悪魔召喚!しかし何故か人間のショタが現れた!?

ミクリ21 (新)

文字の大きさ
11 / 13

11◆クリア視点

しおりを挟む
目を開くとそこは辺り一面暗闇だった。

何も見えなくて、ルネのことも見えなくて、それでも俺の固有スキルで場所を割り当てる。

道なんかないように見えるけど、それでも真っ直ぐ進んでいく。

ずっと進んでいくと何かに当たった。

そこには黒い塊がある。

四角いような丸いような………はっきりと形を認識することはできないけれど、確かにここに何かがある。

そして、俺の力がそれをルネだと教えてくれた。

「ルネ」

「………」

返事はないけれど、この中にルネがいる。

俺はそのよく形を認識することができない物を撫でてみた。

とても冷たくて、触っていると心が寂しくなり悲しくなってくる。

………これは、ルネの心の殻なんだろうか?

「ルネ、クリアお兄ちゃんだよ」

「………クリアお兄ちゃん?」

「そうだよ」

ルネが返事を返してくれて、それだけで俺は少しだけ安心できた。

返事をしてくれるということは、交渉の余地はあるはずだ。

俺ができることはあくまで導くこと。

暗示を解くことも封印を解くことも、俺にはできないけれど、導く力で一緒に帰ろう。

それにはルネの気持ちが必要になる。

強い気持ちで、暗示も封印も打ち破るんだ。

「ルネ、一緒に帰ろう」

「僕はパパを傷つけてしまった。ママも傷つけるかもしれない。僕の封印が解かれてしまったら、またあの人の暗示のせいで暴れてしまう。また傷つけてしまう。だから、僕はここにいた方がいい」

ルネの声はとても冷たく、全てを諦めているようだった。

「そんなことないよ。魔王様も王妃様もルネを心配している。それにその暗示なら一緒に打ち破ろう。打ち破りたいと強く思ってほしい。俺が導いてみせるから、だから一緒に強く思って」

「強く思ったって解けるはずがない。だって、僕はただの人間だから。パパとママの子供でも、ただの人間だから。僕なんて、いない方がきっといい」

もしかしたら、自分が人間であることをコンプレックスに思っていたのかもしれない。

………そんな発言だった。

「俺はルネが人間だからって、いなくなってほしいなんて思わない。一緒にいたいとずっと思ってる。だから帰ってきて欲しいと願っている。魔王様も王妃様もルネを大切に思っているだろうけれど、俺だって大切に思っているよ。もしも両親のために帰るのが嫌だと言うなら、俺のために帰ってきてほしい」

「僕のこと迷惑でしょ」

「俺がいつルネを迷惑に思った?俺がいつルネを迷惑だと言った?一度も思ってないし、一度も言ってないよ」

「………クリアお兄ちゃんは、僕を好き?」

「ルネが好きだよ」

「僕が結婚してって言ったらしてくれるの?僕をお嫁さんにもらってくれるの?そんなの嫌でしょ」

「俺の嫁さんになりたいの?じゃあ結婚しよう。大人になってからになるけどね。大切にするから一緒に帰ろう」

「………嘘じゃない?」

「嘘なんかじゃない」

「………」

ビシビシと僅かに聞こえるひびの音。

その音に俺は希望を持つ。

よく見れば、形を認識できなかった物がひび割れていく様子が見える。

「………クリアお兄ちゃん……僕、帰りたいよ。……帰りたい。……帰りたいの!!」

ルネの泣いている声が、必死に帰りたいと訴えてきている。

「うん、一緒に帰ろう」

バリンバリンッ!!

形のよくわからなかった黒い物が完全に壊れ、中から泣きはらしたルネが出てきた。

俺はルネを優しく抱きしめる。

「クリアお兄ちゃん!!」

辺り一面暗闇だったのが一気に明るくなっていって、どうやらルネの封印が溶けたようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~

なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。 傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。 家のため、領民のため、そして―― 少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。 だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。 「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」 その冷たい声が、彼の世界を壊した。 すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。 そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。 人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。 アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。 失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。 今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

処理中です...