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第九章「海神編」
会議室の攻防戦
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それ以降、ある適度、具体的な話し合いに移った。
「バンクロフト博士、装置の制作にはどれ位かかるのかね?」
「材料が揃えば、三日三晩で組めると思いますね。試運転なんかを含めれば、五日ですかね?」
「……すみません、七日ください。」
「何故だ?アズマ男爵?」
「ノル……いえ、バンクロフト博士の言っている三日ないし五日は、全日食事も取らずに不眠不休で作業する事を前提でのお話です。無理矢理にでも食事と休憩を取らせたいので、七日ください。」
自分も似た所があるので、ノルの性格はよくわかっているつもりだ。
ノルは五日ぐらい大丈夫なのにと呟いていたが、かえってそれが俺の言った事の裏付けになり、七日間の時間を貰える事になった。
「となりますと、博士の装置作成期間を鑑みて、一週間~十日を目処に準備をする方向でよろしいですかな?」
スラスラと議事録を書きながら、コーディ書記長が言った。
皆が無言で頷いた。
ルードビッヒ宰相は王様と個人的に何やら話をしている。
その間に進められる話は進めておこうとコーディ書記長は判断したみたいだ。
穏やかで角の立たない人だが、やはり国の最高部の一角を担う人だ。
仕事の流れに無駄がない。
ライルにこの姿を見せてやりたいと泣きそうになった。
「他に報告するほど予算が掛かるもの等はありますかね?」
「あ、ヤバそうなのあるよ。な?サーク??」
俺に人工精霊を取り上げられて拗ねていたアレックが、ここぞとばかりに話を振ってくる。
こんのクソガキ!!ニヤニヤしやがって!!
何だろうとコーディ書記長が俺に視線を向ける中、頭を抱えながら立ち上がる。
「ええと……人の精神に降りるというのは、鎧も何も役に立たない、剥き出しの魂みたいな形で降りる事になります。なので精神系魔術はとても危険なのです。それが深ければ深いほど予測不可能な事が起きるにも関わらず、防御の手立ては精神魔術の魔力と経験と咄嗟の判断力のみになります。しかも今回はそこに精霊の王の一柱、海神がいる状況です。仮想精神空間の他に可能な限りの安全対策として、ライオネル殿下の精神深部に下りる際、精神と肉体の保護を目的とし、ギルドが所有する精神系攻撃等を軽減・無効化する類の秘宝を貸して頂く方向で話を進めています。」
「なるほど!なるほど!!冒険者・探求者の持つ秘宝を用いるのですな!!」
俺がその話を始めた途端、コーディ書記長の顔がキラキラ輝いた。
書記長、仕事の顔から不思議大好きな少年みたいな顔になってますって。
可愛いけど、それでいいのか?!
「以前君がチラリと精神保護の防具と言っていたのは、冒険者たちの秘宝の事だったのだね!!あれらは秘めた力が数多くある!!ただ基本的には所有の冒険者がいざという時の為に隠し持っているものだ!それらが……それらがこの目で拝めようとは……。」
コーディ書記長、すっかり仕事の事なんか忘れて夢中になってる。
胸の前で腕を組んで目をうるうるさせて……恋する乙女ですか??
