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柊、誠……です
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視界が暗転し、次に映ったのは知ってる天井だった。
「俺……最速で二回死んだプレイヤーなんじゃねぇかな……」
多分間違いなくそうだ。だってここ教会はあいも変わらずガランとしていて、一回死んだプレイヤーですらそうそういないと思われたし。
「はぁ……申し訳ねぇなぁ」
悪ノリこそしているが、俺はあのレインという少年に感謝していた。
やっぱりオンラインゲームは人と遊ぶのが楽しい。昔のキーボードを叩いて意思疎通を図るチャットと違って、発声機能がデフォルトで備え付けられているとなれば尚更だ。
正直、このビルドにしようと決めた瞬間に諦めた楽しみ方ではあったのだが……。
「まぁ、助けてくれるってんだからお言葉に甘えるか……しかし遅いな」
教会はマップ外から近いし、ゲーム内では走るだけなら疲れもないのでもう着いてもいいと思うが。
愛想を尽かされたのかと思ったがPTは解散されていないし、現在位置は……詳細にはわからないが少なくとも街中ではあるようだが。
「探しに行ってみるか……? いやでも行き違いになる可能性の方が高いなぁ」
蘇生台に腰掛ける形で足をブラブラさせて待っているとそう時間も経たないうちにレインが来て、遠くから手を振りながら近づいて来たがどうにも様子がおかしい。
俺の見間違いでなければ……何か、一人多いんだが。髪の毛がふわっふわな癒し系を地でいくような、ちんまりした小動物みたいな女の子が。
困惑する俺をよそに、レインが気軽に声をかけてくる。
「いや、ゴメンね待たせちゃって! 遠隔チャット、まだ使えないって知らなくてさ。解放条件があるみたいで」
「へぇ、使えないのか。まぁ待たされたのはいいんだけど、何か一人多くない? お前の知り合い?」
「いや、なんていうのかな。知り合いじゃないんだけど、この子は……」
指で頰を描いてレインが後ろにいるもう一人にくるりと向き直ると、その女の子は顔を赤らめて目を伏せた。この反応は……?
「……成る程、タラシ属性か……」
「違うよ! そういうのじゃなくて、この子は元々引っ込み思案みたいでさぁ……一人でフィールドで途方に暮れてたんだけど、聞いてみたらどうにもキミと悩みの方向性が同じみたいだったからほっとけなくて」
「イレギュラーの極みみたいなこの俺と悩みの方向性が同じだと……? 変人の極みかこいつ」
「うん、本当にね。自覚あったんだ……」
「認めた上で受け入れるのがプロの変人だ」
「開き直らないでよ……で、この子はだからさ。どうにも[回復力]に極振りしちゃった《神官》みたいなんだ。そしたら、[魔法攻撃力]が、マイナスになっちゃったらしくて」
[回復力]極振りの《神官》?
俺に比べれば明らかに使えそうな子ではあるが……。
「まぁ、今の段階だとなぁ……」
「うん。まだソロでレベル上げるって段階だからね。自立力がゼロというか……キミと違ってこのままいってもハイエンドコンテンツなら役に立つ事もありそうだし、成長方向性としては悪くないと思うんだけどね。キミと違って」
「おい、今なんで二回言った?」
「だから、取り敢えずこの三人でPT組んでレベルアップしちゃおうかってね」
すっげぇ華麗に無視された。
それは置いておいて、PTメンバーは増える分には困らないし俺はレインに負んぶに抱っこな現状なので意義なぞ申し立てる訳もない。
「ま、俺は全然大丈夫だよ。レイン様の慈悲深さが五臓六腑に染み渡る思いだ」
「その茶化し方やめてよ……恥ずかしいだろ」
「やだ。やめない。ところで重要なとこなんだけど、その子の名前は?」
「あぁ、そうだね。ゴメン、置いて話しちゃってた。名前、教えてくれる?」
こいつ自分でも聞いてないのかよ。
しかし美少女に微笑みかけて緊張をほぐそうとしているレインは絵になるというか……やっぱタラシ属性じゃねぇか。許せん。
「ひ、ヒイラギ……」
「うん?」
「柊、誠……です」
……オットォ?
俺はヒイラギちゃんの前からレインをひったくると、出来る限り離れてヒソヒソ声で疑問を呈する。
「………………アレ本名じゃね?」
「う、うん……正直僕も想定はしてなかったかな……確かに動きは初心者のそれだったけど、こんなバカみたいな……こんなバカみたいなビルドをするの、キミみたいな拗らせた経験者のする事だと思ってたから……」
「おい、今なんで二回言った? 言ってみろ怒んないから」
「ともかく、名前を聞かれて本名言っちゃうような子をほっとけないでしょ! VRゲームは古今東西、怪しい人間もアナログなゲームの比じゃないくらい闊歩してるんだから! キミもそうだけど!」
こいつ……!!
