58 / 92
第4章 「エイリアスくん、胃が痛い」
第六話 「ハードラック」
しおりを挟む
そんなこんなで。
ユカリさんを伴ってギルドに戻ると、珍しく仕事に励んでいた受付嬢が仕事を放棄して駆け寄ってきた。
「あ、ちゃーんとゆっちん連れて来れたんですねー! いぇーい、ゆっちんおひさー!!」
「サッちゃんおひさー! やー、サッちゃんは変わんないねー。まーたお仕事サボってんの?」
「さ、サボってるじゃないよ!? もっと大事な要件に関わる過程においてどうしても手が回らないだけだよ!?」
「あはは、言い訳も相変わらず雑だなぁ。あ、それと一個謝らないといけないことがあってぇ……」
「え、ナニ? なんか嫌な予感しかしないんだけど」
「サッちゃんに頼まれて描いてた同人誌、ダーリンとあの猫の子に見られちゃった♡ めんごめんご」
「ちょおおおぉぉぉぉおぉおおお!!?!?」
それを聞くと受付嬢は、絶叫しボフっと顔を真っ赤に染め上げて溺れたように手をバタバタさせた。しかしやっぱり類は友を呼ぶらしい。受付嬢のテンションとユカリさんのテンションは、近いなぁとずっと思っていたけども。
「ち、違います違います!? あれはそのなんていうか一種の気の迷いっていうか本当にそんなあんなこんな歳にもなって少女みたいな願望とか、ももも持ってるわけ無いですし!?」
何故か僕とメメルさんの方に弁明にくる受付嬢さん。そこで僕は何かを察し。
「…………」
「そんな生暖かい笑顔を向けないでくださいよー!! うわーーん!!!」
組んだ腕に突っ伏しておいおいと泣き始める受付嬢。見慣れた光景すぎて不憫だとも思えなくなってきた……
「おーいおいおいおい、おーいおい……ってあれ? ゆっちん今エイリアスさんのことなんて呼びました?」
「え? ダーリンだけど」
「………………ほわい?」
「だって、私……ダーリンに初めて、ささげちゃったから……」
「っぉいぃぃ!! 言い方ありますよねぇ!?」
いや、事実だけども! なんかもっと深刻なことシたみたいになっちゃってるから!!
と、瞬間。僕の肩が潰れそうなくらいに力強く握られる。
「い、いたただだただ!?」
何故こんな目に遭っているのかもわからず、そもそも誰がやっているのかもわからず、困惑したまま後ろを振り向くと──感情の無いような冷たい目をしたサリアさんが立っていた。
「──────」
何故かはさっぱりわからないが、全身から血の気が失せる。それは最早本能。生命の危機に直面したときに反射的に恐れ慄いてしまう哺乳動物としての本能だ。
「……ぇ、あ……こ、これはその……違くて……」
自分でもどうして行っているのかわからない弁明を、それでも行いつつ、肩に置かれた手に手を添えて振り解こうとするも、その力はますます強くなっており、戦士職の僕ですらどうにも出来ない。
「…………したの」
「え?」
「……ナニした訳!? って聞いてるの!!」
空間がビリビリと震えるような咆哮に、最早僕は萎縮するしかなかった。
どうして僕がこんな目に?
自問するも、答えは幾ら考えても出る事はなかった──。
ユカリさんを伴ってギルドに戻ると、珍しく仕事に励んでいた受付嬢が仕事を放棄して駆け寄ってきた。
「あ、ちゃーんとゆっちん連れて来れたんですねー! いぇーい、ゆっちんおひさー!!」
「サッちゃんおひさー! やー、サッちゃんは変わんないねー。まーたお仕事サボってんの?」
「さ、サボってるじゃないよ!? もっと大事な要件に関わる過程においてどうしても手が回らないだけだよ!?」
「あはは、言い訳も相変わらず雑だなぁ。あ、それと一個謝らないといけないことがあってぇ……」
「え、ナニ? なんか嫌な予感しかしないんだけど」
「サッちゃんに頼まれて描いてた同人誌、ダーリンとあの猫の子に見られちゃった♡ めんごめんご」
「ちょおおおぉぉぉぉおぉおおお!!?!?」
それを聞くと受付嬢は、絶叫しボフっと顔を真っ赤に染め上げて溺れたように手をバタバタさせた。しかしやっぱり類は友を呼ぶらしい。受付嬢のテンションとユカリさんのテンションは、近いなぁとずっと思っていたけども。
「ち、違います違います!? あれはそのなんていうか一種の気の迷いっていうか本当にそんなあんなこんな歳にもなって少女みたいな願望とか、ももも持ってるわけ無いですし!?」
何故か僕とメメルさんの方に弁明にくる受付嬢さん。そこで僕は何かを察し。
「…………」
「そんな生暖かい笑顔を向けないでくださいよー!! うわーーん!!!」
組んだ腕に突っ伏しておいおいと泣き始める受付嬢。見慣れた光景すぎて不憫だとも思えなくなってきた……
「おーいおいおいおい、おーいおい……ってあれ? ゆっちん今エイリアスさんのことなんて呼びました?」
「え? ダーリンだけど」
「………………ほわい?」
「だって、私……ダーリンに初めて、ささげちゃったから……」
「っぉいぃぃ!! 言い方ありますよねぇ!?」
いや、事実だけども! なんかもっと深刻なことシたみたいになっちゃってるから!!
と、瞬間。僕の肩が潰れそうなくらいに力強く握られる。
「い、いたただだただ!?」
何故こんな目に遭っているのかもわからず、そもそも誰がやっているのかもわからず、困惑したまま後ろを振り向くと──感情の無いような冷たい目をしたサリアさんが立っていた。
「──────」
何故かはさっぱりわからないが、全身から血の気が失せる。それは最早本能。生命の危機に直面したときに反射的に恐れ慄いてしまう哺乳動物としての本能だ。
「……ぇ、あ……こ、これはその……違くて……」
自分でもどうして行っているのかわからない弁明を、それでも行いつつ、肩に置かれた手に手を添えて振り解こうとするも、その力はますます強くなっており、戦士職の僕ですらどうにも出来ない。
「…………したの」
「え?」
「……ナニした訳!? って聞いてるの!!」
空間がビリビリと震えるような咆哮に、最早僕は萎縮するしかなかった。
どうして僕がこんな目に?
自問するも、答えは幾ら考えても出る事はなかった──。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる