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13◆テオドール視点

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俺達は今、川で釣った魚を捌いて焼いて食べている。

俺には料理スキル的なものがないみたいで、俺が料理すると何故か黒いドロっとした何かになるから、料理は当番制だけど俺は除外されている。

でも何もしないのは嫌だから、手伝いだけはすることにしているんだ。

美味しい美味しいと食べていたんだが、敵はこっちの都合とか考えないものだからさ………いきなり攻撃してきたからビックリしたよ。

煙がモクモクと異常に出ていて、仲間達の姿がまったくみえなくて俺は魚を咥えたまま焦る。

敵よ、俺達はまだ食べきってないのに攻撃とかするな!

俺は内心怒り心頭だった。

不思議と周りが静かだけど、皆すごく冷静なんだね。

「テオドール、良かったら飲み物をどうぞ」

「エリオット、ありがとう」

真横からエリオットの声がして、でも姿は煙のせいでやはりみえない。

しかし、ちょうど喉渇いてたから飲み物を受け取ったんだ。

若干苦いけど、新しいお茶とかなのかな?

飲み終えた俺は、その後持っていた魚をポロッと落として気を失った。



疑問に思うべきだったんだ。

あんなに煙でみえなかったのに、何故エリオットは俺に飲み物を渡せたのかと。

だって、俺からエリオットがみえないならエリオットからも俺がみえなかったはずだから。

そもそも、何故エリオットだと思ったのか。

だって、エリオットは真正面にいたのにあのエリオットは真横にいた。

姿をみてないのに声がエリオットだったからエリオットだと思ってしまった。



今ならわかる……あの煙は煙幕だったんだ。

周りが静かだったのは、恐らく何かしらの魔術が使われていたのだろう。



そして、俺は思い出した。

優しい呪いが俺から消えて、冷たい記憶が俺を蝕む。

あぁ、俺は守られていた。

ずっと守られてるとはわかっていたけど、それ以上に守られていたんだ。

世界に定められた運命から、苦しむ俺を守ってくれていた。

優しくて大切な………俺の側近達。

わざわざ禁忌に触れてまで俺を連れて逃げてくれた俺の仲間。

………だけど、ごめん。

呪いが解けた俺は、強制的に国に身体が転移してしまった。

………仲間達を置き去りにして。

魔王とはこの国に縛り付けられる存在だから、望まぬ魔王の次世代の俺も国に縛り付けられる。

恐らく、二度と俺のように無力になるなんて方法で逃げ出すことはできないだろうな。

そう世界が修正するだろうから………。

もしかしたら、仲間達は側近を降ろされるかもしれない。

二度と俺を逃さないために………。

次世代を拐った反逆者として、二度と俺と会わせてもらえないかもしれない。



ごめんね……守ってくれたのに、ごめんね………。

俺は味方のいなくなった俺の部屋で静かに泣くのだった。
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