欠片の軌跡③〜長い夢

ねぎ(塩ダレ)

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第五章「さすらい編」

迷い石

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俺たちは東の国を出て、北西方向に歩いていた。
時よりリアナとラニがカッカッと言うような不思議な声を出して、方向を確認している。

「それにしても、竜の谷が北にあるとは思わなかったよ。」

俺がそう言うと、リアナとラニはぽかんとした顔をした。

「北にあるのかは知らないよ?」

「そうね、村がここからどの方角にあるのかはわからないわ?」

「え!?ならどこに向かってるんだ!?」

「北のポータル。」

「僕たち、そのポータルから出てきたから、そこに戻るの。」

「ポータル??」

「良く知らないわ。でも私達が村の外に出る時はポータルを使うの。北だけじゃなくて、いくつかあるわ。」

誰かが竜の谷は魔術本部と同じで隠されていて、特殊な入り方があると言っていた。
恐らくその出入口の事をポータルと呼ぶのだろう。
危なかった。
闇雲に北に行ったからといって、辿り着ける場所ではないようだ。
本当にリアナとラニと出会えた幸運に感謝した。
でなければ俺は永遠とさ迷っていたに違いない。

「ありがとう、ふたりとも……。出会えて良かった……。」

「言っとくけど、サーク。私達にとっても、あなたを連れていくのは危険を侵すことなのよ?わかってる?」

「わかってる。感謝してもしきれない。」

「サークだから信用して連れていくけど、バレたら私達、風になるわ。」

風になる。
その言い回しにハッとした。

「なぁ!竜の谷の風になるってどういう意味だ!?」

ふたりは顔を見合わせた。

「お葬式の事だよ?」

「葬式!?」

「そ、私達は死んだら、遺体を竜の巣に運ぶの。そうすると竜がそれを食べて、空に還すの。だから竜の谷の風になるって言うの。」

予想はしていた。
そんな感じの使い方だったから。

俺は目の前が真っ暗になった。

ウィルはその覚悟をしていた。
ただ、静かにそれを受け入れていた。

必ず帰るってどういう意味だよ……。

俺は口元を押さえた。
血の気が引いて、一歩も歩けない。

「お兄ちゃん……大丈夫?」

ラニが心配そうに俺を見上げている。
俺は首を横にふった。

「すまん、少し休ませてくれ……。」

何とか近くの木まで歩き、そのまま崩れるようにしゃがんだ。

ウィルはその覚悟をしていた。
そうなると確信していたからだろう。

何でだ!?
やっと竜の谷を見つけたのに!?
行ってもお前はもう、いないかもしれないのか!?

言葉がでなかった。

「……何よ?」

顔を起こすことも出来ない俺に、リアナが苛立たしげに聞いた。

「サーク、あんたがそこまでして竜の谷に行きたいのは何でよ!?」

「いなくなった恋人を探しに来た。竜の谷の風になっても、俺を忘れないとメッセージがあったんだ……。」

ふたりがはっと息を飲むのを感じた。
俺よりもその言葉の意味を知っている二人だからこそ、その重さを理解したようだった。

少しの間の後、急にリアナがずんずんと俺の前に歩いてきた。
そして小さな手で、力一杯、俺の頭にグーでパンチした。

「だったら!さっさと立ちなさいよ!何ヘタレ込んでんのよっ!!」

「リアナ……。」

「ちんたらしてたら!本当に風になっちゃうわよ!?いいの!?それでも!?」

「……………。」

「お兄ちゃん、その人がどうして風になるのかわからないけど、そんなすぐじゃないと思う。お葬式じゃなくて風になる事は滅多にないよ。凄く特別な時だけだよ、夜の宝石になるとか。その時でも大人がたくさん話し合うから、すぐじゃないと思う。」

「ラニ……。」

「ほら!さっさと立ちなさいよ!!もしそうなら、今、サークが行かなくてどうするのよ!!」

リアナがぐいぐいと俺を立たせようと引っ張った。
波が溢れた。
バッとふたりを抱き締める。

「ありがとな。本当に、ありがと……。」

いい大人が小さな子供に励まされ、抱きついて泣いてるなんてみっともなかったが、そんな事はどうでも良かった。

そんな俺を、リアナは不機嫌そうに、ラニは少し困ったように抱き止めてくれた。











後1時間程で日が暮れると言う頃、俺たちは古びた小さな遺跡後のような場所にたどり着いた。
どうやら目的地はここだったようで、ふたりは何故か、キョロキョロと地面を見回している。

「どうしたんだ?ふたりとも?」

「……うん……石を探してるの……。」

「石?」

「そ、私達が持ってたのは、あいつらに捨てられちゃったから。」

「それがないとまずいのか?」

「まずいわね。ポータルが開かないわ。」

「……非常用に……ひとつくらい、あるはずなんだ……。」 

「困ったわね……暗くなって来たから見にくいわ。」

ふたりはしゃがみこんで、あちこちを探している。
俺はふたりに近づいてしゃがんだ。

「手伝うよ、どんな石なんだ?」

「サークには無理よ。ただの石だもん。」

「ただの石?」

「うん。ただの石なの。」

「竜の谷にあったその辺の石ころよ。それが向こうの土地とここを繋ぐ鍵になるの。」

ただの石と言われてしまえば俺には探せない。
どうしてリアナとラニには他の石と区別できるのかは謎だが、俺には探せ無さそうだ。

石が鍵になるのか……。

……石??

俺は急にあることを思い出した。
まさかなぁ、そんな都合の良いことなどあるわけがない。
だが、俺はどうしても気になって声をかけた。


「なぁ、ふたりとも。それってこれだったりする?」


俺はベルトのポケットからひとつの石ころを取り出した。
旅に出る前にリリとムクが渡してくれたお守り。
それを見たリアナとラニが目を丸くした。

「あっ!!迷子の石っ!!」

「はぁ!?何でサークが持ってるのよ!?」

ふたりはビックリして、俺の持っていた石を眺めた。
手にとって確認し、間違いないと言う。
何故持ってると聞かれて、俺は困ってしまった。

「……家族がね、迷子が見つかるようにって持たせてくれたんだよ……。」

リリとムクには、この未来が見えていたのだろうか?
俺の困ったような嬉しいような顔を見て、ふたりは小首を傾げるばかりだ。

「ま、いいわ。これで帰れるから。」

「そうだね。」

「サーク、離れ離れになるといけないから、手を繋いで?」

俺はそう言われ、3人で和を作るように小さな遺跡後に立った。
リアナとラニが歌い出す。
歌いながら、リアナがぽんっと真ん中に石を投げた。

その瞬間、パッと辺りが真っ白になった。
その後の事は、覚えていない。
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