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第五章 「火の国、動乱」
第九話 「一難去ってまた一難」
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団長達の背中を見送ってから、父さんは大きく溜息を吐いた。
「全く、加減や場所や迷惑などをもう少し考えられんのか、彼は……エイリアス!」
「は、はい!!」
「私は家に戻る。忙しくなりそうなのでな。話は夜に聞くので、夜の外出は控えるように」
「わかりましたっ」
「宜しい。では、また夜にな」
父さんが兵士を伴って踵を返す。
父さんの背中が見えなくなって、ようやく僕は立ち上がれるようになった。アヤトさんはどうやらまだ疲労が限界値を超えているらしく、肩で息をしたまま立ち上がれないでいた。
「大丈夫……ですか……?」
「はぁっ……はぁ……あんまり……大丈夫じゃ……ねぇ、な……! げほっ!!」
僕はアヤトさんの腕を取って立ち上がらせると、また地面に崩れ落ちないよう肩を貸した。体力ばかりは才能ではなく鍛え方の問題だし、そう言う面ではまだアヤトさんは未熟と言えるのかもしれない。動きにも無駄が多いように見えた。それでも剣技は僕を超えていたが……この短期間で恐ろしく強くなっている。全く、末恐ろしい。
僕がアヤトさんに肩を貸したのを見て、屋根の上に登ってナナさんの様子を確認していたらしいカムイさんが、気絶したナナさんを担いで降りてくる。
カムイさんは猫のような身軽さで地面に足をつけると、小走りで此方に駆け寄ってきた。
「アヤト、大丈夫かい!? ほら、水袋があるから飲みなよ」
「サンキュー、カムイ……! それにしても、何だよあいつ……! 本当に、人間か……!?」
「辛いようなら無理に喋らずとも……団長は、そうですね。間違いなく人間ですよ。たまに疑う事もありますけどね……」
「……世界にはとんでもない奴がいるもんなんだな。初めてエイリアスさんと戦った時も思ったけど……」
「僕なんて、全然ですよ」
謙遜でも何でもなく、僕は苦笑してそう返す。アヤトさんも変に言葉を取り繕うのはどうか、と思ったのかそれに頷いた。
「取り敢えず、ナナちゃんを寝かせてあげたいのでギルドの中に入りませんか? エイリアスさんもアヤトも、そんなに疲れているなら休んだ方が良いだろうし」
「そうだな。エイリアスさん悪りぃ、助けに入っといて肩かりる羽目になるなんて」
「い、いえそんな……あのままアヤトさんが来てくれなければ勝負はわかりませんでしたし、父さんが来るまでの時間稼ぎもお三方がいないと出来ませんでした。本当にありがとうございます」
僕は深々と頭を下げた。
二人が照れ臭そうに表情を緩め、カムイさんがギルドの両開き扉を開いてくれたので、それに続いて僕も足を踏み入れた。
ギルド内は、僕とアゴラの戦いを端に発する一連の騒動の為か、いつもよりもやけに騒然としていた。急に辺りが真っ暗になったりしたり、神器がぶつかり合った時に轟音が発せられもした。
それでも誰も外に出て来る雰囲気がなかったのは偏に、冒険者らしく全員が面倒ごとには巻き込まれまいというスタンスを取ったからだろう。
とりわけ僕のパーティメンバーの皆んなが出てこなかったのは少し不思議だったが、多分理由があるだろうと思ったので特に気にしない事にした。
そんな事を考えているうちに、サリアさん達が座っているテーブルが見えてきた。サリアさんとメメルさんがいつにも増して仏頂面だったので、思わず目を逸らす。
一人だけいつも通りにのほほんとした雰囲気のユカリさんが、僕を見るやブンブンと大きく手を振った。
「あ、ダーリンお帰りー!! 大丈夫………………あっやべっ」
突如、なぜかユカリさんが硬直した。
どうしたのかと不思議に思っていると、隣にいたアヤトさんとカムイさんも飛び出さんばかりに目を見開いて固まっている。
知り合いだったのだろうか。そういえばユカリさんは【火の国】に何かしら関係があると言っていたような……と、そんな思考を巡らせる。
すると、カムイさんが茫然自失といった様相のまま、言葉を紡いだ。
「…………こんな所で、何をしてるんですか……? 姫…………」
────え、何?