そこに王様と話を終えたルードビッヒ宰相が戻ってきて、ゴホンと咳払いをした。
途端、目立たない物静かな書記長に戻る。
切り替えが早いのも最高幹部でいるには必要な素質なんだな、なんて変な事に感心した。
「よくわかった。ではそれらをギルドに持って来させてくれたまえ。」
ルードビッヒ宰相は冷静にそう言い放つ。
その持ってくるのが当たり前と言った態度にカチンと来たアレックが噛みついた。
「当然の様に言うな。それらは冒険者ひとり一人にとって、命と同じぐらい大事なもんだ。そんな簡単に言われたくない。」
「アレック!!」
俺は慌ててそれを止めた。
ルードビッヒ宰相の蛇の目がギロリとアレックを睨む。
「この国の王子であるライオネル殿下のお命がかかっているのに、おかしな事を言う。」
「忘れたのかよ?ギルドは独立した国に近い。基本的にはその国の法や権力に従うが、あまりに理不尽に横暴な要求してっと、痛い目見るぜ?!」
「……なるほど。君はギルド側の魔法師だったな、アレクセイ・マディソン。」
「よせ、アレック。俺が説明する。」
嫌味なほど冷徹に言い放ったルードビッヒ宰相に、アレックが牙を見せて微かに唸った。
アレックは優れた魔法師なのだが、いかんせんまだ若すぎる。
こういう部分は周りがフォローするしかない。
俺は胸ポケットから黒猫キーホルダーを取り出すと、アレックの目の前にぶら下げた。
途端バシッとそれが奪われた。
ぴぃっ?!と小さな声がしたが、アレックは両手でそれを包み込んで無言で中をのぞき込んでいる。
俺は小さくため息をつく。
アレックはその実力の為に周りから大人同然に扱われているが、本来はまだ子供なのだ。
理不尽さには純粋に腹を立てるし、それが押し通される大人の社会では無垢な心が傷つくのだ。
「失礼しました。アレック魔法師の言い方がこの場に相応しくない失礼な言動だった事は私が代わりにお詫び致します。ですがラティーマー宰相、彼の言い分は最もでもある事をご理解頂けますと幸いです。」
俺は頭を下げながらそう返した。
アレックは自分がした事がどういう事か理解できる頭のいい子なので、それ以上、何も言わなかった。
ただ対面的にそれに従えるほど大人でもないので、拗ねたように丸まって手の中の人工精霊を眺めている。
それでもここでグッと堪えて俺に任せてくるのは、本当にしっかりした子だよなぁと思う。
この子の我慢強い心意気を無下にすべきではない。
「冒険者にとってそれらの秘宝は、彼らにとっての一財産であり、また、九死に一生を得る事を可能にする仕事をする上でかけがえのないものです。先日、似た話になった際、こんな例えを出されました。例え同じ王命であろうと、貴族にとって馬を一頭差し出す事はたいした事ではないとしても、農家が蓄えをはたき借金をしてまでして手に入れた農耕馬を取り上げられたら、その一家は路頭に迷う事になる。立場が違えば、そのものの持つ重さは異なります。我々がたいした事ではないと、王命なのだから当然だと切り捨てていい事ではありません。」
「そうだね。発掘もそうなのだが、きちんと申請して許可を得、その際取り決めをしてお金は支払っていると言うのに、大きな発見があったりすると、それを奪われたり上乗せで代金を要求されたりと、本当に政府は横暴だなぁと僕も思うよ。そのせいで小さな研究発掘隊などは赤字続きで、研究を諦める研究者も多いんだよ。そんなくだらない事をしなければ、研究によって世の中はより豊かになっていたにも関わらずね。」
俺の話に思わぬ援護がかかった。
何食わぬ顔でノルがそう言ったのだ。
ちょっと論点はズレてはいるが、大きく言えば政府の権力を振りかざした横暴に国民は迷惑しているって話だからあながち間違いでもない。
ノルにとったら余りに毎度の事なので、いつもの事だが本当厄介だと言う愚痴だったのかもしれないが、これが科学技術研究の第一人者の口から出たとなっては、さすがのルードビッヒ宰相もこれ以上、この件を強気に押し通す事もできない。
何しろノルの言っている事はこれから起こる事ではなく今まで長きに渡り起きていた事であり、しかも話し合って取り決めてからとなると書面も残っている事なので、その気になれば今のノルなら長年の証拠と共にこれまでの事を裁判だって起こせるだろう。
それは各所で苦い思いをしてきた国民の気持ちを代弁する事になり、ある意味大事になる事が予測できる。
王国の毒蛇の判断は早かった。
「……バンクロフト博士、申し訳ありませんがそれは今回の事とは無関係です。ですがその旨、調査し改善すべき点は改善いたしましょう。」
「僕は発掘に関する事だけを言った訳ではなくて……。」
