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第六章「副隊長編」
食卓を囲む人々
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「お帰り、サーク。」
「お帰りなさい。」
「ただいま、リリ、ムク。」
話し合いを終え、家に帰るととても美味しそうな匂いがした。
とても幸せな事だ。
「サーク、向こうにいっちゃう?」
「ご飯、作ったよ?」
リリとムクが駆け寄ってくる。
そしてぎゅっと俺の服の裾を掴んで聞いてきた。
ヤバい……うちの子、マジ天使……。
ここでしか一緒にいられないのが残念で仕方ない。
「今日は行かないよ?ここにいるよ?」
「本当?」
「明日もいる?」
「うん。でも約束があるから、お昼には帰るよ。」
「わかった。」
「リリ達、ご飯作って持たせてあげる。」
「何人分作る?」
「ん~。二人分頼めるかな?後、シルクにお土産でクッキーか何かあったら嬉しいな。あいつ、凄く頑張ってくれたんだ。」
「いいよ、わかった。」
「パイとケーキなら、シルク、どっちが好き?」
「え~?どっちだろう?そういえば、あいつが甘いもの食べてるの、あんまり見たことないかも??」
そう言われて、シルクが何が好きか知らないなと思う。
以前のシルクの生活は、食べ物の好みに拘っていられるものじゃなかった。
だから食べれるものなら何でも喜んで食べる。
あの細っこい体のどこに入るんだろうってくらい食べる時は食べる。
あと意外と飲むし酒に強い。
これも俺は知らなかった事だ。
俺が飲む習慣かないので、あいつがギルと付き合うようになってから初めて知った事だった。
酒飲みだからもしかすると、甘いものより辛いものが好きなのかもしれない。
かと言って甘いものが好きじゃないとも限らない。
「……う~ん……どうなのかな??とりあえず体を動かすから、腹に貯まるものの方が喜ぶかなぁ~??」
唸りながら反省する。
アイツの主なのに、シルクの事、何も知らないんだな、俺は。
そう思ったら何か落ち込んできてしまった。
「なら、キッシュにしよう?リリ。」
「うん。クッキーもつけてあげよう?ムク。」
そんな俺に気を使ったのか、二人はそう言って笑ってくれた。
俺はふたりを抱き上げ、ぎゅっとハグする。
「ありがとう。ふたりとも。シルク、絶対喜ぶよ。」
ふわふわな小さな手がそれに応えて、俺を抱き締め返してくれる。
凄く幸せな気持ちになった。
ウィルの隣とはまた違った安心感がそこにあった。
「さ、じゃあご飯にしよう。今日は何を作ってくれたのかな?」
「お魚!お魚焼いたの!!」
「あとね、コーンのスープ!!」
「美味しそうだね!」
笑い合って準備をし、テーブルにつく。
そうやって、久しぶりの森の町の夜は更けていった。
「ただいま~って、あれ??」
俺がリリとムクのご飯を持って、研究室兼家に帰ると、何故かウィルはいなかった。
どこに行ったんだろう?
そんな事を思ってると、一階の玄関が開く音がした。
俺は下を覗き込んで声をかけた。
「お帰り、ウィル。どこ行ってたの?」
「あ、サーク。お帰り。銭湯に行ってきた。この時間は空いてるからゆっくりできるしね。」
そう言って上がってきたウィルの髪は濡れていて、顔もほんのり色づいてて、そんでもって、石鹸の香りがして……。
ウィルがちらりと俺を見て顔を背けた。
「……サーク、そんな顔されても困る。」
「は!?え!?ごめん??」
「自覚ないよな、サークって。」
「へ!?何!?」
「何でもない。」
ウィルはそう言うとすたすたとベッドまで行き、俯いてタオルで髪をごしごし拭いていた。
心なし顔が赤く見えるのは、多分、風呂上がりだからだろう。
「……何か、いい匂いがする。」
「あ、昼飯まだだよな?」
「ああ。」
「リリとムクが持たせてくれたんだ。食べよう?」
「噂のサークの天使たち?」
「そ!めちゃくちゃ可愛いの!!」
「見た目はうさぎなんだよな?」
「そう、絵本で見るみたいな、うさぎが二足歩行してるんだ。」
「見てみたいな~。」
「見るかもな。」
「どうやって??」
「ウィル、ウィルのその目、何か凄いものらしいよ?」
「夜の宝石が?確かに珍しいものだろうけど?」
「回復系能力者の原型だって言われた。」
「何だそれは?俺は魔法も魔術も使えないぞ?」
「うん。普通の方法だと純度が高すぎて使えないんだって。」
「純度が高すぎる??」
「俺も良くわからなかった。今度、魔術本部の誰かがウィルに会いに来るか、俺がウィルを向こうに連れて行く事になったから、もしかしたらリリとムクに会う事になるかも。」
「ふ~ん?良くわからないな?」
「うん。俺も良くわからない。とにかく食べよう?」
「わかった。」
俺たちはテーブルについて食事をした。
一昨日の夜に話した馬術指導員の続きと、向こうで決まった事等を簡単に話した。
「とりあえず、ウィルの目は隠した方がいいって。」
「隠すって言われても、ガラスは置いてきたからな……。」
「これを使えばいいって渡された。」
俺はポケットからブローチを出して、ウィルに渡した。
「これは??」
「目の色を変えるブローチだって。その横のダイヤル回して?」
「これ?」
ウィルがダイヤルを回すと、ブローチの石の色が変わった。
「そう、それで色を選んで身に付けると、目の色が変えられるんだって。前の色って……そんな感じの色だったよね?」
「そうだな……。どう?変わった?」
「あ!!前のウィルだ!!」
「前の俺って何だよ?鏡見てくる。」
ウィルはそう言って洗面台に向かった。
俺も後ろからついていく。
ウィルが鏡を見て、おおっ!と唸った。
鏡越しに見つめ合う。
「何か今見ると、その色似合わないね。」
「酷くないか?一番一般的な色だろ?」
「でもウィルには似合わない。」
俺はそう言って、後ろから抱き締めるように、ブローチを外した。
ウィルの目が、深い紺色に変わる。
「この方が綺麗。」
鏡越しにウィルを見つめる。
そして抱き締める腕に力を込める。
ウィルの目が熱に潤んでとても綺麗だ。
「……サーク、駄目だ。」
「どうして?」
「これから仕事だろ?」
「……遅れていく。」
「駄目。減俸になった癖に。」
「それは言わないでよ~。」
いい雰囲気だと思ったのに~。
ガックリ項垂れた俺をウィルがくすくす笑った。
そして自然な流れでキスをした。
「……今度、休みはいつ?」
「4日後。」
「なら、それまでいい子にしないとな、サーク?」
「いい子にしてたら、ご褒美くれる?」
「うん……。」
そしてまた唇が重なる。
強請るように何度も口づけようとすると、手で口を塞がれた。
も~、もっとイチャイチャしたいのに~。
「あ~。仕事、行きたくない~!」
「頑張って稼いでくれ。俺、今、無職だから、サークに稼いでもらわないとな?」
「ううう~。わかった、ウィルの為に頑張る~。」
項垂れる俺の頭を、ウィルが笑いながら撫でてくれた。
「お帰りなさい。」
「ただいま、リリ、ムク。」
話し合いを終え、家に帰るととても美味しそうな匂いがした。
とても幸せな事だ。
「サーク、向こうにいっちゃう?」
「ご飯、作ったよ?」
リリとムクが駆け寄ってくる。
そしてぎゅっと俺の服の裾を掴んで聞いてきた。
ヤバい……うちの子、マジ天使……。
ここでしか一緒にいられないのが残念で仕方ない。
「今日は行かないよ?ここにいるよ?」
「本当?」
「明日もいる?」
「うん。でも約束があるから、お昼には帰るよ。」
「わかった。」
「リリ達、ご飯作って持たせてあげる。」
「何人分作る?」
「ん~。二人分頼めるかな?後、シルクにお土産でクッキーか何かあったら嬉しいな。あいつ、凄く頑張ってくれたんだ。」
「いいよ、わかった。」
「パイとケーキなら、シルク、どっちが好き?」
「え~?どっちだろう?そういえば、あいつが甘いもの食べてるの、あんまり見たことないかも??」
そう言われて、シルクが何が好きか知らないなと思う。
以前のシルクの生活は、食べ物の好みに拘っていられるものじゃなかった。
だから食べれるものなら何でも喜んで食べる。
あの細っこい体のどこに入るんだろうってくらい食べる時は食べる。
あと意外と飲むし酒に強い。
これも俺は知らなかった事だ。
俺が飲む習慣かないので、あいつがギルと付き合うようになってから初めて知った事だった。
酒飲みだからもしかすると、甘いものより辛いものが好きなのかもしれない。
かと言って甘いものが好きじゃないとも限らない。
「……う~ん……どうなのかな??とりあえず体を動かすから、腹に貯まるものの方が喜ぶかなぁ~??」
唸りながら反省する。
アイツの主なのに、シルクの事、何も知らないんだな、俺は。
そう思ったら何か落ち込んできてしまった。
「なら、キッシュにしよう?リリ。」
「うん。クッキーもつけてあげよう?ムク。」
そんな俺に気を使ったのか、二人はそう言って笑ってくれた。
俺はふたりを抱き上げ、ぎゅっとハグする。
「ありがとう。ふたりとも。シルク、絶対喜ぶよ。」
ふわふわな小さな手がそれに応えて、俺を抱き締め返してくれる。
凄く幸せな気持ちになった。
ウィルの隣とはまた違った安心感がそこにあった。
「さ、じゃあご飯にしよう。今日は何を作ってくれたのかな?」
「お魚!お魚焼いたの!!」
「あとね、コーンのスープ!!」
「美味しそうだね!」
笑い合って準備をし、テーブルにつく。
そうやって、久しぶりの森の町の夜は更けていった。
「ただいま~って、あれ??」
俺がリリとムクのご飯を持って、研究室兼家に帰ると、何故かウィルはいなかった。
どこに行ったんだろう?
そんな事を思ってると、一階の玄関が開く音がした。
俺は下を覗き込んで声をかけた。
「お帰り、ウィル。どこ行ってたの?」
「あ、サーク。お帰り。銭湯に行ってきた。この時間は空いてるからゆっくりできるしね。」
そう言って上がってきたウィルの髪は濡れていて、顔もほんのり色づいてて、そんでもって、石鹸の香りがして……。
ウィルがちらりと俺を見て顔を背けた。
「……サーク、そんな顔されても困る。」
「は!?え!?ごめん??」
「自覚ないよな、サークって。」
「へ!?何!?」
「何でもない。」
ウィルはそう言うとすたすたとベッドまで行き、俯いてタオルで髪をごしごし拭いていた。
心なし顔が赤く見えるのは、多分、風呂上がりだからだろう。
「……何か、いい匂いがする。」
「あ、昼飯まだだよな?」
「ああ。」
「リリとムクが持たせてくれたんだ。食べよう?」
「噂のサークの天使たち?」
「そ!めちゃくちゃ可愛いの!!」
「見た目はうさぎなんだよな?」
「そう、絵本で見るみたいな、うさぎが二足歩行してるんだ。」
「見てみたいな~。」
「見るかもな。」
「どうやって??」
「ウィル、ウィルのその目、何か凄いものらしいよ?」
「夜の宝石が?確かに珍しいものだろうけど?」
「回復系能力者の原型だって言われた。」
「何だそれは?俺は魔法も魔術も使えないぞ?」
「うん。普通の方法だと純度が高すぎて使えないんだって。」
「純度が高すぎる??」
「俺も良くわからなかった。今度、魔術本部の誰かがウィルに会いに来るか、俺がウィルを向こうに連れて行く事になったから、もしかしたらリリとムクに会う事になるかも。」
「ふ~ん?良くわからないな?」
「うん。俺も良くわからない。とにかく食べよう?」
「わかった。」
俺たちはテーブルについて食事をした。
一昨日の夜に話した馬術指導員の続きと、向こうで決まった事等を簡単に話した。
「とりあえず、ウィルの目は隠した方がいいって。」
「隠すって言われても、ガラスは置いてきたからな……。」
「これを使えばいいって渡された。」
俺はポケットからブローチを出して、ウィルに渡した。
「これは??」
「目の色を変えるブローチだって。その横のダイヤル回して?」
「これ?」
ウィルがダイヤルを回すと、ブローチの石の色が変わった。
「そう、それで色を選んで身に付けると、目の色が変えられるんだって。前の色って……そんな感じの色だったよね?」
「そうだな……。どう?変わった?」
「あ!!前のウィルだ!!」
「前の俺って何だよ?鏡見てくる。」
ウィルはそう言って洗面台に向かった。
俺も後ろからついていく。
ウィルが鏡を見て、おおっ!と唸った。
鏡越しに見つめ合う。
「何か今見ると、その色似合わないね。」
「酷くないか?一番一般的な色だろ?」
「でもウィルには似合わない。」
俺はそう言って、後ろから抱き締めるように、ブローチを外した。
ウィルの目が、深い紺色に変わる。
「この方が綺麗。」
鏡越しにウィルを見つめる。
そして抱き締める腕に力を込める。
ウィルの目が熱に潤んでとても綺麗だ。
「……サーク、駄目だ。」
「どうして?」
「これから仕事だろ?」
「……遅れていく。」
「駄目。減俸になった癖に。」
「それは言わないでよ~。」
いい雰囲気だと思ったのに~。
ガックリ項垂れた俺をウィルがくすくす笑った。
そして自然な流れでキスをした。
「……今度、休みはいつ?」
「4日後。」
「なら、それまでいい子にしないとな、サーク?」
「いい子にしてたら、ご褒美くれる?」
「うん……。」
そしてまた唇が重なる。
強請るように何度も口づけようとすると、手で口を塞がれた。
も~、もっとイチャイチャしたいのに~。
「あ~。仕事、行きたくない~!」
「頑張って稼いでくれ。俺、今、無職だから、サークに稼いでもらわないとな?」
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項垂れる俺の頭を、ウィルが笑いながら撫でてくれた。
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