欠片の軌跡⑥〜背徳の旅路

ねぎ(塩ダレ)

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第九章「海神編」

もがき続ける人々

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バチンッと仮想精神空間実現装置から火花が散った。
そして上がる炎を小型の消化器で消しながら、ノルは険しい顔で応急処置を施していく。

「冗談じゃない!仮想精神空間でサークは何をおっ始めたんだ?!ふざけやがって!!これじゃいくら応急処置をしてもしても追いつかないじゃないか!!」

普段はおとなしいノルが言葉を荒げ、苛立たしげに叫んだ。
これには流石にいつものどかな森の街の住人たちも苦笑いする。
蓄電装置に魔力を送りながら、まぁ、あの子だからねぇ~と顔を見合わせる。

「博士!他に持ってくるものはありますか?!」

部屋の外で待機していたイヴァンは、今やノルの欲しがる物を運び込む配達人と化していた。
下手な隊員を部屋に入れる訳にはいかなかった為そうなったのだが、無駄に小器用で機転が利くので悲しいかなハマリ役だった。

「冷蔵庫!!」

「冷蔵庫ですか?!」

「あれは僕が弄ったから使える部品が多い!何よりあれにはデカイ氷冷魔結石がついてる!!冷蔵庫の小型魔力蓄電装置と組み方を変えれば……!!」

それを言われ、イヴァンは首を捻った。
大きな氷冷魔結石ならイニス家に登録記録が残っているはずだ。
そんな大きな氷冷魔結石が何故サークの家にあるのか……。
でも何となくの流れが頭の中で想像できた。

「わかりました。ただ、冷蔵庫となると一人では難しいので……。」

「……俺が行こう。」

「助かります、隊長。」

緊迫した状況で表情固く場を見守っていたギルがそう申し出、イヴァンと顔を見合わせて頷いた。
そしてすぐ様、この家の普段使いのダイニングに向かった。

「あ、博士。氷冷魔結石でもお役に立つのでしたら、小さいですがこれを。」

後を追おうとしたイヴァンはそう言うと、胸飾りになっていたブローチを外しノルに差し出した。

それは胸飾りを模した氷系攻撃アイテムだった。
魔力のない者が魔術の様な攻撃をする為のアイテムで、いざという時の為に装飾品にカモフラージュして身につけている者がたまにいるのだ。