「その部分につきましても後日、王国会議で検討しましょう。ですが今はライオネル殿下の件での秘密会議ですので殿下の計画の話を進めさせて頂いても?」
ちょっとでも臭い匂いがしそうなら、速攻、蓋をして何重にも袋を被せる。
ルードビッヒ宰相の性格から考えて、そのまま放置と言う事はないが、表立って処分を出す訳にも行かない部分でもある。
ガスパーがいたならそれが政治だと言うだろう。
まぁ逆に言うと、表立って処分がされないと言うのは別の意味の恐ろしさも含んでいるんだけどね。
ノルはと言うと、ルードビッヒ宰相から微笑と共に穏やかに放たれる毒気に、生まれ持ったビビリセンサーが無意識に反応してちょっとアワアワしている。
急に素に返ってどうしていいのかわからなくなっているノルに、隣の義父さんがにっこり笑って何か声をかけた。
ノルはそれを聞きながら水を数口飲んで、頷いている。
さすがは俺のほっこり義父さん。
ここからだとフォローのしようがなかったから助かる。
「では話を戻しまして、今回の計画で精神保護の観点からギルドより秘宝をお借りする件ですが、申しました通り、それらは冒険者にとってかけがえのないものであり大きな財産です。なのでお借りする約束はつけましたが、リース料が掛かります。」
俺の言葉にルードビッヒ宰相の顔が険しくなる。
だが、ここでそれに文句をつけてはせっかく早急に蓋をした事を蒸し返すことになる為、苦々しい顔で俺を睨むにとどめた。
その横でちょっと面白そうにコーディ書記長が笑いを堪えている。
「コホン……なるほど。彼らの秘宝は値段のつけられないものばかり。その一財産でもある秘宝をお借りするのですから、最もな話ですな。とはいえ、精霊の王に対しても効果が期待できるものとなりますと、それなりにこちらも覚悟がいりますなぁ。」
不思議なモノに精通しているコーディ書記長は、こちらの言い分を計ってそう言ってくれた。
ただでさえ仮想精神空間装置でそれなりの金額が要請されている事もあり、秘宝に関して半信半疑なルードビッヒ宰相は不審そうにコーディ書記長を睨んだ。
「……随分と冒険者達の秘宝にお詳しいようですな?」
「はい。恥ずかしながら私は個人的にそういったモノを調べたり集める事を趣味としておりますので。ラティーマー殿がお疑いになりたい気持ちもわかります。何しろ殆ど知られてはいないものであるが故に、秘宝と呼ばれるのですから。」
「そんな世の中に知られてはおらぬ効果もはっきりせぬモノ、どう信用しろと?」
「ふふふ、確かにこういった物を商人から買うのであれば偽物と疑ってかかった方がよろしいと思います。ですが今回の場合ギルドが貸すと言っているのです。現役もしくはかつて現役だった冒険者が確実に使っていた物になります。そしてギルドが一国と同等である事と同じく、ここで何の効果もないものを貸し出したとしたらギルドの信頼に関わります。そう考えれば、これほど裏付けのある秘宝はないと思いますよ?」
コーディ書記長ににこやかにそう言われ、ルードビッヒ宰相はムスッと顔を顰めたまま黙ってしまった。
気に入らないが勝負あった。
コーディ書記長がにこにこと俺に笑いかけてくる。
「それでアズマ男爵?リース料はいかほどなのかね??」
「それが……まだきちんと私自身が話をしておりませんので、金額までは……。ただ、相手が相手なので、かなりの金額になるかと……。」
せっかくコーディ書記長がまとめてくれたのに、こういう言い方しかできなくて申し訳なくなる。
だがここでも思わぬ助け舟が入った。
「……そなたが借りると言うからには、所属のギルド、つまりスカーレットからかね?!」
途端、ぱぁ~とお花畑が炸裂する。
これにはルードビッヒ宰相は頭を抱え、コーディ書記長ですら苦笑いを浮かべている。
「あ、はい……すみません。フライハイトのうちのマダムです……。守銭奴の……。」
「ハハハッ!!スカーレットが守銭奴だなんて、サークは面白い事を言うのだな!!」
「いや……事実ですし……。」
世間ずれした王様は、俺の言葉を冗談だと受け取ってケラケラ笑っている。
恋は盲目って言うけどさぁ~、王様、現実を直視して下さい……。
きちんと王妃様がいる王様にとってマダムは永遠の憧れ、つまり若かりし日に追いかけたアイドル、未来永劫変わる事のない推しなのだと思うのだけれど、色眼鏡にしたってヤバイでしょ……。
もうちょっと夢見てないで、現実的にマダムを見て欲しいよ……。
「そうかそうか……スカーレットと今回も縁があるのだなぁ~。」
「国王陛下、今回マダムは別にこっちに来ません。ギルド代表としてモノを貸してくれるだけです。……高額のリース料請求して。」
俺はげっそりとしながら肩を落として王様を見守った。
