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第六章「副隊長編」
決戦は休日前
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「大丈夫か?」
隣に立つギルが、そう声をかけてきた。
俺はお手上げのポーズをとる。
ギルの目がおいおいと呆れた。
「まぁ、足掻けるだけ足掻いてやろうじゃんか?」
「そうだな。」
まぁ出来る限りの準備はした。
後は出たとこ勝負だ。
後ろにいるシルクが少し青い顔をしている。
俺は頬をペチペチ叩いてやった。
「シルク、大丈夫か?」
「ん~?何か、ここ好きじゃないかも。」
「蛇の巣だからな。気を抜くと食われるぞ?」
そんなシルクにギルがスッと寄ると、労うように髪に口付ける。
それに対してシルクがにへ~と笑った。
全くお熱い事で……。
こんなところで見せつけてくんなっての。
俺は肩をすぼめてため息をつく。
「さすがはナイトってとこか?」
「何の事だ?」
俺はニヤッと笑ってギルに言うが、当人は涼しい顔をしてすっとぼけていた。
恋人からお姫様扱いを受けたシルクは元気を取り戻しニコニコしている。
蛇の巣。
俺は苦手な政治の臭いがするここをそう感じとっていた。
良くも悪くも話題の新参者として登城した今、直接何か言われたりされたりはしないが、どこかから好奇の目や蔑むような睨みが向けられている。
俺たちは王宮に来ていた。
とうとう、王宮会議の日が来たのだ。
食うか食われるか……。
決戦の幕が上がろうとしていた。
この無駄に長くてデカイ机は、意味があるのだろうか?
部屋に入ってすぐ頭に浮かんだ感想はそれだった。
「ライオネル第三王子殿下直属警護部隊隊長、ギルバート・ドレ・グラント並びに警護部隊所属特殊魔術師、ハクマ・サーク。ただ今、参りました。」
ギルがそう言って敬を示したので、同じく敬を示す。
つか、何だその特殊魔術師って?
俺、聞いてないぞ?
頭を下げながらちらりとギルを見るが、澄ました顔で礼を尽くしている。
「うむ。して、後ろの者は?」
俺達の後ろではシルクは深々と頭を下げていた。
白い髪に褐色の肌をしていて、いかにも異国の人と言った感じなので目を引いたのだろう。
ギルが言った。
「ハクマ・サークの従者であり、我が隊の武術指導者をしているシルクと申す者です。ハクマ・サークの要望、並びに一度お目通しした方が良いかとの判断から同行させました。よろしいでしょうか?」
場が小さくざわめいた。
あれが……のような声が聞こえる。
心象は半々だな。
もっと大柄な男を想像していたのだろう。
まさかこんな異国の美人が噂の武術指導者だとは誰も思わないだろうし。
「構わん。座ってくれ。」
俺はその末席にギルと並んで座り、シルクは可哀想だが、後ろに立つ形となった。
まだ何の立場もない従者に過ぎないのだから、仕方がないのだけれども。
果てしなく遠くに、国王とライオネル殿下。
その回りを一癖も二癖もありそうな重鎮の家臣達が囲んでいる。
遠すぎて豆みたいだ。
こんなに離れてて、同じテーブルにつく意味があるのだろうか?
俺は端から面倒臭いと思い始めていた。
「ハクマ・サーク。そなたの事は、警護部隊に所属して以来、色々と話は聞いている。いくつか尋ねたい件があるのだが、いいかね?」
議会進行役っぽい、口髭の四角い感じのオッサンが言った。
「承知致しました。」
俺は小さく頭を下げる。
さて、どこから突っ込んでくるのやら。
「そなた、2つの魔術を杖なしで同時に使い、また、血の魔術なるものを使うと聞いたが、本当か?」
ずいぶん初期のところから聞いてくるんだな?
向こうもまずは様子見って事か。
「魔術本部からお話が行っているかと思いますが、事実でございます。私は杖なしで、2つの魔術を同時に使えます。また、血の魔術を使用できるのも事実でございます。」
一応、魔術本部の名を出して牽制しておく。
俺はここの所属だけではないから、思い通りには出来ないって意味だ。
丸め込まれる訳にはいかない。
ほら、渋い顔をした奴が何人もいる。
「魔術本部の方では、どんな役職にある?」
「はい。今現在は役職にはついておりません。ですがその準備は整ったと聞いております。近々、その命を受ける事になります。」
「誠か?」
「はい。」
先に役職を与えようったってそうはいかない。
魔術本部の面々はああ見えて、数々の修羅場を潜り抜けてきた猛者だ。
この程度の手が通用すると思っているなら、呆れたものだ。
ますます彼らが渋い顔をする。
魔術本部に喧嘩を売るのは、そりゃ避けたいもんな?
あそこの一声で、魔術師はそっほを向くだろうから。
「では次に、そなたの従者が演舞を使えるというのは本当か?」
俺が駄目ならシルクが欲しいか。
考えが見え見えで笑ってしまいそうになる。
だがやらないよ?
俺がどれだけ苦労して探し出し、連れてきたと思ってるんだよ?
