重要な問題。それはつまり…」
ピンポーン。呼び鈴が鳴り講義はた中断された。
「あ、おばさんたち。どうしたの?」 近所のおばさんたちが、困った様子で訪ねてきたのだった。
ノリカは心霊写真についての追加取材を兼ねて、話を聞いておきたかったのだ。
Z市郊外のエミィの自宅兼研究所は、海から離れた高台にあったため津波の被害は免れた。
震災後には近所の人のための避難所としても解放されたくらいで、その
二階建ての一軒屋はけっこう広い。
「エミィ、こないだ振りだね」
「こんにちは。話はメールで聞いてます。レオさんにマコトさんもよろしく」
兄弟もエミィと挨拶を交わした。
頭は金髪、白衣をまとった変わりもの研究者、UMAがすきな遊び人、そんな遊び人の兄をしかたなく思いながらも、自分は真面目に職務をこなす記者。
よく考えると、なかなか変な組み合わせだなと思いノリカは内心微笑んだ。
この写真は浜辺で撮ったとか、この顔はあのひとのお父さんかもしれないとか、心霊写真が撮られた場所や撮ったひとの話をひとつひとつ取材していった。
「被災地で話を聞くと幽霊の目撃談をよく聞く。死んだ人や生き残った人の思いが被災地には強くのこってるんだろう」
しっかりと胸に響く低い声でレオがそう語ると、一同は神妙な気持ちになった。
「なんかお茶がしょっぱいや」
人々の無念を思い悲しさに打たれたマコトの目から流れ出した水は、彼の湯飲みに注がれていた。
「忘れないようにしなくちゃね」
ノリカも声を詰まらせ、絞り出すようにやっと気持ちをはきだした。
そして、四人はいろんなことをしゃべった。
ちなみにエミィは、在野の研究者として著書をだしている。
タイトルは『ユーレイは物質である』という。
これに関して、レオは引っ掛かるものがあった。
「ちょっと待ってくれ。エミィ氏が研究者以前に人として被災した人たちを思う気持ちは共感できる。ただひとつだけ理解できないことがあるんだ」
レオは腕を組んで作業椅子にどかっと座り込んだ。
"ユーレイは物質である"というのは違和感がある。
それは心的事実とでも言えばいいものなのか。
レオの頭のなかでもそこらへんの知識は整理がついていなかったが、あくまで霊というのはそれを信じるひとのなかに見えるものだと、近代科学的にそう考えるのが当たり前だとレオは思っている。
エミィの考えはこうだ。人は亡くなった直後に必ず二十一グラムだけ体重が減る。からだから抜け出した二十一グラムの「なにか」とはエクトプラズム。かつて自称霊能者がクチから吐き出したのとはちがう、無色透明の物質ということだ。
霊が写真に写るとは、その無色透明のエクトプラズムに何らかの光りの反射があり、それをレンズが捉えるということだとエミィは解説した。
いまいち納得がいかない、という表情のレオ。
いまいち理解はできていないが、エミィの新説に神秘性を認め、テンションがあがりぎみのマコト。
ノリカは対照的なこの兄弟のリアクションを交互に見比べておもしろがった。
まだ話したりない。そう言わんばかりにエミィは講義をつづけようとした。
「このユーレイ物質論でだいじなのは、エクトプラズムを構成する要素はなにかということ。これは尊厳とはなにかを考えるためにも重要な問題。それはつまり…」
ピンポーン。呼び鈴が鳴り講義はた中断された。
「あ、おばさんたち。どうしたの?」 近所のおばさんたちが、困った様子で訪ねてきたのだった。
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