20 / 77
第五章「さすらい編」
迷い石
しおりを挟む
俺たちは東の国を出て、北西方向に歩いていた。
時よりリアナとラニがカッカッと言うような不思議な声を出して、方向を確認している。
「それにしても、竜の谷が北にあるとは思わなかったよ。」
俺がそう言うと、リアナとラニはぽかんとした顔をした。
「北にあるのかは知らないよ?」
「そうね、村がここからどの方角にあるのかはわからないわ?」
「え!?ならどこに向かってるんだ!?」
「北のポータル。」
「僕たち、そのポータルから出てきたから、そこに戻るの。」
「ポータル??」
「良く知らないわ。でも私達が村の外に出る時はポータルを使うの。北だけじゃなくて、いくつかあるわ。」
誰かが竜の谷は魔術本部と同じで隠されていて、特殊な入り方があると言っていた。
恐らくその出入口の事をポータルと呼ぶのだろう。
危なかった。
闇雲に北に行ったからといって、辿り着ける場所ではないようだ。
本当にリアナとラニと出会えた幸運に感謝した。
でなければ俺は永遠とさ迷っていたに違いない。
「ありがとう、ふたりとも……。出会えて良かった……。」
「言っとくけど、サーク。私達にとっても、あなたを連れていくのは危険を侵すことなのよ?わかってる?」
「わかってる。感謝してもしきれない。」
「サークだから信用して連れていくけど、バレたら私達、風になるわ。」
風になる。
その言い回しにハッとした。
「なぁ!竜の谷の風になるってどういう意味だ!?」
ふたりは顔を見合わせた。
「お葬式の事だよ?」
「葬式!?」
「そ、私達は死んだら、遺体を竜の巣に運ぶの。そうすると竜がそれを食べて、空に還すの。だから竜の谷の風になるって言うの。」
予想はしていた。
そんな感じの使い方だったから。
俺は目の前が真っ暗になった。
ウィルはその覚悟をしていた。
ただ、静かにそれを受け入れていた。
必ず帰るってどういう意味だよ……。
俺は口元を押さえた。
血の気が引いて、一歩も歩けない。
「お兄ちゃん……大丈夫?」
ラニが心配そうに俺を見上げている。
俺は首を横にふった。
「すまん、少し休ませてくれ……。」
何とか近くの木まで歩き、そのまま崩れるようにしゃがんだ。
ウィルはその覚悟をしていた。
そうなると確信していたからだろう。
何でだ!?
やっと竜の谷を見つけたのに!?
行ってもお前はもう、いないかもしれないのか!?
言葉がでなかった。
「……何よ?」
顔を起こすことも出来ない俺に、リアナが苛立たしげに聞いた。
「サーク、あんたがそこまでして竜の谷に行きたいのは何でよ!?」
「いなくなった恋人を探しに来た。竜の谷の風になっても、俺を忘れないとメッセージがあったんだ……。」
ふたりがはっと息を飲むのを感じた。
俺よりもその言葉の意味を知っている二人だからこそ、その重さを理解したようだった。
少しの間の後、急にリアナがずんずんと俺の前に歩いてきた。
そして小さな手で、力一杯、俺の頭にグーでパンチした。
「だったら!さっさと立ちなさいよ!何ヘタレ込んでんのよっ!!」
「リアナ……。」
「ちんたらしてたら!本当に風になっちゃうわよ!?いいの!?それでも!?」
「……………。」
「お兄ちゃん、その人がどうして風になるのかわからないけど、そんなすぐじゃないと思う。お葬式じゃなくて風になる事は滅多にないよ。凄く特別な時だけだよ、夜の宝石になるとか。その時でも大人がたくさん話し合うから、すぐじゃないと思う。」
「ラニ……。」
「ほら!さっさと立ちなさいよ!!もしそうなら、今、サークが行かなくてどうするのよ!!」
リアナがぐいぐいと俺を立たせようと引っ張った。
波が溢れた。
バッとふたりを抱き締める。
「ありがとな。本当に、ありがと……。」
いい大人が小さな子供に励まされ、抱きついて泣いてるなんてみっともなかったが、そんな事はどうでも良かった。
そんな俺を、リアナは不機嫌そうに、ラニは少し困ったように抱き止めてくれた。
後1時間程で日が暮れると言う頃、俺たちは古びた小さな遺跡後のような場所にたどり着いた。
どうやら目的地はここだったようで、ふたりは何故か、キョロキョロと地面を見回している。
「どうしたんだ?ふたりとも?」
「……うん……石を探してるの……。」
「石?」
「そ、私達が持ってたのは、あいつらに捨てられちゃったから。」
「それがないとまずいのか?」
「まずいわね。ポータルが開かないわ。」
「……非常用に……ひとつくらい、あるはずなんだ……。」
「困ったわね……暗くなって来たから見にくいわ。」
ふたりはしゃがみこんで、あちこちを探している。
俺はふたりに近づいてしゃがんだ。
「手伝うよ、どんな石なんだ?」
「サークには無理よ。ただの石だもん。」
「ただの石?」
「うん。ただの石なの。」
「竜の谷にあったその辺の石ころよ。それが向こうの土地とここを繋ぐ鍵になるの。」
ただの石と言われてしまえば俺には探せない。
どうしてリアナとラニには他の石と区別できるのかは謎だが、俺には探せ無さそうだ。
石が鍵になるのか……。
……石??
俺は急にあることを思い出した。
まさかなぁ、そんな都合の良いことなどあるわけがない。
だが、俺はどうしても気になって声をかけた。
「なぁ、ふたりとも。それってこれだったりする?」
俺はベルトのポケットからひとつの石ころを取り出した。
旅に出る前にリリとムクが渡してくれたお守り。
それを見たリアナとラニが目を丸くした。
「あっ!!迷子の石っ!!」
「はぁ!?何でサークが持ってるのよ!?」
ふたりはビックリして、俺の持っていた石を眺めた。
手にとって確認し、間違いないと言う。
何故持ってると聞かれて、俺は困ってしまった。
「……家族がね、迷子が見つかるようにって持たせてくれたんだよ……。」
リリとムクには、この未来が見えていたのだろうか?
俺の困ったような嬉しいような顔を見て、ふたりは小首を傾げるばかりだ。
「ま、いいわ。これで帰れるから。」
「そうだね。」
「サーク、離れ離れになるといけないから、手を繋いで?」
俺はそう言われ、3人で和を作るように小さな遺跡後に立った。
リアナとラニが歌い出す。
歌いながら、リアナがぽんっと真ん中に石を投げた。
その瞬間、パッと辺りが真っ白になった。
その後の事は、覚えていない。
時よりリアナとラニがカッカッと言うような不思議な声を出して、方向を確認している。
「それにしても、竜の谷が北にあるとは思わなかったよ。」
俺がそう言うと、リアナとラニはぽかんとした顔をした。
「北にあるのかは知らないよ?」
「そうね、村がここからどの方角にあるのかはわからないわ?」
「え!?ならどこに向かってるんだ!?」
「北のポータル。」
「僕たち、そのポータルから出てきたから、そこに戻るの。」
「ポータル??」
「良く知らないわ。でも私達が村の外に出る時はポータルを使うの。北だけじゃなくて、いくつかあるわ。」
誰かが竜の谷は魔術本部と同じで隠されていて、特殊な入り方があると言っていた。
恐らくその出入口の事をポータルと呼ぶのだろう。
危なかった。
闇雲に北に行ったからといって、辿り着ける場所ではないようだ。
本当にリアナとラニと出会えた幸運に感謝した。
でなければ俺は永遠とさ迷っていたに違いない。
「ありがとう、ふたりとも……。出会えて良かった……。」
「言っとくけど、サーク。私達にとっても、あなたを連れていくのは危険を侵すことなのよ?わかってる?」
「わかってる。感謝してもしきれない。」
「サークだから信用して連れていくけど、バレたら私達、風になるわ。」
風になる。
その言い回しにハッとした。
「なぁ!竜の谷の風になるってどういう意味だ!?」
ふたりは顔を見合わせた。
「お葬式の事だよ?」
「葬式!?」
「そ、私達は死んだら、遺体を竜の巣に運ぶの。そうすると竜がそれを食べて、空に還すの。だから竜の谷の風になるって言うの。」
予想はしていた。
そんな感じの使い方だったから。
俺は目の前が真っ暗になった。
ウィルはその覚悟をしていた。
ただ、静かにそれを受け入れていた。
必ず帰るってどういう意味だよ……。
俺は口元を押さえた。
血の気が引いて、一歩も歩けない。
「お兄ちゃん……大丈夫?」
ラニが心配そうに俺を見上げている。
俺は首を横にふった。
「すまん、少し休ませてくれ……。」
何とか近くの木まで歩き、そのまま崩れるようにしゃがんだ。
ウィルはその覚悟をしていた。
そうなると確信していたからだろう。
何でだ!?
やっと竜の谷を見つけたのに!?
行ってもお前はもう、いないかもしれないのか!?
言葉がでなかった。
「……何よ?」
顔を起こすことも出来ない俺に、リアナが苛立たしげに聞いた。
「サーク、あんたがそこまでして竜の谷に行きたいのは何でよ!?」
「いなくなった恋人を探しに来た。竜の谷の風になっても、俺を忘れないとメッセージがあったんだ……。」
ふたりがはっと息を飲むのを感じた。
俺よりもその言葉の意味を知っている二人だからこそ、その重さを理解したようだった。
少しの間の後、急にリアナがずんずんと俺の前に歩いてきた。
そして小さな手で、力一杯、俺の頭にグーでパンチした。
「だったら!さっさと立ちなさいよ!何ヘタレ込んでんのよっ!!」
「リアナ……。」
「ちんたらしてたら!本当に風になっちゃうわよ!?いいの!?それでも!?」
「……………。」
「お兄ちゃん、その人がどうして風になるのかわからないけど、そんなすぐじゃないと思う。お葬式じゃなくて風になる事は滅多にないよ。凄く特別な時だけだよ、夜の宝石になるとか。その時でも大人がたくさん話し合うから、すぐじゃないと思う。」
「ラニ……。」
「ほら!さっさと立ちなさいよ!!もしそうなら、今、サークが行かなくてどうするのよ!!」
リアナがぐいぐいと俺を立たせようと引っ張った。
波が溢れた。
バッとふたりを抱き締める。
「ありがとな。本当に、ありがと……。」
いい大人が小さな子供に励まされ、抱きついて泣いてるなんてみっともなかったが、そんな事はどうでも良かった。
そんな俺を、リアナは不機嫌そうに、ラニは少し困ったように抱き止めてくれた。
後1時間程で日が暮れると言う頃、俺たちは古びた小さな遺跡後のような場所にたどり着いた。
どうやら目的地はここだったようで、ふたりは何故か、キョロキョロと地面を見回している。
「どうしたんだ?ふたりとも?」
「……うん……石を探してるの……。」
「石?」
「そ、私達が持ってたのは、あいつらに捨てられちゃったから。」
「それがないとまずいのか?」
「まずいわね。ポータルが開かないわ。」
「……非常用に……ひとつくらい、あるはずなんだ……。」
「困ったわね……暗くなって来たから見にくいわ。」
ふたりはしゃがみこんで、あちこちを探している。
俺はふたりに近づいてしゃがんだ。
「手伝うよ、どんな石なんだ?」
「サークには無理よ。ただの石だもん。」
「ただの石?」
「うん。ただの石なの。」
「竜の谷にあったその辺の石ころよ。それが向こうの土地とここを繋ぐ鍵になるの。」
ただの石と言われてしまえば俺には探せない。
どうしてリアナとラニには他の石と区別できるのかは謎だが、俺には探せ無さそうだ。
石が鍵になるのか……。
……石??
俺は急にあることを思い出した。
まさかなぁ、そんな都合の良いことなどあるわけがない。
だが、俺はどうしても気になって声をかけた。
「なぁ、ふたりとも。それってこれだったりする?」
俺はベルトのポケットからひとつの石ころを取り出した。
旅に出る前にリリとムクが渡してくれたお守り。
それを見たリアナとラニが目を丸くした。
「あっ!!迷子の石っ!!」
「はぁ!?何でサークが持ってるのよ!?」
ふたりはビックリして、俺の持っていた石を眺めた。
手にとって確認し、間違いないと言う。
何故持ってると聞かれて、俺は困ってしまった。
「……家族がね、迷子が見つかるようにって持たせてくれたんだよ……。」
リリとムクには、この未来が見えていたのだろうか?
俺の困ったような嬉しいような顔を見て、ふたりは小首を傾げるばかりだ。
「ま、いいわ。これで帰れるから。」
「そうだね。」
「サーク、離れ離れになるといけないから、手を繋いで?」
俺はそう言われ、3人で和を作るように小さな遺跡後に立った。
リアナとラニが歌い出す。
歌いながら、リアナがぽんっと真ん中に石を投げた。
その瞬間、パッと辺りが真っ白になった。
その後の事は、覚えていない。
22
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる