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11◆クリア視点
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目を開くとそこは辺り一面暗闇だった。
何も見えなくて、ルネのことも見えなくて、それでも俺の固有スキルで場所を割り当てる。
道なんかないように見えるけど、それでも真っ直ぐ進んでいく。
ずっと進んでいくと何かに当たった。
そこには黒い塊がある。
四角いような丸いような………はっきりと形を認識することはできないけれど、確かにここに何かがある。
そして、俺の力がそれをルネだと教えてくれた。
「ルネ」
「………」
返事はないけれど、この中にルネがいる。
俺はそのよく形を認識することができない物を撫でてみた。
とても冷たくて、触っていると心が寂しくなり悲しくなってくる。
………これは、ルネの心の殻なんだろうか?
「ルネ、クリアお兄ちゃんだよ」
「………クリアお兄ちゃん?」
「そうだよ」
ルネが返事を返してくれて、それだけで俺は少しだけ安心できた。
返事をしてくれるということは、交渉の余地はあるはずだ。
俺ができることはあくまで導くこと。
暗示を解くことも封印を解くことも、俺にはできないけれど、導く力で一緒に帰ろう。
それにはルネの気持ちが必要になる。
強い気持ちで、暗示も封印も打ち破るんだ。
「ルネ、一緒に帰ろう」
「僕はパパを傷つけてしまった。ママも傷つけるかもしれない。僕の封印が解かれてしまったら、またあの人の暗示のせいで暴れてしまう。また傷つけてしまう。だから、僕はここにいた方がいい」
ルネの声はとても冷たく、全てを諦めているようだった。
「そんなことないよ。魔王様も王妃様もルネを心配している。それにその暗示なら一緒に打ち破ろう。打ち破りたいと強く思ってほしい。俺が導いてみせるから、だから一緒に強く思って」
「強く思ったって解けるはずがない。だって、僕はただの人間だから。パパとママの子供でも、ただの人間だから。僕なんて、いない方がきっといい」
もしかしたら、自分が人間であることをコンプレックスに思っていたのかもしれない。
………そんな発言だった。
「俺はルネが人間だからって、いなくなってほしいなんて思わない。一緒にいたいとずっと思ってる。だから帰ってきて欲しいと願っている。魔王様も王妃様もルネを大切に思っているだろうけれど、俺だって大切に思っているよ。もしも両親のために帰るのが嫌だと言うなら、俺のために帰ってきてほしい」
「僕のこと迷惑でしょ」
「俺がいつルネを迷惑に思った?俺がいつルネを迷惑だと言った?一度も思ってないし、一度も言ってないよ」
「………クリアお兄ちゃんは、僕を好き?」
「ルネが好きだよ」
「僕が結婚してって言ったらしてくれるの?僕をお嫁さんにもらってくれるの?そんなの嫌でしょ」
「俺の嫁さんになりたいの?じゃあ結婚しよう。大人になってからになるけどね。大切にするから一緒に帰ろう」
「………嘘じゃない?」
「嘘なんかじゃない」
「………」
ビシビシと僅かに聞こえるひびの音。
その音に俺は希望を持つ。
よく見れば、形を認識できなかった物がひび割れていく様子が見える。
「………クリアお兄ちゃん……僕、帰りたいよ。……帰りたい。……帰りたいの!!」
ルネの泣いている声が、必死に帰りたいと訴えてきている。
「うん、一緒に帰ろう」
バリンバリンッ!!
形のよくわからなかった黒い物が完全に壊れ、中から泣きはらしたルネが出てきた。
俺はルネを優しく抱きしめる。
「クリアお兄ちゃん!!」
辺り一面暗闇だったのが一気に明るくなっていって、どうやらルネの封印が溶けたようだった。
何も見えなくて、ルネのことも見えなくて、それでも俺の固有スキルで場所を割り当てる。
道なんかないように見えるけど、それでも真っ直ぐ進んでいく。
ずっと進んでいくと何かに当たった。
そこには黒い塊がある。
四角いような丸いような………はっきりと形を認識することはできないけれど、確かにここに何かがある。
そして、俺の力がそれをルネだと教えてくれた。
「ルネ」
「………」
返事はないけれど、この中にルネがいる。
俺はそのよく形を認識することができない物を撫でてみた。
とても冷たくて、触っていると心が寂しくなり悲しくなってくる。
………これは、ルネの心の殻なんだろうか?
「ルネ、クリアお兄ちゃんだよ」
「………クリアお兄ちゃん?」
「そうだよ」
ルネが返事を返してくれて、それだけで俺は少しだけ安心できた。
返事をしてくれるということは、交渉の余地はあるはずだ。
俺ができることはあくまで導くこと。
暗示を解くことも封印を解くことも、俺にはできないけれど、導く力で一緒に帰ろう。
それにはルネの気持ちが必要になる。
強い気持ちで、暗示も封印も打ち破るんだ。
「ルネ、一緒に帰ろう」
「僕はパパを傷つけてしまった。ママも傷つけるかもしれない。僕の封印が解かれてしまったら、またあの人の暗示のせいで暴れてしまう。また傷つけてしまう。だから、僕はここにいた方がいい」
ルネの声はとても冷たく、全てを諦めているようだった。
「そんなことないよ。魔王様も王妃様もルネを心配している。それにその暗示なら一緒に打ち破ろう。打ち破りたいと強く思ってほしい。俺が導いてみせるから、だから一緒に強く思って」
「強く思ったって解けるはずがない。だって、僕はただの人間だから。パパとママの子供でも、ただの人間だから。僕なんて、いない方がきっといい」
もしかしたら、自分が人間であることをコンプレックスに思っていたのかもしれない。
………そんな発言だった。
「俺はルネが人間だからって、いなくなってほしいなんて思わない。一緒にいたいとずっと思ってる。だから帰ってきて欲しいと願っている。魔王様も王妃様もルネを大切に思っているだろうけれど、俺だって大切に思っているよ。もしも両親のために帰るのが嫌だと言うなら、俺のために帰ってきてほしい」
「僕のこと迷惑でしょ」
「俺がいつルネを迷惑に思った?俺がいつルネを迷惑だと言った?一度も思ってないし、一度も言ってないよ」
「………クリアお兄ちゃんは、僕を好き?」
「ルネが好きだよ」
「僕が結婚してって言ったらしてくれるの?僕をお嫁さんにもらってくれるの?そんなの嫌でしょ」
「俺の嫁さんになりたいの?じゃあ結婚しよう。大人になってからになるけどね。大切にするから一緒に帰ろう」
「………嘘じゃない?」
「嘘なんかじゃない」
「………」
ビシビシと僅かに聞こえるひびの音。
その音に俺は希望を持つ。
よく見れば、形を認識できなかった物がひび割れていく様子が見える。
「………クリアお兄ちゃん……僕、帰りたいよ。……帰りたい。……帰りたいの!!」
ルネの泣いている声が、必死に帰りたいと訴えてきている。
「うん、一緒に帰ろう」
バリンバリンッ!!
形のよくわからなかった黒い物が完全に壊れ、中から泣きはらしたルネが出てきた。
俺はルネを優しく抱きしめる。
「クリアお兄ちゃん!!」
辺り一面暗闇だったのが一気に明るくなっていって、どうやらルネの封印が溶けたようだった。
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