『欠片の軌跡』おまけ短編集

ねぎ(塩ダレ)

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おふざけ・なんちゃって

【猫の日】ねこねこ大作戦(ifなので時系列は気になさらず……)

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久しぶりに第三別宮にライオネル殿下が帰ってきた。

帰ってきたのだが……。

「サーク?」

「はい、殿下?」

「……今日は猫の日なんです。」

「あ、あ~!そうですね??」

確かに猫の日だ。
でもそれが何なんだろう?

いや俺も猫好きだけどさ?
殿下って猫好きだったっけ?

にこにこと笑う殿下。

………………。

何だろう??
嫌な予感がする……。

「で、殿下?!」

「そんな訳で!!皆!猫になれ~!!」

「?!」

そう言って立ち上がると、ライオネル殿下は手を高らかに上げた。
そこから眩い光が放たれる。


「…………ふにゃっ?!」


あまりの眩しさに目を瞑り、そして目を開けた。
すると視界が一転していた。

どういう事だ?!

地べたに寝転んだ記憶はないのに、床と密接している。
というか、この覆いかぶさるような布は何なんだ!?

ぱさりと邪魔な布を押し退けると視界が開ける。
そしてやはり床に密接している。

……おかしくないか??

足には立っている感覚がある。
ちゃんと四足で立っている……。

四足で?!

ハッとして前足を見る。
もっふりした手にはぷにぷにしてそうな肉球が……?!

「にゃ?!にゃんじゃこりゃ~っ?!」

そう叫んだ俺を何かがひょいとつまみ上げる。

まさか……。

俺は恐る恐る振り向く。
そこには満面の笑みのライオネル殿下がいた。

「可愛い~!!サーク!可愛い~!!」

「ふにゃ~っ!!」

スリスリ頬ずりされるのに必死に抵抗する。
しかし殿下を傷つける訳にもいかず、ジタバタするのみだ。

「ふふっ。可愛い三毛ちゃん。」

そう言われ、みょーんと抱き上げられた自分の体を見る。
猫だ……猫になってる……。
殿下の言う通り、どうやら三毛猫らしい。
どういう訳かわからないが、もう抵抗するのも無駄だと悟り、大人しく殿下に抱っこされる。

「……意外と……多種多様だね?うちの警護部隊は……。」

そう言われて周りを見ると、その場にいた警護部隊メンバー皆、猫になっていた。
どうやらあの光を浴びた人間は猫になったらしい。
一応うちの部隊も俺以外は皆貴族なせいか、純血種っぽい様々な猫が部屋中に転がっていた。

「……この為に……手の空いている者を部屋に集めたんですか……殿下……。」

「ええ。猫の日だから猫まみれになりたくて。」

にっこりいい笑顔でそう答える俺の主君。
本当もう、勘弁して欲しい……。

あ~あ……。
パニック気味にぴゃーぴゃー鳴いているあのアメショっぽいのは、位置的にアイクだろうか……??
その横で、服が絡んでジタバタしてるシャムっぽいのはカーターだろうか……。

見渡す限り、猫、猫、猫。

……うん、悪くない。

じゃなくて!!
俺も猫にされてるんだった!!
うっかり猫まみれ空間にほっこりするところだった!!

「……リオ。これはどういう事だ?」

そう声がするが相手が見当たらない。
殿下をリオと呼ぶ奴はこの部隊に一人しかいない。
なのに姿がない。
あんなデカイ人間見落とす訳がないのに……。

え?!と思って足元を見る。
そこには大型の黒猫が一匹、殿下と俺を見上げていた。

「……マジで?!」

「ふふっ。ギルは期待を裏切らない立派な黒猫だね!!」

「……それは良かった。」

「良かった?!」

猫にされたというのに大して動揺もせず、ギルらしい黒猫は堂々としている。
殿下に期待を裏切らないと言われたのが嬉しかったのか、ちょっとだけ機嫌が良さそうに見える。

う~ん。
普段は無表情なのに、猫だと少し感情がわかりやすいとかそれはそれでどうなんだろう??

