世界を救え?うるせぇバーカ!! 〜転生して勇者になれと言われたが命が惜しかったので断った結果〜

一☆一

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取り留めのない話

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 瞼が思わず落ちかねないような、そんな陽気だった。
 俺とフィリアはボチボチと山を降りていく。
 あの後。俺はフィリアのアドバイスのもと、衣服をジャージから当世風の簡素な布服にに改め、フィリアは一度住処に帰り大きく膨れ上がった布袋を持って戻ってきた。恐らく、これが金になるものとやらなのだろう。

「何入ってんの、それ」

 聞いてみると。

「貴金属の類はいつの時代も一定の価値を持つだろう」

 と返ってきた。成る程明快だ。
 …………ヒモみたいだとか、ちょっと思ったが考えないようにした。

 山を降りたところで、きゅるると腹の虫が鳴る。そういえば、昨日の夜も何も食べてないな。鳥なら探せば見つかりそうだが、朝から脂っこいものを食べるというのも……時間も勿体無いし、街に入って食べるか?
 と、そこで大切な事を確認し忘れていた事に気づいた。

「フィリアは普通に飯とか食えるのか?」
「全く問題はない。人間にも増して、何でも食すことが可能だ。肉でも、鉄でも、毒でもな」

 おお、良かった。
 街に入ってから実は岩しか食えませんとか言われたらどうしようかと思った。

「じゃあ飯は街に入ってから食うか……」
「そも、我は特に食事を必要としないのだが。何も我に気を遣うことは無いぞ」
「ん? 俺気なんて遣ってないけど」
「街で食うには金がかかるだろう。貴金属が高く売れるとはいえ無限ではない。我の分まで負担する事はないと言っている」
「え、食べたくないのか?」
「そういう訳ではないが。味の良し悪しは楽しめる故な」
「じゃあ食おうぜ。二人で食った方美味く感じるだろ。金なんて二の次だ二の次!!」
「我の金で食う腹づもりの貴様が言う事ではないと思うが……」
「節約した方が良いとか提案しといてその言い分は無くね!?」

 俺が悲鳴に近い叫びをあげると、フィリアは少し微笑んだ……気がする。多分。
 こいつ、見た目はいいのに滅茶苦茶無表情なんだよな……多分口の端が、少し上がったように思うのだが。

 まぁいつまでも気にしていてもしょうがないので、気を取り直して別の話題を投げかける。時間が有り余っていてどうにも暇なのだ。

 魔法を使えば一瞬とは言うが、それでは風情が全然ない。それに、街に入ると活気にかき消されて、ロクに話も出来なさそうだ。今のうちに話せるだけ話しておくべきだろう。

「そういえばフィリアは街に入った事はあるのか?」
「奴……つまり、前の勇者が生きていた頃は、活動拠点にしていた。百年以上前の事だがな」
「勇者の活動拠点に? 結構便利な街なのか? それとも魔神とやらと闘うのに近かったりしたのか?」
「そう言う訳ではないが……何故だかは分からぬが、勇者は例外なくハニコルムで初めて発見されるようだ。奴も例外ではなかったので、一度腰を落ち着けた其処から特別離れる意思はなかったらしい。便利な街というなら都市部にもっと大きな街が、戦場から近い街も他に幾らでもあったがな」

 ……それはつまり、あの天使が勇者は軒並みあの街に召喚していると言う事だろうか。
 もしそうなら、先代はおろか勇者の全てが転生者と言うことになってしまうが……それとも、ただの偶然なのか?

 いや、多分偶然と言う事はないだろう。この世界では珍しいらしい黒髪黒目が、勇者の判断基準だったことから考えても。

 なら、どうして俺は異世界からわざわざ遣わされた……? この世界の住人を一人、勇者として生まれさせるのではダメなのか?
 情報が少なすぎてまだ分からないが……不自然な点なら多い。多すぎるほどに。

 どうにもこの転生、薄汚い陰謀が介在している気がしてならない。
 やっぱり勇者なんてやるものじゃないな──俺は内心、決意を新たにした。
 そうして雑談をしながら暫く歩き、不意にはたと、フィリアが何かに気づいた。

「どれ、もう森を抜けるぞ。後は道に沿って進んでいくだけだ。心の準備は大丈夫か」
「元々必要ねえよ、そんなもん……オッケー、行こう!」

 俺は意気揚々と森を抜けた。
 鬱蒼と生えていた木々が途切れ、視界が急激に開く。
 大勢の人が、馬車が……道の上を歩いていた。
 皆一様に楽しみに胸を膨らませ、顔を笑みに綻ばせて。

 俺は自分の胸が高鳴るのを感じた。
 祭りなんて、いつから行ってないだろう。
 子供の時、地元の小さなお祭りに小銭を握りしめて走っていったのを覚えている──今ではすっかり達観してしまって、変に大人ぶって楽しそうだとも思えなくなっていた。
 人々の笑顔をみると、その、原初とも言える楽しさが目の前に広がっているようだった。

「……何だ。我には貴様の感情の機微などよく分からぬが……どうやら来てよかったようだな。しかし、まだ始まっても無ければ街に入ってもいないというのにその浮かれようは、見ようによっては少し恥ずかしいぞ」
「う、うるせえな!!」

 俺は自分の顔が熱を持つのを感じながら、フィリアと小走りでその行列へと混ざっていった。
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