「全く、加減や場所や迷惑などをもう少し考えられんのか、彼は……エイリアス!」
「は、はい!!」
「私は家に戻る。忙しくなりそうなのでな。話は夜に聞くので、夜の外出は控えるように」
「わかりましたっ」
「宜しい。では、また夜にな」
父さんが兵士を伴って踵を返す。
父さんの背中が見えなくなって、ようやく僕は立ち上がれるようになった。アヤトさんはどうやらまだ疲労が限界値を超えているらしく、肩で息をしたまま立ち上がれないでいた。
「大丈夫……ですか……?」
「はぁっ……はぁ……あんまり……大丈夫じゃ……ねぇ、な……! げほっ!!」
僕はアヤトさんの腕を取って立ち上がらせると、また地面に崩れ落ちないよう肩を貸した。体力ばかりは才能ではなく鍛え方の問題だし、そう言う面ではまだアヤトさんは未熟と言えるのかもしれない。動きにも無駄が多いように見えた。それでも剣技は僕を超えていたが……この短期間で恐ろしく強くなっている。全く、末恐ろしい。
僕がアヤトさんに肩を貸したのを見て、屋根の上に登ってナナさんの様子を確認していたらしいカムイさんが、気絶したナナさんを担いで降りてくる。
カムイさんは猫のような身軽さで地面に足をつけると、小走りで此方に駆け寄ってきた。
「アヤト、大丈夫かい!? ほら、水袋があるから飲みなよ」
「サンキュー、カムイ……! それにしても、何だよあいつ……! 本当に、人間か……!?」
「辛いようなら無理に喋らずとも……団長は、そうですね。間違いなく人間ですよ。たまに疑う事もありますけどね……」
「……世界にはとんでもない奴がいるもんなんだな。初めてエイリアスさんと戦った時も思ったけど……」
「僕なんて、全然ですよ」
謙遜でも何でもなく、僕は苦笑してそう返す。アヤトさんも変に言葉を取り繕うのはどうか、と思ったのかそれに頷いた。
「取り敢えず、ナナちゃんを寝かせてあげたいのでギルドの中に入りませんか? エイリアスさんもアヤトも、そんなに疲れているなら休んだ方が良いだろうし」
「そうだな。エイリアスさん悪りぃ、助けに入っといて肩かりる羽目になるなんて」
「い、いえそんな……あのままアヤトさんが来てくれなければ勝負はわかりませんでしたし、父さんが来るまでの時間稼ぎもお三方がいないと出来ませんでした。本当にありがとうございます」
僕は深々と頭を下げた。
二人が照れ臭そうに表情を緩め、カムイさんがギルドの両開き扉を開いてくれたので、それに続いて僕も足を踏み入れた。
ギルド内は、僕とアゴラの戦いを端に発する一連の騒動の為か、いつもよりもやけに騒然としていた。急に辺りが真っ暗になったりしたり、神器がぶつかり合った時に轟音が発せられもした。
それでも誰も外に出て来る雰囲気がなかったのは偏に、冒険者らしく全員が面倒ごとには巻き込まれまいというスタンスを取ったからだろう。
とりわけ僕のパーティメンバーの皆んなが出てこなかったのは少し不思議だったが、多分理由があるだろうと思ったので特に気にしない事にした。
そんな事を考えているうちに、サリアさん達が座っているテーブルが見えてきた。サリアさんとメメルさんがいつにも増して仏頂面だったので、思わず目を逸らす。
一人だけいつも通りにのほほんとした雰囲気のユカリさんが、僕を見るやブンブンと大きく手を振った。
「あ、ダーリンお帰りー!! 大丈夫………………あっやべっ」
突如、なぜかユカリさんが硬直した。
どうしたのかと不思議に思っていると、隣にいたアヤトさんとカムイさんも飛び出さんばかりに目を見開いて固まっている。
知り合いだったのだろうか。そういえばユカリさんは【火の国】に何かしら関係があると言っていたような……と、そんな思考を巡らせる。
すると、カムイさんが茫然自失といった様相のまま、言葉を紡いだ。
「…………こんな所で、何をしてるんですか……? 姫…………」
────え、何?
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