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第2章 「『冒険者』エイリアス」

第十話 「決戦の時」

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「さぁお待ちかね! 新人杯ビギナーカップ最終戦が始まるぞぉぉぉ!! 先ずは選手の入場だぁぁぁぁぁ!!」

 おおおおおおおおぉぉぉ!!!
 相変わらずの、競技場を揺さぶるほどの歓声。
 格子戸を抜ける前から体がビリビリと呼応する。

「北コーナー!!! 文句なし新人杯最強の個人!! エイリアス・シーダン・ナインハイトぉぉぉぉぉ!! 圧倒的パワーと華麗な剣技、風の様なスピードと鋭い機転で敵を翻弄する!! 今回もアッサリと勝負を決めてしまうのかぁぁぁ!!?」

 格子戸を開けて入場する。
 軽く手を振って歓声に応え、正面を見据える。
 集中力を研ぎ澄ます。
 それが損なわれて、勝てる相手ではない。

「南コーナー!! アヤト・ドウジマ!! カムイ・アラタ!! ナナ・ユキムラの三人だぁぁぁ!! 全くの無名! 前情報はゼロの三人だが、その実力は本物!! これまで二戦をあっという間に、それも何をしたかも解らせず完封!! ここまで快調に飛ばすエイリアスを打倒し得るかぁぁぁ!!?」

 更に歓声。
 向かいの格子戸から、あの三人が現れる。
 ナナさんは、相変わらずビクビクしているけれど、アヤトさんはこちらに手を振って、カムイさんは柔らかく微笑んでお辞儀をした。
 なんとなく気が抜ける思いだが、雑念を振り払う。

「さぁぁぁぁ、最終戦!!! ここまで双方無傷で抜けて来ています!! ファーストアタックはどちらの手に!! そして勝利の女神はどちらに微笑むのかぁぁぁぁ!!!!」

 ──まず、色は不要だ。
 集中。視界からあらゆる色彩が消え、その分の能力を全て他の集中に掛ける。

 聴覚。触覚。動体視力。反射神経。
 全てが鋭敏に、より強力に感じられる。
 世界はゆっくりと動き、まるで全てが粘性の液体の中に堕ちたようだ。


「試合ッ──!!」
 
 前傾。
 脚に力を込め、暴発しそうなそれをなんとか押し留める。

 ──準備は、完了だ。

「ッ、開始ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 瞬間、脚に込めた力を一気に解放する。
 その全てが推進力となり、視線に捉えた三人へと僕を突き動かす。
 一対一なら誰にも負けないだろう。二対一でも何とかなるだろう。が、今はこの人数差。三対一。
 長期戦になる前に速攻で一人を仕留める──!!

 瞬間。
 ぞわり・・・と背筋が凍った。

 ──何か・・、来るっ!!

 遠く、しかし視界の中に間違いなく居る筈のの三人は微動だにしていない。
 だが、冴え渡った直感は、頭で理解するよりも遥かに早く本能で警鐘を鳴らす──!!

 姿勢を敢えて崩し、前傾故下がっていた頭を更に下げる。
 頭上を、背後から黒鉄の刃が通り過ぎた。

 そのまま頭を抱えるように内側に、手を地面について飛び込み前転の要領で、しかし完全には身体を投げ出さず、体勢を崩さぬよう前方に跳ぶ。

 跳びながら背後に視線を向けると、そこに立っていたのはカムイさんだった。

 あり得ない・・・・・
 この人はついさっき──どころか。直感が警鐘を鳴らして尚、まだ間違いなく前方にいた筈なのだから。

 ──解らないことを精査している場合じゃない!!

 見れば脚が止まりかけ、稼いでいたエネルギーは消えかかっている。
 先の前転でより距離を稼ぐ為、エネルギーを利用してより強く地面を突いていたのだ。

 つまり、アヤトさんとの距離は相応に縮んでしまっている──!!

 鞘から剣を振り抜き、カムイさんに背を向けてアヤトさんに向き直る。

 すると、アヤトさんがを上段に構え、今にも振り抜かんとしていた。

 ──成る程、強敵だ……!!!

 ガギリ、と。
 僕の剣と彼の刀が交錯し、鈍い音を響かせた。
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