ルードビッヒ宰相もグレイさんも、王様の病気とも言えるマダムへの情熱と投資には何を言っても無駄だと思っているらしく、こめかみや額を押さえながら怒りを堪えている。
こういう時のオタクって手がつけらんないからな~。
王様のマダム推しも程々にしないと、心労で周りの家臣が倒れちゃうよ。
唯一、種類は違えどオタク心のわかるコーディ書記長が苦笑したまま俺に言った。
「う~ん、仮想精神空間装置でそれなりの予算が取られるしね……。この国の第三王子であらせられるライオネル殿下の命がかかっているとはいえ、あまり国としても無理はできないと言っておくよ。何しろ南と西の国への警戒と監視もあるし……。」
「それなのですが、いくつかの提案を元に、ある程度交渉しようと思っているんです。」
俺がそう言うと、胸ポケットから頭痛薬か何かを取り出して水で飲んだルードビッヒ宰相が諦めの中に多少の期待を持って俺を睨んだ。
「交渉とは何だ?アズマ男爵?」
「はい。一つは今、宮廷魔術師本部に余りにも色々な仕事が回ってくる為、本来の国防魔術師としての役割が疎かになっています。ですので本来の業務に支障が出ないよう、外部に委託できる部分は委託してみてはどうかと言う試みを行っています。その試験運用で、先の件の処分貴族の財産鑑定をギルドに委託すると言うものがあります。」
「……ほう?」
「冒険者はダンジョンなどでの探索に優れていますので、隠し財産などを見抜く力も優れています。また、見つけた物の価値が直接、自分達の収入源にもなっています。生活がかかっていますからね、その目利きはかなりのものです。」
「なるほど!宮廷魔術が魔力鑑定をしなくても財産価値の測定ができ、おまけに隠し財産も見落とさずに済むと言う事だね?!」
「そういう事になります。」
俺の話を聞いてコーディ書記長が明るく言った。
ここまで聞けば、ギルドに外部委託するのはいいこと尽くめの様に聞こえる。
だがさすがは宰相は表側だけで判断したりしない。
「……外部委託すると言う事は、彼らに誤魔化される恐れもある。また機密情報部分はどう考えているのかね?」
「はい。信頼性を損なわない為に、冒険者を直接雇い委託するのではなく、ギルドに依頼をかける形で行います。ギルドも信用第一の客商売です。そこで冒険者が横暴な真似や誤魔化しなどの窃盗を働いた場合は、ギルドに賠償金を請求する事が出来るなどの形を取る事によりギルド内でまずしっかりとした体制を組んで貰うつもりです。また依頼の際には冒険者のランクや職業レベルなどの設定を行い、希望に沿った結果が出せる冒険者しか応募できないようにします。それから機密についてですが、ここはまだ検討段階の部分ではありますが、どの程度までの仕事を外注するかはこちらで判断していきます。また依頼を受ける冒険者に対し魔術を使った契約書にサインを求めたり、必要に応じで王宮の者を監視役を必要人数派遣します。誓約書と機密レベルによって監視役をつける形で調整しようと思っています。」
「なるほど……。」
ルードビッヒ宰相はまた水を飲み、少し考えていた。
「外部委託の話はわかった。で、何を持って交渉する?」
「はい。まず外部委託する場合フライハイトのギルドに優先的に話をする事。仕事がなくならないよう定期的に外部委託を依頼する提携契約を結ぶ事、それから今回の処分貴族の財産鑑定に関してのギルド側の取り分等を考えています。」
「財産鑑定の取り分は乗ってこようが、他の2つは交渉に使えるのか?」
「はい。冒険者はクエストをする以外では基本的には収入源がありません。精霊が人に関わらなくなったのを期に精霊に関する問題も減り、また魔物の活動もゆっくりですが減ってきています。その為、新たなダンジョンが生まれたりする事も殆どなくなりました。その為、彼らの収入源は減っています。ですが彼らの持つ特異的な能力や技術は素晴らしいものです。フライハイトではそんな冒険者を資源の一つとみなし、活用する方法を考えている所でした。その一環の一つが今回の外部委託でもあります。この活動が安定したサイクルを生み出せれば、冒険者は自分達の技術を収入源として活用できます。今まで冒険者がクエスト以外で収入を得るとなると、護衛任務や傭兵等の仕事しかありませんでした。また経済状況から冒険者をやめて他の仕事に勧める事は彼らの自尊心を傷つける事になりましたが、ギルドに正式に依頼された冒険者の技術を活かす仕事であれば、彼らも受け入れやすいでしょう。よって、交渉の材料とできます。」
俺の話に、ルードビッヒ宰相はまた腕を組んで目を閉じた。
チラリと見た王様は、妙に嬉しそうににこにこしている。
何で王様が嬉しそうなんだろう??