俺はレインの頭に拳骨を振り下ろす。
その拳は、悲しいかなどこまでもゆっくりだった。
「俺……最速で二回死んだプレイヤーなんじゃねぇかな……」
多分間違いなくそうだ。だってここ教会はあいも変わらずガランとしていて、一回死んだプレイヤーですらそうそういないと思われたし。
「はぁ……申し訳ねぇなぁ」
悪ノリこそしているが、俺はあのレインという少年に感謝していた。
やっぱりオンラインゲームは人と遊ぶのが楽しい。昔のキーボードを叩いて意思疎通を図るチャットと違って、発声機能がデフォルトで備え付けられているとなれば尚更だ。
正直、このビルドにしようと決めた瞬間に諦めた楽しみ方ではあったのだが……。
「まぁ、助けてくれるってんだからお言葉に甘えるか……しかし遅いな」
教会はマップ外から近いし、ゲーム内では走るだけなら疲れもないのでもう着いてもいいと思うが。
愛想を尽かされたのかと思ったがPTは解散されていないし、現在位置は……詳細にはわからないが少なくとも街中ではあるようだが。
「探しに行ってみるか……? いやでも行き違いになる可能性の方が高いなぁ」
蘇生台に腰掛ける形で足をブラブラさせて待っているとそう時間も経たないうちにレインが来て、遠くから手を振りながら近づいて来たがどうにも様子がおかしい。
俺の見間違いでなければ……何か、一人多いんだが。髪の毛がふわっふわな癒し系を地でいくような、ちんまりした小動物みたいな女の子が。
困惑する俺をよそに、レインが気軽に声をかけてくる。
「いや、ゴメンね待たせちゃって! 遠隔チャット、まだ使えないって知らなくてさ。解放条件があるみたいで」
「へぇ、使えないのか。まぁ待たされたのはいいんだけど、何か一人多くない? お前の知り合い?」
「いや、なんていうのかな。知り合いじゃないんだけど、この子は……」
指で頰を描いてレインが後ろにいるもう一人にくるりと向き直ると、その女の子は顔を赤らめて目を伏せた。この反応は……?
「……成る程、タラシ属性か……」
「違うよ! そういうのじゃなくて、この子は元々引っ込み思案みたいでさぁ……一人でフィールドで途方に暮れてたんだけど、聞いてみたらどうにもキミと悩みの方向性が同じみたいだったからほっとけなくて」
「イレギュラーの極みみたいなこの俺と悩みの方向性が同じだと……? 変人の極みかこいつ」
「うん、本当にね。自覚あったんだ……」
「認めた上で受け入れるのがプロの変人だ」
「開き直らないでよ……で、この子はだからさ。どうにも[回復力]に極振りしちゃった《神官》みたいなんだ。そしたら、[魔法攻撃力]が、マイナスになっちゃったらしくて」
[回復力]極振りの《神官》?
俺に比べれば明らかに使えそうな子ではあるが……。
「まぁ、今の段階だとなぁ……」
「うん。まだソロでレベル上げるって段階だからね。自立力がゼロというか……キミと違ってこのままいってもハイエンドコンテンツなら役に立つ事もありそうだし、成長方向性としては悪くないと思うんだけどね。キミと違って」
「おい、今なんで二回言った?」
「だから、取り敢えずこの三人でPT組んでレベルアップしちゃおうかってね」
すっげぇ華麗に無視された。
それは置いておいて、PTメンバーは増える分には困らないし俺はレインに負んぶに抱っこな現状なので意義なぞ申し立てる訳もない。
「ま、俺は全然大丈夫だよ。レイン様の慈悲深さが五臓六腑に染み渡る思いだ」
「その茶化し方やめてよ……恥ずかしいだろ」
「やだ。やめない。ところで重要なとこなんだけど、その子の名前は?」
「あぁ、そうだね。ゴメン、置いて話しちゃってた。名前、教えてくれる?」
こいつ自分でも聞いてないのかよ。
しかし美少女に微笑みかけて緊張をほぐそうとしているレインは絵になるというか……やっぱタラシ属性じゃねぇか。許せん。
「ひ、ヒイラギ……」
「うん?」
「柊、誠……です」
……オットォ?
俺はヒイラギちゃんの前からレインをひったくると、出来る限り離れてヒソヒソ声で疑問を呈する。
「………………アレ本名じゃね?」
「う、うん……正直僕も想定はしてなかったかな……確かに動きは初心者のそれだったけど、こんなバカみたいな……こんなバカみたいなビルドをするの、キミみたいな拗らせた経験者のする事だと思ってたから……」
「おい、今なんで二回言った? 言ってみろ怒んないから」
「ともかく、名前を聞かれて本名言っちゃうような子をほっとけないでしょ! VRゲームは古今東西、怪しい人間もアナログなゲームの比じゃないくらい闊歩してるんだから! キミもそうだけど!」
こいつ……!!
俺はレインの頭に拳骨を振り下ろす。
その拳は、悲しいかなどこまでもゆっくりだった。
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