そしてシルクと俺が、どれだけの覚悟を決めて一緒にいると思ってるんだ?
それを掻っ攫おうなんて甘いんだよ。
「本当でございます。シルクは砂漠の遊牧民の出身で、身を隠していたカイナの民を匿っていた時期があり、その時に習ったと聞いています。」
「……カイナの村の出身ではないのか?」
「違います。彼は遊牧民の出身です。西の砂漠の国を出る際、身元証明もありました。それを元に王国で移民登録を行いました。記録が残っているはずです。」
仮証明を出したのでは疑われるが、移民登録の方なら国の正式書類だ。
わざわざ、こちらの持っている証明まで見せろとは言われない。
「……では、正式な継承者ではないのだな?」
「はい。カイナの村はすでに滅んでいます。それは私が行って確かめました。その中でやっと、正式な継承者ではないものの、使い手である彼を見つけました。」
「何故、演舞の使い手を探したのだ?」
「はい。私の魔術の使い方は独特です。その為、自分に合った魔力の鍛練が必要でした。魔術本部で調べ上げた結果、演舞の気の使い方を魔力で行う方法を考え付きました。カイナの村が滅んでいることはわかっていましたが、何か演舞の口伝等がないかと砂漠の国を訪ね、彼と出会い、従者として連れて参りました。」
話が一旦途切れ、向こうが何か話している。
少し畳み掛けるか。
俺はシルクをちらりと見た。
シルクは俺と目を合わせ、ゆっくりと瞬きした。
「恐れながら、発言をお許し下さい。」
俺がそう声をかけると、ざわめきが止まる。
四角いオッサンが咳払いをして言った。
「発言を認めよう。」
「もし、お許し頂けましたら、少しシルクを見て頂ければと思います。」
俺の提案に、少しのざわめきが起こる。
そして許可が降りた。
舞台は窓側の空きスペースだ。
俺は許しを得てから立ち上がった。
「シルク、出番だ。」
「いいよ。何をすればいい?」
「いつも通りだ。踊れ。武術に演舞を混ぜた感じで。あいつらに可愛がられたくないなら、色気は出すな。」
「出さないよ。あんなのに囲われるなんて死んでも嫌だ。」
「だが、魅了しろ。出来るな?」
「誰に言ってんの?オーナー?」
シルクがニヤッと笑った。
その言葉に俺もニヤッと笑った。
「木刀の使用の許可を頂けますか?」
俺は彼らを振り返り、許可を求めた。
少しの間の後、返答が返る。
「許可する。」
俺は帯剣の代わりに持ってきた木刀をシルクに渡した。
「ぶちのめせ。お前の武器で。」
「仰せのままに、我が主。」
シルクが恭しく俺に例を尽くした。
隣に立つギルが、そう声をかけてきた。
俺はお手上げのポーズをとる。
ギルの目がおいおいと呆れた。
「まぁ、足掻けるだけ足掻いてやろうじゃんか?」
「そうだな。」
まぁ出来る限りの準備はした。
後は出たとこ勝負だ。
後ろにいるシルクが少し青い顔をしている。
俺は頬をペチペチ叩いてやった。
「シルク、大丈夫か?」
「ん~?何か、ここ好きじゃないかも。」
「蛇の巣だからな。気を抜くと食われるぞ?」
そんなシルクにギルがスッと寄ると、労うように髪に口付ける。
それに対してシルクがにへ~と笑った。
全くお熱い事で……。
こんなところで見せつけてくんなっての。
俺は肩をすぼめてため息をつく。
「さすがはナイトってとこか?」
「何の事だ?」
俺はニヤッと笑ってギルに言うが、当人は涼しい顔をしてすっとぼけていた。
恋人からお姫様扱いを受けたシルクは元気を取り戻しニコニコしている。
蛇の巣。
俺は苦手な政治の臭いがするここをそう感じとっていた。
良くも悪くも話題の新参者として登城した今、直接何か言われたりされたりはしないが、どこかから好奇の目や蔑むような睨みが向けられている。
俺たちは王宮に来ていた。
とうとう、王宮会議の日が来たのだ。
食うか食われるか……。
決戦の幕が上がろうとしていた。
この無駄に長くてデカイ机は、意味があるのだろうか?
部屋に入ってすぐ頭に浮かんだ感想はそれだった。
「ライオネル第三王子殿下直属警護部隊隊長、ギルバート・ドレ・グラント並びに警護部隊所属特殊魔術師、ハクマ・サーク。ただ今、参りました。」
ギルがそう言って敬を示したので、同じく敬を示す。
つか、何だその特殊魔術師って?
俺、聞いてないぞ?
頭を下げながらちらりとギルを見るが、澄ました顔で礼を尽くしている。
「うむ。して、後ろの者は?」
俺達の後ろではシルクは深々と頭を下げていた。
白い髪に褐色の肌をしていて、いかにも異国の人と言った感じなので目を引いたのだろう。
ギルが言った。
「ハクマ・サークの従者であり、我が隊の武術指導者をしているシルクと申す者です。ハクマ・サークの要望、並びに一度お目通しした方が良いかとの判断から同行させました。よろしいでしょうか?」
場が小さくざわめいた。
あれが……のような声が聞こえる。
心象は半々だな。
もっと大柄な男を想像していたのだろう。
まさかこんな異国の美人が噂の武術指導者だとは誰も思わないだろうし。
「構わん。座ってくれ。」
俺はその末席にギルと並んで座り、シルクは可哀想だが、後ろに立つ形となった。
まだ何の立場もない従者に過ぎないのだから、仕方がないのだけれども。
果てしなく遠くに、国王とライオネル殿下。
その回りを一癖も二癖もありそうな重鎮の家臣達が囲んでいる。
遠すぎて豆みたいだ。
こんなに離れてて、同じテーブルにつく意味があるのだろうか?
俺は端から面倒臭いと思い始めていた。
「ハクマ・サーク。そなたの事は、警護部隊に所属して以来、色々と話は聞いている。いくつか尋ねたい件があるのだが、いいかね?」
議会進行役っぽい、口髭の四角い感じのオッサンが言った。
「承知致しました。」
俺は小さく頭を下げる。
さて、どこから突っ込んでくるのやら。
「そなた、2つの魔術を杖なしで同時に使い、また、血の魔術なるものを使うと聞いたが、本当か?」
ずいぶん初期のところから聞いてくるんだな?
向こうもまずは様子見って事か。
「魔術本部からお話が行っているかと思いますが、事実でございます。私は杖なしで、2つの魔術を同時に使えます。また、血の魔術を使用できるのも事実でございます。」
一応、魔術本部の名を出して牽制しておく。
俺はここの所属だけではないから、思い通りには出来ないって意味だ。
丸め込まれる訳にはいかない。
ほら、渋い顔をした奴が何人もいる。
「魔術本部の方では、どんな役職にある?」
「はい。今現在は役職にはついておりません。ですがその準備は整ったと聞いております。近々、その命を受ける事になります。」
「誠か?」
「はい。」
先に役職を与えようったってそうはいかない。
魔術本部の面々はああ見えて、数々の修羅場を潜り抜けてきた猛者だ。
この程度の手が通用すると思っているなら、呆れたものだ。
ますます彼らが渋い顔をする。
魔術本部に喧嘩を売るのは、そりゃ避けたいもんな?
あそこの一声で、魔術師はそっほを向くだろうから。
「では次に、そなたの従者が演舞を使えるというのは本当か?」
俺が駄目ならシルクが欲しいか。
考えが見え見えで笑ってしまいそうになる。
だがやらないよ?
俺がどれだけ苦労して探し出し、連れてきたと思ってるんだよ?
そしてシルクと俺が、どれだけの覚悟を決めて一緒にいると思ってるんだ?
それを掻っ攫おうなんて甘いんだよ。
「本当でございます。シルクは砂漠の遊牧民の出身で、身を隠していたカイナの民を匿っていた時期があり、その時に習ったと聞いています。」
「……カイナの村の出身ではないのか?」
「違います。彼は遊牧民の出身です。西の砂漠の国を出る際、身元証明もありました。それを元に王国で移民登録を行いました。記録が残っているはずです。」
仮証明を出したのでは疑われるが、移民登録の方なら国の正式書類だ。
わざわざ、こちらの持っている証明まで見せろとは言われない。
「……では、正式な継承者ではないのだな?」
「はい。カイナの村はすでに滅んでいます。それは私が行って確かめました。その中でやっと、正式な継承者ではないものの、使い手である彼を見つけました。」
「何故、演舞の使い手を探したのだ?」
「はい。私の魔術の使い方は独特です。その為、自分に合った魔力の鍛練が必要でした。魔術本部で調べ上げた結果、演舞の気の使い方を魔力で行う方法を考え付きました。カイナの村が滅んでいることはわかっていましたが、何か演舞の口伝等がないかと砂漠の国を訪ね、彼と出会い、従者として連れて参りました。」
話が一旦途切れ、向こうが何か話している。
少し畳み掛けるか。
俺はシルクをちらりと見た。
シルクは俺と目を合わせ、ゆっくりと瞬きした。
「恐れながら、発言をお許し下さい。」
俺がそう声をかけると、ざわめきが止まる。
四角いオッサンが咳払いをして言った。
「発言を認めよう。」
「もし、お許し頂けましたら、少しシルクを見て頂ければと思います。」
俺の提案に、少しのざわめきが起こる。
そして許可が降りた。
舞台は窓側の空きスペースだ。
俺は許しを得てから立ち上がった。
「シルク、出番だ。」
「いいよ。何をすればいい?」
「いつも通りだ。踊れ。武術に演舞を混ぜた感じで。あいつらに可愛がられたくないなら、色気は出すな。」
「出さないよ。あんなのに囲われるなんて死んでも嫌だ。」
「だが、魅了しろ。出来るな?」
「誰に言ってんの?オーナー?」
シルクがニヤッと笑った。
その言葉に俺もニヤッと笑った。
「木刀の使用の許可を頂けますか?」
俺は彼らを振り返り、許可を求めた。
少しの間の後、返答が返る。
「許可する。」
俺は帯剣の代わりに持ってきた木刀をシルクに渡した。
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