よくわからない。
やがて目を開いたルードビッヒ宰相は、コーディ書記長をチラリと見据えた。
「コーディ、そこに裂ける予算の希望額と最高金額をこの新米領主に教えてやれ。」
諦めたようにため息をついたルードビッヒ宰相の言葉に、俺は不機嫌さが抜けてきたアレックと視線を合わせてニヤッと笑った。
「バンクロフト博士、装置の制作にはどれ位かかるのかね?」
「材料が揃えば、三日三晩で組めると思いますね。試運転なんかを含めれば、五日ですかね?」
「……すみません、七日ください。」
「何故だ?アズマ男爵?」
「ノル……いえ、バンクロフト博士の言っている三日ないし五日は、全日食事も取らずに不眠不休で作業する事を前提でのお話です。無理矢理にでも食事と休憩を取らせたいので、七日ください。」
自分も似た所があるので、ノルの性格はよくわかっているつもりだ。
ノルは五日ぐらい大丈夫なのにと呟いていたが、かえってそれが俺の言った事の裏付けになり、七日間の時間を貰える事になった。
「となりますと、博士の装置作成期間を鑑みて、一週間~十日を目処に準備をする方向でよろしいですかな?」
スラスラと議事録を書きながら、コーディ書記長が言った。
皆が無言で頷いた。
ルードビッヒ宰相は王様と個人的に何やら話をしている。
その間に進められる話は進めておこうとコーディ書記長は判断したみたいだ。
穏やかで角の立たない人だが、やはり国の最高部の一角を担う人だ。
仕事の流れに無駄がない。
ライルにこの姿を見せてやりたいと泣きそうになった。
「他に報告するほど予算が掛かるもの等はありますかね?」
「あ、ヤバそうなのあるよ。な?サーク??」
俺に人工精霊を取り上げられて拗ねていたアレックが、ここぞとばかりに話を振ってくる。
こんのクソガキ!!ニヤニヤしやがって!!
何だろうとコーディ書記長が俺に視線を向ける中、頭を抱えながら立ち上がる。
「ええと……人の精神に降りるというのは、鎧も何も役に立たない、剥き出しの魂みたいな形で降りる事になります。なので精神系魔術はとても危険なのです。それが深ければ深いほど予測不可能な事が起きるにも関わらず、防御の手立ては精神魔術の魔力と経験と咄嗟の判断力のみになります。しかも今回はそこに精霊の王の一柱、海神がいる状況です。仮想精神空間の他に可能な限りの安全対策として、ライオネル殿下の精神深部に下りる際、精神と肉体の保護を目的とし、ギルドが所有する精神系攻撃等を軽減・無効化する類の秘宝を貸して頂く方向で話を進めています。」
「なるほど!なるほど!!冒険者・探求者の持つ秘宝を用いるのですな!!」
俺がその話を始めた途端、コーディ書記長の顔がキラキラ輝いた。
書記長、仕事の顔から不思議大好きな少年みたいな顔になってますって。
可愛いけど、それでいいのか?!
「以前君がチラリと精神保護の防具と言っていたのは、冒険者たちの秘宝の事だったのだね!!あれらは秘めた力が数多くある!!ただ基本的には所有の冒険者がいざという時の為に隠し持っているものだ!それらが……それらがこの目で拝めようとは……。」
コーディ書記長、すっかり仕事の事なんか忘れて夢中になってる。
胸の前で腕を組んで目をうるうるさせて……恋する乙女ですか??
そこに王様と話を終えたルードビッヒ宰相が戻ってきて、ゴホンと咳払いをした。
途端、目立たない物静かな書記長に戻る。
切り替えが早いのも最高幹部でいるには必要な素質なんだな、なんて変な事に感心した。
「よくわかった。ではそれらをギルドに持って来させてくれたまえ。」
ルードビッヒ宰相は冷静にそう言い放つ。
その持ってくるのが当たり前と言った態度にカチンと来たアレックが噛みついた。
「当然の様に言うな。それらは冒険者ひとり一人にとって、命と同じぐらい大事なもんだ。そんな簡単に言われたくない。」
「アレック!!」
俺は慌ててそれを止めた。
ルードビッヒ宰相の蛇の目がギロリとアレックを睨む。
「この国の王子であるライオネル殿下のお命がかかっているのに、おかしな事を言う。」
「忘れたのかよ?ギルドは独立した国に近い。基本的にはその国の法や権力に従うが、あまりに理不尽に横暴な要求してっと、痛い目見るぜ?!」
「……なるほど。君はギルド側の魔法師だったな、アレクセイ・マディソン。」
「よせ、アレック。俺が説明する。」
嫌味なほど冷徹に言い放ったルードビッヒ宰相に、アレックが牙を見せて微かに唸った。
