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食い扶持減らし
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母さんは言っていた。
暗闇の森には人喰い狐がいるから行ってはダメよと。
けれど、父さんは言っていた。
暗闇の森には楽しい楽園があるよと。
僕達の家は貧乏で、両親と僕と弟はいつも食うものに困っていた。
父さんは言っていた。
暗闇の森には秘密の楽園があって、父さんはそれを知ってるのだと。
そこでは、いつでもご馳走があってずっといたくなるほどの素晴らしいところだと。
母さんが病に倒れてしまったある日、父さんは僕に楽園の行き方を教えてくれた。
楽園から食料を持って帰って、母さんに食べてもらおうと思っていたんだ。
そしてまだ幼い僕と弟は、暗闇の森に入っていく。
……父さんの笑顔の裏の考えに少しも気づかないまま。
「兄ちゃん、本当に楽園なんてあるのかな」
「父さんが嘘つくはずないから、きっとあるはずだ」
ずっとずっと歩いて、楽園どころか森の恵みなんてまったくない。
暗闇の森はずっと暗いから、昼か夜かもわからない。
僕達は、薄々気づきはじめてしまったよ。
……僕達は、父さんに騙されて捨てられたのではないかと。
それは正解だった。
帰ろうにも帰り道がわからない。
もう、僕達は帰れないんだ。
そう思ったら、僕達は泣くことを我慢できなかった。
「「うわああーーーん!!」」
怖いよ。寂しいよ。帰りたいよ。
泣いて泣いて、たくさん泣いて。
気づいたらその人がいたんだ。
「おや、迷子かな」
「「きゃー!?人喰い狐ー!?」」
「いきなり失礼だな。私は狐獣人だけど、人なんて食べないよ。ちなみに、好物は油揚げだよ」
「狐…獣人……?」
「なにそれ?」
狐獣人を初めてみて、僕達は母さんの言っていた人喰い狐の話を思い出して震えて抱き合う。
僕達は知らなかったけれど、暗闇の森の向こうは獣人の国らしい。
あんまり人間と交流しないから、たまに出会うと化け物扱いされて逃げられるんだとか……。
「噂って、尾ひれ背びれかつきものだから仕方ないとはいえ、人喰い狐は酷い……」
「なんかごめんね、お兄さん」
「もふもふ可愛いね!お兄さん」
美人でもふもふのお兄さんに、僕達兄弟は初恋をした。
僕達は迷子になった理由を話したら、食料をわけてくれることになった。
でも、僕達を騙して捨てようとした父さんは許せなかった。
……だけど、やっぱり父さんを信じたい気持ちがまだ少しあって……。
帰って聞いてみようと思ったんだよ。
……まぁ、家に遅い時間に帰ったら父さんが腰を抜かして、僕達が死んで化けて出たと思ったらしくて、洗いざらい白状したよ。
簡単に言うと食い扶持減らしだった。
母さんは絶対に反対するから、母さんが寝込んだのをいいことに作戦を実行したんだって。
僕達は、わけてもらった食料をおいて森に戻る。
待っていてくれたお兄さんに抱きついてまた泣いた。
もう戻れない。
いや、戻っちゃいけない。
そして僕達は、お兄さんの家に住まわせてもらうことになった。
最初は少し辛かったけれど、初恋のお兄さんとずっと一緒なんだからと前向きに頑張ることにしたよ。
獣人の町は豊かな土地で、毎日お腹いっぱい食べられる。
お兄さんと暮らす日々は幸せだ。
でも、母さんと父さんは今どうしてるのか気になるから、心のどこかで素直に喜べないのだった。
暗闇の森には人喰い狐がいるから行ってはダメよと。
けれど、父さんは言っていた。
暗闇の森には楽しい楽園があるよと。
僕達の家は貧乏で、両親と僕と弟はいつも食うものに困っていた。
父さんは言っていた。
暗闇の森には秘密の楽園があって、父さんはそれを知ってるのだと。
そこでは、いつでもご馳走があってずっといたくなるほどの素晴らしいところだと。
母さんが病に倒れてしまったある日、父さんは僕に楽園の行き方を教えてくれた。
楽園から食料を持って帰って、母さんに食べてもらおうと思っていたんだ。
そしてまだ幼い僕と弟は、暗闇の森に入っていく。
……父さんの笑顔の裏の考えに少しも気づかないまま。
「兄ちゃん、本当に楽園なんてあるのかな」
「父さんが嘘つくはずないから、きっとあるはずだ」
ずっとずっと歩いて、楽園どころか森の恵みなんてまったくない。
暗闇の森はずっと暗いから、昼か夜かもわからない。
僕達は、薄々気づきはじめてしまったよ。
……僕達は、父さんに騙されて捨てられたのではないかと。
それは正解だった。
帰ろうにも帰り道がわからない。
もう、僕達は帰れないんだ。
そう思ったら、僕達は泣くことを我慢できなかった。
「「うわああーーーん!!」」
怖いよ。寂しいよ。帰りたいよ。
泣いて泣いて、たくさん泣いて。
気づいたらその人がいたんだ。
「おや、迷子かな」
「「きゃー!?人喰い狐ー!?」」
「いきなり失礼だな。私は狐獣人だけど、人なんて食べないよ。ちなみに、好物は油揚げだよ」
「狐…獣人……?」
「なにそれ?」
狐獣人を初めてみて、僕達は母さんの言っていた人喰い狐の話を思い出して震えて抱き合う。
僕達は知らなかったけれど、暗闇の森の向こうは獣人の国らしい。
あんまり人間と交流しないから、たまに出会うと化け物扱いされて逃げられるんだとか……。
「噂って、尾ひれ背びれかつきものだから仕方ないとはいえ、人喰い狐は酷い……」
「なんかごめんね、お兄さん」
「もふもふ可愛いね!お兄さん」
美人でもふもふのお兄さんに、僕達兄弟は初恋をした。
僕達は迷子になった理由を話したら、食料をわけてくれることになった。
でも、僕達を騙して捨てようとした父さんは許せなかった。
……だけど、やっぱり父さんを信じたい気持ちがまだ少しあって……。
帰って聞いてみようと思ったんだよ。
……まぁ、家に遅い時間に帰ったら父さんが腰を抜かして、僕達が死んで化けて出たと思ったらしくて、洗いざらい白状したよ。
簡単に言うと食い扶持減らしだった。
母さんは絶対に反対するから、母さんが寝込んだのをいいことに作戦を実行したんだって。
僕達は、わけてもらった食料をおいて森に戻る。
待っていてくれたお兄さんに抱きついてまた泣いた。
もう戻れない。
いや、戻っちゃいけない。
そして僕達は、お兄さんの家に住まわせてもらうことになった。
最初は少し辛かったけれど、初恋のお兄さんとずっと一緒なんだからと前向きに頑張ることにしたよ。
獣人の町は豊かな土地で、毎日お腹いっぱい食べられる。
お兄さんと暮らす日々は幸せだ。
でも、母さんと父さんは今どうしてるのか気になるから、心のどこかで素直に喜べないのだった。
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