というか種類は何なんだ??
ブリショーなのか??
とにかくデカイ黒猫で毛は長くない。

「……殿下……これでは警備が手薄になるじゃないですか……。」

そう言いながらトボトボ歩いてきたのは、口調的にイヴァンだろう。
しかしその姿を見た俺とライオネル殿下は固まる。

「?!」

「え?!」

しばしの間。
その後、殿下はそ~っと俺を下ろすと、素早くイヴァンを捕まえた。

「うわ?!殿下?!」

「もふもふ~!!」

「うわあぁぁぁ!!助けて下さい!!隊長!!サークさん!!」

殿下はイヴァンと思われる猫を抱き上げると、もふもふに顔を埋めて堪能した後、スーハースーハーし始めた。
まさか自分が猫吸いの餌食になると思っていなかったのか、イヴァンはパニックを起こして暴れている。
しかしライオネル殿下に無体を働く訳にもいかず、半ばされるがままで俺とギルに視線で助けを求めていた。

ギルは自分ではなくイヴァンが抱き上げられてスーハーされている事にショックを受けたようで、ガーンといった感じで口を少し開いて固まっている。

いやだが無理もない。
俺がライオネル殿下の立場でもイヴァンを選んだ気がする。
んでもって同じく捕まえて吸うわ。

いや、黒猫も好きだけどさ??
中身がギルだと思うと、人間に戻った後が怖いし。

イヴァンはとにかくもっふもふだった。
サイベリアンなのか何なのか、大型系の猫の長毛種。
とりあえずモフるわ、そりゃ……。

色はシルバータビー&ホワイト。
北部出身だから雪のイメージでこの色になったのだろうか??
とにかくザ・大型長毛種って感じで、耳のリンクスティップがいい感じに生えている。

「いいな~。俺も大型長毛種モフりたい~。」

「サーク?!お前までイヴァンを選ぶのか?!」

思わずそう言ってしまったら、ショックを受けたらしい黒猫のギルが勢い良く振り向いた。
あはは、普段は無表情なのに猫だと表情豊かだな?!

「……サーク……お前は猫になっても、俺を選んでくれないのか……?」

「ヘっ?!お!落ち着けよ?!ギル?!」

そう言いながらジリジリ近づいてくるギル。
いや?!黒猫は好きだよ?!大型種も好きだよ?!

でも猫だろうとなんだろうと!!
お前がお前である限り!!
俺にとっては危険物でしかないんだよ!!

「……サーク……。」

「ギャー!!」

完全に狩りの体制に入ったギル。
モワッと毛を逆立ててフーフー言ってる。
俺は本能的に走って逃げ出した。

途端に始まる追いかけっこ。
三毛猫がデカイ黒猫に追い掛け回される。

「待て!サーク!!」

「待つか!馬鹿野郎~!!」

しかし体格差なのか次第に追い詰められてしまう。
やはり戦うしかないのか?!猫なのに?!

と、覚悟を決めた時だった。

「ドーンっ★」

そう楽しそうに言いながら、デカイ黒猫に体当りした猫がいた。
そのツヤツヤな毛並みに思わず見とれる。

「ベンカル?!……シルクか?!」

「そうだよ~!主~!!」

そう言ってゴロにゃんと俺に甘えてくるベンカル……になったシルク。

良かった……猫なんだな?!
子ヒョウとかじゃないよな?!

シルクがいた事にもびっくりだが、猫でよかった……。
思わず訳のわからない事に安心する。

「ドア開けたらピカッとしてさ~!何かと思ったら猫になっててびっくりしたよ~。」

その割には全然、動じてなさそうだけどな?
まぁシルクは存在自体が猫っぽいから猫になってもなんか違和感ない。

そこに騒ぎを聞きつけた他の警備部隊員たちがわらわらと集まってきた。
そしてそれぞれ、好みの猫を捕まえて抱き上げている。

いや、お前ら……。
それ元々は仲間の人間だからな?!