アレックは優れた魔法師なのだが、いかんせんまだ若すぎる。
こういう部分は周りがフォローするしかない。
俺は胸ポケットから黒猫キーホルダーを取り出すと、アレックの目の前にぶら下げた。
途端バシッとそれが奪われた。
ぴぃっ?!と小さな声がしたが、アレックは両手でそれを包み込んで無言で中をのぞき込んでいる。
俺は小さくため息をつく。
アレックはその実力の為に周りから大人同然に扱われているが、本来はまだ子供なのだ。
理不尽さには純粋に腹を立てるし、それが押し通される大人の社会では無垢な心が傷つくのだ。
「失礼しました。アレック魔法師の言い方がこの場に相応しくない失礼な言動だった事は私が代わりにお詫び致します。ですがラティーマー宰相、彼の言い分は最もでもある事をご理解頂けますと幸いです。」
俺は頭を下げながらそう返した。
アレックは自分がした事がどういう事か理解できる頭のいい子なので、それ以上、何も言わなかった。
ただ対面的にそれに従えるほど大人でもないので、拗ねたように丸まって手の中の人工精霊を眺めている。
それでもここでグッと堪えて俺に任せてくるのは、本当にしっかりした子だよなぁと思う。
この子の我慢強い心意気を無下にすべきではない。
「冒険者にとってそれらの秘宝は、彼らにとっての一財産であり、また、九死に一生を得る事を可能にする仕事をする上でかけがえのないものです。先日、似た話になった際、こんな例えを出されました。例え同じ王命であろうと、貴族にとって馬を一頭差し出す事はたいした事ではないとしても、農家が蓄えをはたき借金をしてまでして手に入れた農耕馬を取り上げられたら、その一家は路頭に迷う事になる。立場が違えば、そのものの持つ重さは異なります。我々がたいした事ではないと、王命なのだから当然だと切り捨てていい事ではありません。」
「そうだね。発掘もそうなのだが、きちんと申請して許可を得、その際取り決めをしてお金は支払っていると言うのに、大きな発見があったりすると、それを奪われたり上乗せで代金を要求されたりと、本当に政府は横暴だなぁと僕も思うよ。そのせいで小さな研究発掘隊などは赤字続きで、研究を諦める研究者も多いんだよ。そんなくだらない事をしなければ、研究によって世の中はより豊かになっていたにも関わらずね。」
俺の話に思わぬ援護がかかった。
何食わぬ顔でノルがそう言ったのだ。
ちょっと論点はズレてはいるが、大きく言えば政府の権力を振りかざした横暴に国民は迷惑しているって話だからあながち間違いでもない。
ノルにとったら余りに毎度の事なので、いつもの事だが本当厄介だと言う愚痴だったのかもしれないが、これが科学技術研究の第一人者の口から出たとなっては、さすがのルードビッヒ宰相もこれ以上、この件を強気に押し通す事もできない。
何しろノルの言っている事はこれから起こる事ではなく今まで長きに渡り起きていた事であり、しかも話し合って取り決めてからとなると書面も残っている事なので、その気になれば今のノルなら長年の証拠と共にこれまでの事を裁判だって起こせるだろう。
それは各所で苦い思いをしてきた国民の気持ちを代弁する事になり、ある意味大事になる事が予測できる。
王国の毒蛇の判断は早かった。
「……バンクロフト博士、申し訳ありませんがそれは今回の事とは無関係です。ですがその旨、調査し改善すべき点は改善いたしましょう。」
「僕は発掘に関する事だけを言った訳ではなくて……。」
「その部分につきましても後日、王国会議で検討しましょう。ですが今はライオネル殿下の件での秘密会議ですので殿下の計画の話を進めさせて頂いても?」
ちょっとでも臭い匂いがしそうなら、速攻、蓋をして何重にも袋を被せる。
ルードビッヒ宰相の性格から考えて、そのまま放置と言う事はないが、表立って処分を出す訳にも行かない部分でもある。
ガスパーがいたならそれが政治だと言うだろう。
まぁ逆に言うと、表立って処分がされないと言うのは別の意味の恐ろしさも含んでいるんだけどね。
ノルはと言うと、ルードビッヒ宰相から微笑と共に穏やかに放たれる毒気に、生まれ持ったビビリセンサーが無意識に反応してちょっとアワアワしている。
急に素に返ってどうしていいのかわからなくなっているノルに、隣の義父さんがにっこり笑って何か声をかけた。
ノルはそれを聞きながら水を数口飲んで、頷いている。
さすがは俺のほっこり義父さん。
ここからだとフォローのしようがなかったから助かる。
