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2◆アリス視点

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私達の可愛い可愛いテオドールちゃん。

テオドールちゃんは私達の大切な宝物だからこそ、何も思い出して欲しくないの。

これは私達のエゴだけど、愛でもあるのよ。

望まぬ力を持って生まれた哀れな御方……それがテオドールちゃん。

『なぁ、アリス………俺を殺してくれよ』

そんなことを言われ、私は声を荒らげてできないと言った。

どうして愛するテオドールちゃんを私が殺せると思ったの?

愛してるから願えば叶えると思ったの?

私を舐めないでほしいわね。

愛してるから、願っても縋っても私はテオドールちゃんを傷つけたり殺したりなんかしないのよ。

………だから、そんな泣きそうな顔で笑わないで。



生きることが辛いなら、一緒に旅をしましょう。

生きる目的を探してみましょう。

テオドールちゃんを愛する側近達と行きましょう。

………だけど、テオドールちゃんの力が貴方の自由を許さない。

忌まわしくて尊い高貴な力。

誰もが崇める素晴らしい力。

………テオドールちゃんを縛り付ける呪縛だとも知らないで、たまに許せなくなっちゃうわ。

どうしたら、テオドールちゃんを連れ出せるかしらね。



一つの魔術書が、私達の味方をした。

それは、テオドールちゃんを無力にする呪いだった。

これなら、テオドールちゃんを連れ出せるわ!

私達はさっそく儀式を始めたの。

『テオドールちゃん、怖くないからね。次に目覚めたら、一緒にどこまでも行きましょうね。愛しているわ……我が愛しのテオドール』

儀式を終わらせた後、私達はテオドールちゃんの記憶を封じた。

たから、テオドールちゃんは記憶喪失なの。

辛い記憶なんて忘れていいのよ。

だから笑ってほしい。

幸せになってほしい。

………生きてほしい。



可愛い可愛いテオドールちゃん、私達は貴方を連れ戻そうとする輩達から全力で貴方を守るわ。

この命にかけて………。

愛しているわ。
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