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ここはどこですか?
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私は走る。全力で。
我が君、浅野直忠様のもとへ、一刻も早く帰るために。
五つの時に茜が直忠に拾われてから十二年。念願の、直忠のくノ一となって早二年。くノ一らしく諜報活動主体で行動し、情報戦で直忠のお役に立っていると、茜は自負している。拾われてからずっと、茜は『我が君』と言って直忠に忠誠を誓っていた。直忠の為にくノ一になったと言っても過言ではない。茜を拾った浅野直忠は、自分についていきたいと懇願する茜を白賀の里に渡した。「本気でついて来たいなら、ここで一人前のくノ一になれ。」と。そこから茜はひたすら修行した。全ては直忠に仕えるため。そして十五歳のとき、ようやく直忠に認められたのだ。
今日はある寺に忍び込んだので、闇夜に紛れる黒装束。得た情報を早くお伝えするために、人の気配のしない山道を駆け抜ける。通りにくい場所は木の枝をつたって飛び移り、とにかく全速力で。
そして、木から飛び降り着地しようとしたその時―――
「!?」
突如着地予定地点が突然光り、円陣のようなものが現れた。
(駄目、回避できない・・・!!)
咄嗟に空中で姿勢をかえたけれど、かわしきれそうもない。そして、現れた円陣に足がついた瞬間、目が眩む強い光に包まれ――――
「成功だ!!」
「おおー!!」
「やりましたな!!」
閃光の影響で視覚が役に立たない状況で、成功だのやっただの、歓声が聞こえる。気配と声によれば、十人程はいそうだと、茜は隠し持っていた苦無を構え、警戒した。気配を辿るのに集中するために目を閉じる。
(大丈夫。目隠しでの戦闘も訓練してきました。あと十も数えれば視力も回復するはず。)
・
・
・
三
二
一
茜は目を開け、目線だけで周囲を確認した。
(・・・ここは何!?)
見たことのない内装、見たことのない衣装、見たことのない髪色の人間・・・茜は混乱した。
先程までいた山ではない。知らぬ間に気を失って運ばれていたのか。それとも幻覚?
しかし茜が焦ったのは一瞬。すぐに頭を切り替える。状況確認と状況判断。そして、このあとのことを何通りも考える。最善の道を選べるように。大丈夫、これも何度も何度も訓練してきた。茜はそう冷静に自分に言い聞かせた。
「お前たちは何者だ。」
(さあ、どう答えますか?場合によっては殲滅しなければ。いざとなれば自刃もやむを得ないですが・・・)
茜が問うと、正面にいた男が近づいてきた。この場の代表のように見受けられるが、老人も多い中で何故?という位若い。だけど確かに器が違うように感じて、茜は警戒を強める。
「突然のことで申し訳なく思います。私はネイノース国宮廷筆頭魔導師のステファン・エル・トライアスともうします。私が貴女様をこの地に召喚いたしました。異世界の聖女様。どうかこの世界をお救い下さい。」
「・・・へ?」
幾通りも可能性を考えたのに、予想から外れ過ぎていて、茜は白賀の里長が聞いていたら長時間説教をされるような、間抜けな反応をしてしまったのだった。
我が君、浅野直忠様のもとへ、一刻も早く帰るために。
五つの時に茜が直忠に拾われてから十二年。念願の、直忠のくノ一となって早二年。くノ一らしく諜報活動主体で行動し、情報戦で直忠のお役に立っていると、茜は自負している。拾われてからずっと、茜は『我が君』と言って直忠に忠誠を誓っていた。直忠の為にくノ一になったと言っても過言ではない。茜を拾った浅野直忠は、自分についていきたいと懇願する茜を白賀の里に渡した。「本気でついて来たいなら、ここで一人前のくノ一になれ。」と。そこから茜はひたすら修行した。全ては直忠に仕えるため。そして十五歳のとき、ようやく直忠に認められたのだ。
今日はある寺に忍び込んだので、闇夜に紛れる黒装束。得た情報を早くお伝えするために、人の気配のしない山道を駆け抜ける。通りにくい場所は木の枝をつたって飛び移り、とにかく全速力で。
そして、木から飛び降り着地しようとしたその時―――
「!?」
突如着地予定地点が突然光り、円陣のようなものが現れた。
(駄目、回避できない・・・!!)
咄嗟に空中で姿勢をかえたけれど、かわしきれそうもない。そして、現れた円陣に足がついた瞬間、目が眩む強い光に包まれ――――
「成功だ!!」
「おおー!!」
「やりましたな!!」
閃光の影響で視覚が役に立たない状況で、成功だのやっただの、歓声が聞こえる。気配と声によれば、十人程はいそうだと、茜は隠し持っていた苦無を構え、警戒した。気配を辿るのに集中するために目を閉じる。
(大丈夫。目隠しでの戦闘も訓練してきました。あと十も数えれば視力も回復するはず。)
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一
茜は目を開け、目線だけで周囲を確認した。
(・・・ここは何!?)
見たことのない内装、見たことのない衣装、見たことのない髪色の人間・・・茜は混乱した。
先程までいた山ではない。知らぬ間に気を失って運ばれていたのか。それとも幻覚?
しかし茜が焦ったのは一瞬。すぐに頭を切り替える。状況確認と状況判断。そして、このあとのことを何通りも考える。最善の道を選べるように。大丈夫、これも何度も何度も訓練してきた。茜はそう冷静に自分に言い聞かせた。
「お前たちは何者だ。」
(さあ、どう答えますか?場合によっては殲滅しなければ。いざとなれば自刃もやむを得ないですが・・・)
茜が問うと、正面にいた男が近づいてきた。この場の代表のように見受けられるが、老人も多い中で何故?という位若い。だけど確かに器が違うように感じて、茜は警戒を強める。
「突然のことで申し訳なく思います。私はネイノース国宮廷筆頭魔導師のステファン・エル・トライアスともうします。私が貴女様をこの地に召喚いたしました。異世界の聖女様。どうかこの世界をお救い下さい。」
「・・・へ?」
幾通りも可能性を考えたのに、予想から外れ過ぎていて、茜は白賀の里長が聞いていたら長時間説教をされるような、間抜けな反応をしてしまったのだった。
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