「では話を戻しまして、今回の計画で精神保護の観点からギルドより秘宝をお借りする件ですが、申しました通り、それらは冒険者にとってかけがえのないものであり大きな財産です。なのでお借りする約束はつけましたが、リース料が掛かります。」
俺の言葉にルードビッヒ宰相の顔が険しくなる。
だが、ここでそれに文句をつけてはせっかく早急に蓋をした事を蒸し返すことになる為、苦々しい顔で俺を睨むにとどめた。
その横でちょっと面白そうにコーディ書記長が笑いを堪えている。
「コホン……なるほど。彼らの秘宝は値段のつけられないものばかり。その一財産でもある秘宝をお借りするのですから、最もな話ですな。とはいえ、精霊の王に対しても効果が期待できるものとなりますと、それなりにこちらも覚悟がいりますなぁ。」
不思議なモノに精通しているコーディ書記長は、こちらの言い分を計ってそう言ってくれた。
ただでさえ仮想精神空間装置でそれなりの金額が要請されている事もあり、秘宝に関して半信半疑なルードビッヒ宰相は不審そうにコーディ書記長を睨んだ。
「……随分と冒険者達の秘宝にお詳しいようですな?」
「はい。恥ずかしながら私は個人的にそういったモノを調べたり集める事を趣味としておりますので。ラティーマー殿がお疑いになりたい気持ちもわかります。何しろ殆ど知られてはいないものであるが故に、秘宝と呼ばれるのですから。」
「そんな世の中に知られてはおらぬ効果もはっきりせぬモノ、どう信用しろと?」
「ふふふ、確かにこういった物を商人から買うのであれば偽物と疑ってかかった方がよろしいと思います。ですが今回の場合ギルドが貸すと言っているのです。現役もしくはかつて現役だった冒険者が確実に使っていた物になります。そしてギルドが一国と同等である事と同じく、ここで何の効果もないものを貸し出したとしたらギルドの信頼に関わります。そう考えれば、これほど裏付けのある秘宝はないと思いますよ?」
コーディ書記長ににこやかにそう言われ、ルードビッヒ宰相はムスッと顔を顰めたまま黙ってしまった。
気に入らないが勝負あった。
コーディ書記長がにこにこと俺に笑いかけてくる。
「それでアズマ男爵?リース料はいかほどなのかね??」
「それが……まだきちんと私自身が話をしておりませんので、金額までは……。ただ、相手が相手なので、かなりの金額になるかと……。」
せっかくコーディ書記長がまとめてくれたのに、こういう言い方しかできなくて申し訳なくなる。
だがここでも思わぬ助け舟が入った。
「……そなたが借りると言うからには、所属のギルド、つまりスカーレットからかね?!」
途端、ぱぁ~とお花畑が炸裂する。
これにはルードビッヒ宰相は頭を抱え、コーディ書記長ですら苦笑いを浮かべている。
「あ、はい……すみません。フライハイトのうちのマダムです……。守銭奴の……。」
「ハハハッ!!スカーレットが守銭奴だなんて、サークは面白い事を言うのだな!!」
「いや……事実ですし……。」
世間ずれした王様は、俺の言葉を冗談だと受け取ってケラケラ笑っている。
恋は盲目って言うけどさぁ~、王様、現実を直視して下さい……。
きちんと王妃様がいる王様にとってマダムは永遠の憧れ、つまり若かりし日に追いかけたアイドル、未来永劫変わる事のない推しなのだと思うのだけれど、色眼鏡にしたってヤバイでしょ……。
もうちょっと夢見てないで、現実的にマダムを見て欲しいよ……。
「そうかそうか……スカーレットと今回も縁があるのだなぁ~。」
「国王陛下、今回マダムは別にこっちに来ません。ギルド代表としてモノを貸してくれるだけです。……高額のリース料請求して。」
俺はげっそりとしながら肩を落として王様を見守った。
ルードビッヒ宰相もグレイさんも、王様の病気とも言えるマダムへの情熱と投資には何を言っても無駄だと思っているらしく、こめかみや額を押さえながら怒りを堪えている。
こういう時のオタクって手がつけらんないからな~。
王様のマダム推しも程々にしないと、心労で周りの家臣が倒れちゃうよ。
唯一、種類は違えどオタク心のわかるコーディ書記長が苦笑したまま俺に言った。
「う~ん、仮想精神空間装置でそれなりの予算が取られるしね……。この国の第三王子であらせられるライオネル殿下の命がかかっているとはいえ、あまり国としても無理はできないと言っておくよ。何しろ南と西の国への警戒と監視もあるし……。」