呆れながらそれを眺めていると、俺もヒョイッと抱き上げられた。
誰だろうと振り向くとウィルだった。

「サーク、見つけた。」

そう言ってにっこり笑う。
か、可愛い……。
というか、三毛猫になってるのに俺だってわかってくれるなんて……。
やっぱり愛だよなぁ~なんて思ってしまう。

そんな俺達の横でシルクを慣れた手つきで誰かが抱き上げる。
見るとガスパーだった。
とりあえずとばかりに抱える手つきも妙に板についている。

「あれ?ガスパーって猫好きなのか??」

「ちげえよ。動物は苦手だ。ただ一時期、仕方なく保護してた事があるだけだ。」

「へ~??」

なんか意外だな??
ガスパーはそう言いながらも、無意識にシルクの喉元を撫でてやっている。
シルクも気持ちいいのか目を細めてされるがままだ。

「それにしてもウィル、よく俺だってわかったね??」

「俺はサークがどんな姿でも見つけるよ。それに……。」

「それに??」

それにと言う言葉が気になって聞き返したが、ウィルはふふふっと笑うだけだった。

どういう事だろう??
よくわからず首を傾げる。

するとガスパーが飽きれたように口を開いた。

「三毛猫だからだろ?雄の三毛猫って言えは……。」

そこまで言われてハッとする。
ウィルの顔を見ると困ったように笑っている。

そ、そういう事かよ!!

俺はがっくりしてしまう。
猫になってまでそんな特徴、示さんでくれよ!!
俺の体!!

「皆さん!!和んでないで!僕を助けて下さい~!!」

悲痛な叫びに顔を向けると殿下がまだイヴァンに猫吸いをしていた。
ライオネル殿下、意外と猫好きガチ勢なんだな……。

イヴァンの方はもう暴れる気力もないのか、ぐったりされるがままに殿下に抱かれ、それをまた黒猫のギルがショック顔で見つめている。

「殿下、そろそろイヴァンの顔が死んできてるんで他の猫を吸ってください。こんなにたくさんいるんですし。……ちなみにおすすめは、そこで固まってる黒猫です。」

そうライオネル殿下に声をかけたのはソマリ。
誰だ?あの綺麗なソマリは??

「……ライル?!」

俺の声に振り向いてニカッと笑うソマリ。
この状況に動じず、のほほんとしながらもイヴァンにもギルにもフォローを入れている事からも、あれは多分ライルだろう。

ライルの声掛けでやっとイヴァンは開放された。
半泣きで俺達の方に走ってくると、ガスパーの足元に隠れるように絡みつく。
ガスパーは仕方ないとばかりにシルクを下ろすと、縮こまっているイヴァンを抱き上げた。

なんかな??
いつもはガスパーをイヴァンがからかっている感じなのに、猫になって半泣きのイヴァンをガスパーがよしよしと宥めているのって変な感じだ。
しかもガスパー、猫に慣れてるし。

まぁとにかくこれでギルもライオネル殿下に抱っこしてもらえて一件落着だなぁなんて思っていたのだが……。

「……へ?!」

ライオネル殿下はイヴァンを離した後、ヒョイッとばかりにソマリを抱き上げた。
そして撫でくりまわし始める。

「うはははははっ!!ちょっ!!殿下!!ライオネル殿下!!やめ……!!くすぐったい!!あははははは!!」

こねくり回されるライルが悲鳴のような笑い声を上げてジタバタ体をくねらせる。
しかし揉んでるライオネル殿下は真顔だ。
ここまで来ると猫好きというより猫狂いだ。
俺達はその様子をスン……と見つめる。

またもガーンと言う顔で固まるギル。
それを慰めるようにベンカルのシルクが舐めて毛づくろいしてやっていた。

こうして第三別宮の猫の日は、ほのぼのとしたカオスで幕を閉じた。
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