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第八章②「敵地潜入」
真の自由の意味
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「シルク?それはどういう意味だ?」
俺はもう一度、ゆっくり問うた。
シルクは一瞬ビクッとした後、目元を赤くしてキッと俺を見る。
「皆の総意だよっ!!いざとなったら!裁判なんかどうでもいいってっ!!主を……主を何かに捉えさせるよりは!その方がいいって……っ!!」
俺は少し混乱した。
裁判でひっくり返すまでの時間、捕まったらもうどうにもならないから一旦逃げろと言われたのだ。
状況から考えて、確かにそれが一番いいと俺も思ったからそうした。
そうしながら、何とか無罪と陥れた連中に反撃しようと動いていたのだ。
なのに、何だって??
「……はじめは、主が逃げないで何とかする方法も考えたよ……。ギルの実家とかに匿ってもらうとか、魔術本部にいてもらうとかさ。主は魔術本部にも籍があるしきっと魔術本部の人達も協力してくれるからって……。でもそうしたら絶対、主、何かしらするから!おとなしく待っててなんかくれないから!それだったら誰かつけて自分達で送り出そうって……。そうすれば、誰かしらの目は届くところにいてくれるから……いつもみたいに、どこで何してるのかわからないまま、危険な目にあったりしてどっか行っちゃったりしないから……。」
シルクは少しぐずぐず泣きかけながらそう言った。
物凄く真剣に話をしているのはわかる。
わかるのだが、ちょっと皆の中の俺のイメージって物凄くないか?
俺ってそんなに常に居場所がわからないような風来坊だと思われてるのか……。
酷く勝手な自由人みたいに聞こえるんだが……?
そこまで酷いかと自分のそれまでの行動を振り返り……反省した。
確かにそう思われても仕方がないのかもしれない……。
今後はもっと仲間を大事になければ……。
思わず変な事を考えてしまった俺に、シルクは話を続けた。
「……裁判は勝つつもりだよ?でもどんな事が起こるかわからない。王宮の中さ、クーデタが起きてもおかしくない感じだったんだよ……。」
その言葉に俺は事の重さを改めて知った。
皇太子である第一王子と突然王位継承を意識し始めた第二王子との亀裂が、ライオネル殿下と俺の問題を中心に繰り広げられているのは聞いていた。
だがそれは発端に過ぎなかったのだろう。
遅かれ早かれ、画策されたていた事なのだ。
「……そこまで酷かったのか。」
「黙っててごめん。でもそれを知ると、主は絶対無理をするから言えなかった……。」
そして第二王子派は、政権を得る為にクーデタも辞さない覚悟なのだ。
突然、そんな派閥争いが出てきたのでおかしいなとは思った。
だがまだ表に現れたばかりの抗争だ。
今後激化する事は考えられても、いきなりそこまでの勢いがあるとは思っていなかった。
だが、これがグレゴリウス皇太子の息のかかった事なら当然だ。
あの男が政権内部から中央王国を支配しようと考えているのなら、新しい派閥が周囲に警戒される前に一気に現政権を叩いて乗っ取ってしまうのが一番いい。
そしてそれは、逃してしまったライオネル殿下を手に入れる唯一の方法でもある。
政権交代が起きて南親派が政権を握れば、対立派閥にいたライオネル殿下に何らかのペナルティを課し言動を封じて南に輿入れさせる事が出来きるだろう。
いや、そこまで来たら、輿入れでなくても可能だ。
戦犯として南の国に引き渡す事だって出来る。
俺は背筋が寒くなった。
中央王国は、俺が思っていたよりもずっと待った無しの状況なのだ。
「だから……主を王国内に残しておけなかったし、かと言って勝手に王国の為に色々動いて危険に晒す訳には行かなかった。……主は元々、中央王国の人じゃない。だから……中央王国の運命に巻き込ませる訳には行かないって……。故郷の東の国にも帰れるようになったし、魔術本部もある。冒険者としても生きていける。どんなに縛ったって抜け出して勝手にやるような主だけど、そんな主が皆、大好きなんだ……。だから……最悪の事態になっても大丈夫なように……主は早めに自由にしてあげようって……。」
「話はわかった。だが、俺はそんな事は……。」
「わかってるよ!それに皆、諦めてないよ!でも!裁判自体が正常に行われるかわからなかったんだよ!だってそうだろ?!俺達、頑張ってたんだよ!なのに勝手に裁判は行われて主の戦犯は確定して!挙句、すぐに捕縛命令が出たんだよ!主本人の弁論もなく!それがどういう事か!俺より主の方が理解できるだろっ?!」
絶句した。
よもやここまで自体が深刻だとは思っていなかった。
そしてどれだけの覚悟で皆が俺を逃したのか、はっきりわかった。
俺を王宮に近づけさせなかったのは、向こうの罠に俺をはめない為だけじゃなかった。
王宮内の状況を俺に気付かせない為だったのだ。
知れば俺が動くのが目に見えていたから……。
それほど以前からあいつらは俺を逃がすつもりで動いていたのだ。
どれだけ聞いても、誰も口を割らなかった訳だ。
あいつらにはそれだけの覚悟があったのだから……。
「……だからお願い。皆の気持ちを無駄にしないで……?ここは危ないよ……。俺だってできる限り主と一緒に皆の所に帰りたいよ?だから主が多少のむちゃをしても付き合ってきたし、これからもそうする。……でももう、ここにいたら駄目だ……。証拠も情報もそんなものどうでもいいんだよ……。主が無事でいてくれなきゃ、何の意味がないんだよ……。」
シルクはとうとう涙を流した。
俺はゆっくりと近づき、シルクをハグする。
シルクにとって俺は、誓いを立てた主というだけでなく、仲間の願いを背負って共にいる相手でもあるのだ。
自分勝手にしてきたツケが帰ってきたな、と思う。
そしてそのツケの為に、かけがえのない仲間を犠牲にしてしまうところだった。
『自由というのは、不自由の中にあるものだよ、ハーマン。』
何故かエズラ氏の言葉が頭に浮かんだ。
あの人はそんなに好きではないのだが、その言葉は不思議と説得力を持って俺の中に残ったようだ。
「……シルク。自由は不自由の中にあるんだよ。」
「え??」
「俺は無秩序と言う名の自由の中よりも、大事な仲間に縛られた不自由の中にある、真の自由の中にいたいよ。」
「主?何を言っているの??」
「人は誰でも、何かを持っていなければ、何かに齧りついていなければ生きていくのは難しいんだそうだ。」
「何それ??」
「お前が知らないって事は、何かの本とかをなぞっていたんじゃ無かったんだな……。」
あの時言われた言葉の意味が、俺にはやっと少しだけわかった。
縛りのない自由は無秩序であるように、縛りを持たない人間は意味を持つことが出来ない。
だから人はその意味を求めて、何かに齧り付き、意味を得て持つのだ。
「俺は、皆がいたから自由でいられたんだ。皆がいなくなったら、俺は自由じゃないよ……。」
「主……。」
「皆が俺が無事じゃなきゃ覚悟を決めた意味がないのと同じように、俺は皆がいてくれなかったら自由でいる意味がないんだ。」
「でも……っ!!」
「俺には……皆が必要なんだよ……シルク。俺が俺である為に、俺が俺として生きている為に。」
「主……。」
「俺には……皆が必要なんだ。自由でいる為に……。」
言葉にしてみて、それはひどくしっくり自分に馴染んだ。
そうだ、俺が自分勝手でいられるのは、皆がいるからだ。
皆がいるから、自由気ままに自分勝手でいられたんだ。
皆がいなかったら、それはただの傍若無人なのだ。
皆が呆れて、時には叱りとばして、笑い飛ばしてくれるから、俺は自由でいられたんだ。
皆という縛りがなくなったら、それはもう自由じゃない。
「シルク、頼みがある。」
俺はまっすぐにシルクの目を見つめた。
もう迷わなかった。
「ここで俺ともう少し踏ん張って欲しい。今はまだ、たとえ裁判が正常に開かれても、俺達を陥れた連中を一掃できるほどの抗力を得られていない。ここで間違いなく一掃しなかったら、中央王国に確実な未来はない。それは王国の仲間の未来がないって事だ。俺は皆が必要だ。だから頼む。危険なのは承知の上だ。それでも、限界までできる限りの事がしたい。俺には、皆が必要なんだよ……。」
じっと目を見つめながら、俺はシルクに訴えた。
俺の従者だからとか片腕だからとかではなく、仲間の一人であるシルクに俺は訴えかけた。
シルクの目は揺れていた。
俺を逃がす為に多くの犠牲を覚悟した仲間の想いと、仲間を必要とする俺の想い、どちらもわかるから答えが出せないのだ。
「ここにいるのは俺達だけだ。俺達がここから確実な反撃材料を持って帰らなかったら、あいつらに未来はないと思う。だから頼む。もう少しだけ一緒に頑張ってくれ。頼む。」
俺はじっとシルクの目を見つめていた。
シルクもまた、俺の目をまっすぐ見返していた。
どれくらい時間が経っただろうか?
シルクがふぅ……と息を吐き出した。
一度、目を伏せ、そして俺をまっすぐ見つめた。
意志のある目だった。
「……わかった。俺は主に従う。……でも、本当にヤバくなったら、また気絶させて担いででも連れて逃げるから覚悟してよ?」
そう言ってニッと笑った。
俺はもう一度、ゆっくり問うた。
シルクは一瞬ビクッとした後、目元を赤くしてキッと俺を見る。
「皆の総意だよっ!!いざとなったら!裁判なんかどうでもいいってっ!!主を……主を何かに捉えさせるよりは!その方がいいって……っ!!」
俺は少し混乱した。
裁判でひっくり返すまでの時間、捕まったらもうどうにもならないから一旦逃げろと言われたのだ。
状況から考えて、確かにそれが一番いいと俺も思ったからそうした。
そうしながら、何とか無罪と陥れた連中に反撃しようと動いていたのだ。
なのに、何だって??
「……はじめは、主が逃げないで何とかする方法も考えたよ……。ギルの実家とかに匿ってもらうとか、魔術本部にいてもらうとかさ。主は魔術本部にも籍があるしきっと魔術本部の人達も協力してくれるからって……。でもそうしたら絶対、主、何かしらするから!おとなしく待っててなんかくれないから!それだったら誰かつけて自分達で送り出そうって……。そうすれば、誰かしらの目は届くところにいてくれるから……いつもみたいに、どこで何してるのかわからないまま、危険な目にあったりしてどっか行っちゃったりしないから……。」
シルクは少しぐずぐず泣きかけながらそう言った。
物凄く真剣に話をしているのはわかる。
わかるのだが、ちょっと皆の中の俺のイメージって物凄くないか?
俺ってそんなに常に居場所がわからないような風来坊だと思われてるのか……。
酷く勝手な自由人みたいに聞こえるんだが……?
そこまで酷いかと自分のそれまでの行動を振り返り……反省した。
確かにそう思われても仕方がないのかもしれない……。
今後はもっと仲間を大事になければ……。
思わず変な事を考えてしまった俺に、シルクは話を続けた。
「……裁判は勝つつもりだよ?でもどんな事が起こるかわからない。王宮の中さ、クーデタが起きてもおかしくない感じだったんだよ……。」
その言葉に俺は事の重さを改めて知った。
皇太子である第一王子と突然王位継承を意識し始めた第二王子との亀裂が、ライオネル殿下と俺の問題を中心に繰り広げられているのは聞いていた。
だがそれは発端に過ぎなかったのだろう。
遅かれ早かれ、画策されたていた事なのだ。
「……そこまで酷かったのか。」
「黙っててごめん。でもそれを知ると、主は絶対無理をするから言えなかった……。」
そして第二王子派は、政権を得る為にクーデタも辞さない覚悟なのだ。
突然、そんな派閥争いが出てきたのでおかしいなとは思った。
だがまだ表に現れたばかりの抗争だ。
今後激化する事は考えられても、いきなりそこまでの勢いがあるとは思っていなかった。
だが、これがグレゴリウス皇太子の息のかかった事なら当然だ。
あの男が政権内部から中央王国を支配しようと考えているのなら、新しい派閥が周囲に警戒される前に一気に現政権を叩いて乗っ取ってしまうのが一番いい。
そしてそれは、逃してしまったライオネル殿下を手に入れる唯一の方法でもある。
政権交代が起きて南親派が政権を握れば、対立派閥にいたライオネル殿下に何らかのペナルティを課し言動を封じて南に輿入れさせる事が出来きるだろう。
いや、そこまで来たら、輿入れでなくても可能だ。
戦犯として南の国に引き渡す事だって出来る。
俺は背筋が寒くなった。
中央王国は、俺が思っていたよりもずっと待った無しの状況なのだ。
「だから……主を王国内に残しておけなかったし、かと言って勝手に王国の為に色々動いて危険に晒す訳には行かなかった。……主は元々、中央王国の人じゃない。だから……中央王国の運命に巻き込ませる訳には行かないって……。故郷の東の国にも帰れるようになったし、魔術本部もある。冒険者としても生きていける。どんなに縛ったって抜け出して勝手にやるような主だけど、そんな主が皆、大好きなんだ……。だから……最悪の事態になっても大丈夫なように……主は早めに自由にしてあげようって……。」
「話はわかった。だが、俺はそんな事は……。」
「わかってるよ!それに皆、諦めてないよ!でも!裁判自体が正常に行われるかわからなかったんだよ!だってそうだろ?!俺達、頑張ってたんだよ!なのに勝手に裁判は行われて主の戦犯は確定して!挙句、すぐに捕縛命令が出たんだよ!主本人の弁論もなく!それがどういう事か!俺より主の方が理解できるだろっ?!」
絶句した。
よもやここまで自体が深刻だとは思っていなかった。
そしてどれだけの覚悟で皆が俺を逃したのか、はっきりわかった。
俺を王宮に近づけさせなかったのは、向こうの罠に俺をはめない為だけじゃなかった。
王宮内の状況を俺に気付かせない為だったのだ。
知れば俺が動くのが目に見えていたから……。
それほど以前からあいつらは俺を逃がすつもりで動いていたのだ。
どれだけ聞いても、誰も口を割らなかった訳だ。
あいつらにはそれだけの覚悟があったのだから……。
「……だからお願い。皆の気持ちを無駄にしないで……?ここは危ないよ……。俺だってできる限り主と一緒に皆の所に帰りたいよ?だから主が多少のむちゃをしても付き合ってきたし、これからもそうする。……でももう、ここにいたら駄目だ……。証拠も情報もそんなものどうでもいいんだよ……。主が無事でいてくれなきゃ、何の意味がないんだよ……。」
シルクはとうとう涙を流した。
俺はゆっくりと近づき、シルクをハグする。
シルクにとって俺は、誓いを立てた主というだけでなく、仲間の願いを背負って共にいる相手でもあるのだ。
自分勝手にしてきたツケが帰ってきたな、と思う。
そしてそのツケの為に、かけがえのない仲間を犠牲にしてしまうところだった。
『自由というのは、不自由の中にあるものだよ、ハーマン。』
何故かエズラ氏の言葉が頭に浮かんだ。
あの人はそんなに好きではないのだが、その言葉は不思議と説得力を持って俺の中に残ったようだ。
「……シルク。自由は不自由の中にあるんだよ。」
「え??」
「俺は無秩序と言う名の自由の中よりも、大事な仲間に縛られた不自由の中にある、真の自由の中にいたいよ。」
「主?何を言っているの??」
「人は誰でも、何かを持っていなければ、何かに齧りついていなければ生きていくのは難しいんだそうだ。」
「何それ??」
「お前が知らないって事は、何かの本とかをなぞっていたんじゃ無かったんだな……。」
あの時言われた言葉の意味が、俺にはやっと少しだけわかった。
縛りのない自由は無秩序であるように、縛りを持たない人間は意味を持つことが出来ない。
だから人はその意味を求めて、何かに齧り付き、意味を得て持つのだ。
「俺は、皆がいたから自由でいられたんだ。皆がいなくなったら、俺は自由じゃないよ……。」
「主……。」
「皆が俺が無事じゃなきゃ覚悟を決めた意味がないのと同じように、俺は皆がいてくれなかったら自由でいる意味がないんだ。」
「でも……っ!!」
「俺には……皆が必要なんだよ……シルク。俺が俺である為に、俺が俺として生きている為に。」
「主……。」
「俺には……皆が必要なんだ。自由でいる為に……。」
言葉にしてみて、それはひどくしっくり自分に馴染んだ。
そうだ、俺が自分勝手でいられるのは、皆がいるからだ。
皆がいるから、自由気ままに自分勝手でいられたんだ。
皆がいなかったら、それはただの傍若無人なのだ。
皆が呆れて、時には叱りとばして、笑い飛ばしてくれるから、俺は自由でいられたんだ。
皆という縛りがなくなったら、それはもう自由じゃない。
「シルク、頼みがある。」
俺はまっすぐにシルクの目を見つめた。
もう迷わなかった。
「ここで俺ともう少し踏ん張って欲しい。今はまだ、たとえ裁判が正常に開かれても、俺達を陥れた連中を一掃できるほどの抗力を得られていない。ここで間違いなく一掃しなかったら、中央王国に確実な未来はない。それは王国の仲間の未来がないって事だ。俺は皆が必要だ。だから頼む。危険なのは承知の上だ。それでも、限界までできる限りの事がしたい。俺には、皆が必要なんだよ……。」
じっと目を見つめながら、俺はシルクに訴えた。
俺の従者だからとか片腕だからとかではなく、仲間の一人であるシルクに俺は訴えかけた。
シルクの目は揺れていた。
俺を逃がす為に多くの犠牲を覚悟した仲間の想いと、仲間を必要とする俺の想い、どちらもわかるから答えが出せないのだ。
「ここにいるのは俺達だけだ。俺達がここから確実な反撃材料を持って帰らなかったら、あいつらに未来はないと思う。だから頼む。もう少しだけ一緒に頑張ってくれ。頼む。」
俺はじっとシルクの目を見つめていた。
シルクもまた、俺の目をまっすぐ見返していた。
どれくらい時間が経っただろうか?
シルクがふぅ……と息を吐き出した。
一度、目を伏せ、そして俺をまっすぐ見つめた。
意志のある目だった。
「……わかった。俺は主に従う。……でも、本当にヤバくなったら、また気絶させて担いででも連れて逃げるから覚悟してよ?」
そう言ってニッと笑った。
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