イヴァンの場合、遠く離れた北欧の母親からお守りとして貰ったものだった。

「ありがとう!助かる!!」

それをノルは無造作に引っ掴んだ。
そしてそのままそれを分解していく。

イヴァンは少しだけ哀傷の表情を浮かべ、そして直ぐにそれを隠した。

皆の命がかかっているのだ。
母はわかってくれるだろう。

その胸に北欧の白い大地が一瞬浮かぶ。
凍てつく風の匂いがした気がした。

「……では、急いで持ってきます。」

「うん、よろしく頼む。」

イヴァンは自分を切り替え、ギルの後を追って日常用ダイニングに向かった。














『……え?!』

ライオネルをその肉体に戻し仮想精神空間に戻ってきたラニは、目の前の状況に絶句した。
姿の見えないラニの存在を感じ取ったサークの養父は静かに笑う。

『おじさん……これ……。』

「うん。」

ラニの受けた衝撃を肌で感じても、神仕えは何も言わなかった。

戦う事になるとは聞いていた。
だが、精神世界でこんな戦闘が繰り広げられる事になるとはラニとて思っていなかった。

精神世界は現実世界とは違うのだ。

簡単な魔術だって現実とは違い、精神世界では展開する事が難しい。
だからこんな事になるなんて思わなかったのだ。

『え……どうやって……?……どうして……?!』

驚くラニを神仕えはそのままにした。
信じられない事だとわかっていた。

自分にとっては神々の……精霊同士の戦闘は見慣れたものでも、普通は違う。
精神体である精霊には、現実も精神世界もさほど大差はないからだ。

彼らはその二つの世界の中間に存在している。
だから変わらずにその力を表すのだ。

「……ラニ?」

『え?……は、はい。』

「ここで見た事は口外しないでもらえるかな?」

『……お兄ちゃんの為に?』

「うん。」

ラニはじっと目の前の戦いを見つめた。
わかっていた。
これは誰にも話してはいけない事だと……。

『わかりました。誰にも言いません……。』

「すまないね……。これはまだ明かせる事じゃないんだよ。現実はまだそこまで進んでいないからね。」

『……いつかは……いつかは、ここに現実が追いつくんですね……。』

「うん。そうなるよ、おそらくね。」

サークの養父は、少し淋しげに笑ってそれを見ていた。

それはサークを初めて見た時から覚悟していた事だった。
いや、シルフと話した時から知っていた。

だが実際にサークをこの手に抱いた時、どうかそうならないで欲しいと願っていた。
このまま、ちょっと風変わりな普通の子供として成長して、皆と変わらず普通に生きて欲しいと。

でも、それでは世界が回らない。

「ふふっ……あんな小さかったのになぁ~。」

『……僕、お兄ちゃんが小さかったとか想像できないです。お兄ちゃんはいつだって僕にその大きな背中を見せて導いてくれるから。』

「そういうものだよ。そしていつかはラニもそう思われるんだよ。」

『そうかなぁ……。想像できないや。』

そうやって受け継ぎ、繰り返し、人は生きていく。
誰かの背を追いかけ、やがて誰かにその背を見せ、そして踏み越えられていくのだ。

「さて、ラニ。私達は私達の仕事をしよう。でないとこの空間ごと私達も壊されかねないからね。」

『はい。』

のほほんと言った神仕えの言葉にラニは苦笑した。
さらりと言われた言葉だが、冗談になっていないからだ。

本当に気を抜いたら空間ごと壊されてしまうだろう。
ラニは気を引き締め、自分の仕事に徹した。














楽しい。

そんな事を思える状況ではないはずなのに、その感情にサークは支配されていた。
いくら全力でぶつかっても、海神は屁でもないと言う顔で押し返してくる。

こんにゃろう、片手で遊びやがって。

そんな無礼極まりない事を思いニヤッと笑う。
全く歯が立たないのに楽しくて仕方がなかった。

「どうした?!この程度か?!口ほどにもない!!」

そう言ってくる海神も心なし楽しげだ。
まぁ人間のかったるい話し合いよりは、ずっとわかりやすく楽しいとは思うけど。

「ならばこちらから行くぞ!!」

そうはさせるか。
流石に海神側から大型の攻撃を撃たれたら、この空間が持たない。

サークは即座に身体強化の二重がけを行った。
肉体がないので意味があるのかよくわからない魔術の使い方ではあったのだが、サークは本能的にそれを行っていた。
この状況になってから、どうも建設的な思考回路が働かず、直感的に行動を起こしている気がする。
それを頭の片隅で感じながらも、そんな自分にブレーキをかける事ができずにいた。

強化された状況で速攻海神に向かっていき、その長い体を攻撃しながら駆け上がる。
初めて二重がけを試した時は短時間でも体が悲鳴を上げたが、あれから随分体も鍛えたし、何より肉体がない今はさほどきつくはない。

頭近くまできて、サークは渾身の魔力と意志を込めて拳を振り上げた。
サークの意図を読んだ海神がサッとそれを避けようとしたが、その意志の篭った拳は海神の見事な角に当たりヒビを入れた。

してやったり!!
何とか一矢報いてやった!!

思わず満面の笑みが漏れた。
それを海神が睨みつける。

「小癪な!!」

美しい見事な角を傷つけられ、少しムッとした様に海神はその大きな尾でサークを叩きつけた。
吹っ飛ばされたサークは仮想精神空間の壁にブチ当たった。
本来ならここでカエルのように潰されるのだろうが、養父である神仕えが何をしたのかわからないが、壁は粘度の高い流動体の様にその衝撃を吸収してぐにゃりと撓み、そのままサークごと飲み込んでしまった。
そしていくらかしてボヨンとサークを吐き出す。

「う……、壁に飲み込まれて死ぬかと思った……。」

デロンと壁から吐き出されたサークは思わず咽る。
戦っていたのは海神の筈だが、気をつけなければならない敵はそれ以外にもいるようだ。

空間を壊さない為にこういう状態にしたんだろうけど……どうなってるの?!これ?!