「それなのですが、いくつかの提案を元に、ある程度交渉しようと思っているんです。」
俺がそう言うと、胸ポケットから頭痛薬か何かを取り出して水で飲んだルードビッヒ宰相が諦めの中に多少の期待を持って俺を睨んだ。
「交渉とは何だ?アズマ男爵?」
「はい。一つは今、宮廷魔術師本部に余りにも色々な仕事が回ってくる為、本来の国防魔術師としての役割が疎かになっています。ですので本来の業務に支障が出ないよう、外部に委託できる部分は委託してみてはどうかと言う試みを行っています。その試験運用で、先の件の処分貴族の財産鑑定をギルドに委託すると言うものがあります。」
「……ほう?」
「冒険者はダンジョンなどでの探索に優れていますので、隠し財産などを見抜く力も優れています。また、見つけた物の価値が直接、自分達の収入源にもなっています。生活がかかっていますからね、その目利きはかなりのものです。」
「なるほど!宮廷魔術が魔力鑑定をしなくても財産価値の測定ができ、おまけに隠し財産も見落とさずに済むと言う事だね?!」
「そういう事になります。」
俺の話を聞いてコーディ書記長が明るく言った。
ここまで聞けば、ギルドに外部委託するのはいいこと尽くめの様に聞こえる。
だがさすがは宰相は表側だけで判断したりしない。
「……外部委託すると言う事は、彼らに誤魔化される恐れもある。また機密情報部分はどう考えているのかね?」
「はい。信頼性を損なわない為に、冒険者を直接雇い委託するのではなく、ギルドに依頼をかける形で行います。ギルドも信用第一の客商売です。そこで冒険者が横暴な真似や誤魔化しなどの窃盗を働いた場合は、ギルドに賠償金を請求する事が出来るなどの形を取る事によりギルド内でまずしっかりとした体制を組んで貰うつもりです。また依頼の際には冒険者のランクや職業レベルなどの設定を行い、希望に沿った結果が出せる冒険者しか応募できないようにします。それから機密についてですが、ここはまだ検討段階の部分ではありますが、どの程度までの仕事を外注するかはこちらで判断していきます。また依頼を受ける冒険者に対し魔術を使った契約書にサインを求めたり、必要に応じで王宮の者を監視役を必要人数派遣します。誓約書と機密レベルによって監視役をつける形で調整しようと思っています。」
「なるほど……。」
ルードビッヒ宰相はまた水を飲み、少し考えていた。
「外部委託の話はわかった。で、何を持って交渉する?」
「はい。まず外部委託する場合フライハイトのギルドに優先的に話をする事。仕事がなくならないよう定期的に外部委託を依頼する提携契約を結ぶ事、それから今回の処分貴族の財産鑑定に関してのギルド側の取り分等を考えています。」
「財産鑑定の取り分は乗ってこようが、他の2つは交渉に使えるのか?」
「はい。冒険者はクエストをする以外では基本的には収入源がありません。精霊が人に関わらなくなったのを期に精霊に関する問題も減り、また魔物の活動もゆっくりですが減ってきています。その為、新たなダンジョンが生まれたりする事も殆どなくなりました。その為、彼らの収入源は減っています。ですが彼らの持つ特異的な能力や技術は素晴らしいものです。フライハイトではそんな冒険者を資源の一つとみなし、活用する方法を考えている所でした。その一環の一つが今回の外部委託でもあります。この活動が安定したサイクルを生み出せれば、冒険者は自分達の技術を収入源として活用できます。今まで冒険者がクエスト以外で収入を得るとなると、護衛任務や傭兵等の仕事しかありませんでした。また経済状況から冒険者をやめて他の仕事に勧める事は彼らの自尊心を傷つける事になりましたが、ギルドに正式に依頼された冒険者の技術を活かす仕事であれば、彼らも受け入れやすいでしょう。よって、交渉の材料とできます。」
俺の話に、ルードビッヒ宰相はまた腕を組んで目を閉じた。
チラリと見た王様は、妙に嬉しそうににこにこしている。
何で王様が嬉しそうなんだろう??
よくわからない。
やがて目を開いたルードビッヒ宰相は、コーディ書記長をチラリと見据えた。
「コーディ、そこに裂ける予算の希望額と最高金額をこの新米領主に教えてやれ。」
諦めたようにため息をついたルードビッヒ宰相の言葉に、俺は不機嫌さが抜けてきたアレックと視線を合わせてニヤッと笑った。
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