元平凡高校生の異世界英雄譚 ~転生してチートを手に入れましたが絶対に使いたくありません~

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第4章 「エイリアスくん、胃が痛い」

第六話 「ハードラック」

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 そんなこんなで。
 ユカリさんを伴ってギルドに戻ると、珍しく仕事に励んでいた受付嬢が仕事を放棄して駆け寄ってきた。

「あ、ちゃーんとゆっちん連れて来れたんですねー! いぇーい、ゆっちんおひさー!!」
「サッちゃんおひさー! やー、サッちゃんは変わんないねー。まーたお仕事サボってんの?」
「さ、サボってるじゃないよ!? もっと大事な要件に関わる過程においてどうしても手が回らないだけだよ!?」
「あはは、言い訳も相変わらず雑だなぁ。あ、それと一個謝らないといけないことがあってぇ……」
「え、ナニ? なんか嫌な予感しかしないんだけど」
「サッちゃんに頼まれて描いてた同人誌、ダーリンとあの猫の子に見られちゃった♡ めんごめんご」
「ちょおおおぉぉぉぉおぉおおお!!?!?」

 それを聞くと受付嬢は、絶叫しボフっと顔を真っ赤に染め上げて溺れたように手をバタバタさせた。しかしやっぱり類は友を呼ぶらしい。受付嬢のテンションとユカリさんのテンションは、近いなぁとずっと思っていたけども。

「ち、違います違います!? あれはそのなんていうか一種の気の迷いっていうか本当にそんなあんなこんな歳にもなって少女みたいな願望とか、ももも持ってるわけ無いですし!?」

 何故か僕とメメルさんの方に弁明にくる受付嬢さん。そこで僕は何かを察し。

「…………」
「そんな生暖かい笑顔を向けないでくださいよー!! うわーーん!!!」

 組んだ腕に突っ伏しておいおいと泣き始める受付嬢。見慣れた光景すぎて不憫だとも思えなくなってきた……

「おーいおいおいおい、おーいおい……ってあれ? ゆっちん今エイリアスさんのことなんて呼びました?」
「え? ダーリンだけど」
「………………ほわい?」
「だって、私……ダーリンに初めて、ささげちゃったから……」
「っぉいぃぃ!! 言い方ありますよねぇ!?」

 いや、事実だけども! なんかもっと深刻なことシたみたいになっちゃってるから!!
 と、瞬間。僕の肩が潰れそうなくらいに力強く握られる。

「い、いたただだただ!?」

 何故こんな目に遭っているのかもわからず、そもそも誰がやっているのかもわからず、困惑したまま後ろを振り向くと──感情の無いような冷たい目をしたサリアさんが立っていた。

「──────」

 何故かはさっぱりわからないが、全身から血の気が失せる。それは最早本能。生命の危機に直面したときに反射的に恐れ慄いてしまう哺乳動物としての本能だ。

「……ぇ、あ……こ、これはその……違くて……」

 自分でもどうして行っているのかわからない弁明を、それでも行いつつ、肩に置かれた手に手を添えて振り解こうとするも、その力はますます強くなっており、戦士職の僕ですらどうにも出来ない。

「…………したの」
「え?」
「……ナニした訳!? って聞いてるの!!」

 空間がビリビリと震えるような咆哮に、最早僕は萎縮するしかなかった。
 どうして僕がこんな目に?
 自問するも、答えは幾ら考えても出る事はなかった──。
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