サークは思わずペタペタと仮想精神空間の壁に触った。
触った程度の衝撃では撓んだりせず普通の壁だ。

「……のわっ!!」

そんなサークに海神の攻撃が降り注ぐ。
石礫ならぬ、圧縮された水が矢のように襲ってきた。
シールドで防ぐには重すぎると判断したサークは動く事でそれを避ける。

「ははは!子ねずみがよく踊る事よのぉ!!」

海神は楽しげにそう言った。
何か言い返してやりたかったがそれどころではない。
必死に避けるがこのままでは埒が明かない。

どうする?!

それまで感覚的に戦ってきたが、やはり海神相手に無鉄砲に向かっていくだけではこてんぱんにされて終わる事が目に見えてる。
自分は主であるライオネルから「わからせろ」と命を受けているのだ。

降り注ぐ殺気の雨はその威力で床部分を激しく撓ます。
ボコボコと揺れ動くそこを動き回るのは不利でしかない。

心なしにやりと微笑む海神。
力の差はわかっていても、このまましてやられてなるものかと奥歯を噛む。

高圧水とはいえ水だ。
液体が圧をかけられるに過ぎない。

だったら……!!

サークは足を止めて自分にその雨が集中するように仕向ける。

水を気化させる方法はいくつかある。
単純に考えれば高温だ。
だがそれをした場合、液体から気体に変わる事で爆発的に体積が増える。
水蒸気爆発というやつだ。
だから高温で水を水蒸気にした場合、その爆発的に生じるエネルギーにこの仮想精神空間が耐えられる保証がない。

サークは魔力を練り、そこに自分が思い描く情報を可能な限り加え込んだ。
魔法陣が展開され、その魔術が効力を形に表す。

「?!」

海神が意外そうな顔をして驚いた。
サークの魔法陣に吸い込まれた圧縮水の雨は、爆発なども起こさず、魔法陣と共に消え去っていった。

消えた魔法陣の向こうでサークが笑う。
それにニヤリと海神も笑った。

「……真空の層を作ったのかえ?面白い事を考え付く子よのぅ……。」

「ええ……薄い真空の層を作るだけならその場から他のものを追い出すだけなのでそこまで難しい事でもありません。そして真空に取り込まれ水が液体から気化すれば、真空自体の力も弱まります。よって解き放ってもその真空がこの場に与える影響は少ない。」

「ふふっ、可愛いリオが何故お主に惹かれたか……。戦ってみてようわかってきた……。だが、あの子をを傷つけた代償は重いぞ?!」

「……本当はもう、真実をお分かりのはずです。違いますか?海の主?」

「知らぬわ、小童っ!」

チリッと苛立ちを顔に出し、海神はその身を激しく波打たせた。
強靭な尾が、サークを叩きのめさんと襲いかかる。













「……ラニ、大丈夫かい?!」

激しくなる戦闘にラニの魔力は疲弊していた。
こんな予想外の事は想定していなかった。
この件は危険を伴う為、魔力は出し惜しみせずに対応に当たっていた事がアダになった。

(どうしよう……魔力が……っ!!)

精神魔術師であるラニは異常な量の魔力をその身に持っている。
だから今まで、危険を感じる事はあっても、魔力切れしたことはなかった。

その為、危険値に入ってからの魔力の消耗の速さを知らなかったのだ。

その上、激しくなる海神とサークの戦闘によって、その必要量はどんどん増えている。
自分が魔力切れを起こせば全てのつながりが遮断され、自分を含め、ここにいる全ての精神体が無限に広がる精神世界のどこかもわからない精神空間に放り出される事になる。
そうなったら現実世界に戻る事は不可能だろう。
その意識が擦り切れるまで、永遠に無限の中を彷徨う事になる。

考えが甘かったと自分を呪う。

どうする?!
でもここで魔力をセーブし始めたら、この空間が壊れてしまう。

おじさんが空間自体に柔軟性と衝撃吸収の概念を持たせる事によって、この激しい戦闘に対応してくれている。
送り込まれてくる魔力も既に魔力蓄電池の容量を超えている筈だ。
おそらく現実世界で、バンクロフト博士が必死にここを持たせてくれているのだ。

海神とサークの戦闘は誰にとっても想定外だっただろう。
けれどそれでも、皆が必死に自分の役割を果たしその場を守っているのだ。


なのに僕は……!!


情けなくて泣きたくなった。
やはり自分なんかが出しゃばるものではなかったのだ。

サークに憧れ、強くなろうと藻掻いた。

それで強くなった気でいたのだ。
自分は昔と変わらない、臆病で無力な子供に過ぎないのに。

「ラニ、気を強く持ちなさい。」

『でも……!!』

「君は覚悟を決めたんだろう?これを成し遂げると。そしてここまで最善を尽してきたはずだよ?」

『………………。』

「胸を張りなさい。ラニ。自分自身に誇れる自分でいなさい。たとえどんな結果になろうとも、最後まで諦めず前を睨みなさい。」

『おじさん……。』

「ラニ、君の大好きなサクなら、こんな時こそどうすると思う?」

そう言われてハッとする。
サークなら絶望的な状況に、早々に諦めて卑屈になって自分の弱さに逃げたりしない。

たとえどんなにみっともなくても、どんなに格好悪くても、そこに希望が見えなくても、たとえ失敗の前に意味のない半歩だったとしても最後まで前に進む事を選ぶだろう。

『……僕は……お兄ちゃんにはなれない……でも……僕だって藻掻く事はできるんだ……っ。それが無駄な事だって……!!』

「うん。それで良いんだよ。どんなに努力しても世界の決めた流れに逆らう事はできない。だから私達は藻掻くしかない。最後まで信念を、自分自身を貫き通せば良いんだよ。そこに意味があるかは他人が決める事ではない。君が決める事だ。自分自身に胸を張って誇れる自分でいなさい。」

『……はい!!』

状況が好転した訳ではない。
危機的状況な事は変わらない。

だが、絶望していたら何か手立てがあっても見落としてしまう。

最後まで諦めるな、ラニ。
自分が諦めたら、皆が永遠に彷徨う事になる。

絶対に諦めたら駄目なのだ。
どんなにみっともなくても、最後まで藻掻き続ける事はできるのだから。

ラニの気持ちが持ち直した事を感じ取り、神仕えは穏やかに笑った。
そして告げた。

「それにね、ラニ?そんな後ろ向きでいると、お姉ちゃんに引っぱたかれてしまうよ?」

『……え?』

突然出てきた姉の話。
脳裏に腰に手を当て怒っている姉の姿が浮かんだ。



《ラニ!!しっかりしなさいっ!!》



その瞬間、本当にほっぺたを引っぱたかれた様な衝撃が走った。
そして自分の中にブワッと魔力が流れ込んでくるのを感じる。

お姉ちゃんだ……。

その温かくもガツンとした魔力を感じ、ラニは胸が締め付けられた。
姉は最後までラニがこの件に関わる事に反対した。
それを押し切って、ラニは自分の意志を突き通したのだ。
姉は最終的には折れてくれ、そして側にいてくれた。

お姉ちゃん……!!

流れ込んでくる魔力。
それはおそらく姉のものだ。
どうやったのかわからないけれど、姉がラニに自分の魔力を与えてくれているのだ。

涙が出た。

谷に来てからずっと二人で生きてきた。
泣いてばかりの自分を、双子なのに「姉」だからという理由でずっと守ってくれた。

最近は反発して喧嘩する事も多かった。
でも、それでも姉は、リアナはラニの側にいてくれるのだ。

誰よりも誰よりも、心強い味方が側にいてくれる。
それが魔力の補充よりも力強くラニの心を満たしてくれた。

大丈夫、僕はひとりじゃない。

お姉ちゃんがいる。
アレック君や他の皆もいる。

皆、それぞれの役割に必死に応えている。
僕だって最後まで食らいついていかなければ!!

ラニの心情を感じながら、神仕えは何も言わずに静かに微笑む。

この件がどんな結末を迎えるかはわからない。
けれど、自分たちは与えられた自分の役目を必死にこなすしかないのだ。

戦闘を繰り広げる海神とサークを見守りながら、神仕えはそう自分に言い聞かせていた。
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