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青空
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野田の動画はすごい勢いで拡散していった。ニュースになって警察も、学校も真相の究明に乗り出さなければならなくなった。動画の内容のせいで野田をそのままにできず警察は野田に事情を聞いた。浩二から事件の真相を聞いた信一の父母は事故だと野田をかばった。結果として素行も良く未成年だったので野田の刑事責任は問われなかった。
秋山と小沢は野田をいじめていてそれが信一の事故の原因の一つだと結論付けられた。それはまず生徒たちのラインで広まった。二人は何かと他の生徒たちとトラブルを起こしていたから好意的なコメントは少なく誹謗中傷も広がっていった。
拡散された動画はあらゆる分野で取り上げられた。色々な分野のコメンテーター達の様々な分析が話題となった。ところが、ある日突然動画は加工されたものだと報道され、生徒たちは画像を加工して拡散したと注意された。
学校側は野田を1週間の停学処分にした。野田は憔悴しきっていたが、夏休みを前に転校していった。秋山と小沢のいじめはSNS上で暴露された。二人の親たちは子供の将来を心配したようだ。彼らもまた転校していった。
夏休みになり、お盆の最後の日に健太と真一を見送るため浩二と美緒は二人で墓参りに来ていた。二列ほど離れた場所に岩倉家、西原家の墓がある。健太と真一は偶然にもごく近くに眠っていた。
墓に添えられた花はまだしおれていなかったし、墓もきれいに掃除されている。浩二と美緒は花の水を取り替え、線香をたいて墓に向かって手を合わせた。
「兄さん、野田は父さんと母さんに何度も謝っていた。秋山と小沢はいじめがばれてさんざんだ。そして、三人とも転校していったよ。」
二人が墓を後にしようとした時だった。にこやかに微笑んで信一が手を振る姿があった。そばに健太も微笑んでいる。美緒だけでなく浩二にもその姿が見えた。
「お姉ちゃん、僕たちもう帰るね。でも、またきっといつか会えるから」
「僕ね、もうすぐまたお姉ちゃんに会えるよ」
目を大きく見開いている浩二のそばで美緒は言った。
「亡くなった家族が帰って来るのはお盆だけではないんだって。仏様に南無阿弥陀仏と唱えると帰ってきてくれるとおばあちゃんが教えてくれたの」
浩二は黙ってうなづいた。
「おばあちゃんが仏壇に向かって南無阿弥陀仏って唱えていた時、健太の位牌が倒れたそうよ。ちょうどガラスが飛び散ったあの時の事だと思うの」
「健太君が助けてくれた」
ゆっくりと言い聞かせるように浩二が続けた。
美緒は静かにうなづいた。そしてつぶやいた。
「転生......」
「二人が生まれ変わる日は近いのかしら。また健太はきっといつか会えるって言ってた」
「健太君はもうすぐ、兄さんにも少したったらきっと会える」
浩二と美緒は二人の立っていたあたりを見た。真夏の強い日差しとうるさいほどのセミの泣声が二人を包んでいた。
秋山と小沢は野田をいじめていてそれが信一の事故の原因の一つだと結論付けられた。それはまず生徒たちのラインで広まった。二人は何かと他の生徒たちとトラブルを起こしていたから好意的なコメントは少なく誹謗中傷も広がっていった。
拡散された動画はあらゆる分野で取り上げられた。色々な分野のコメンテーター達の様々な分析が話題となった。ところが、ある日突然動画は加工されたものだと報道され、生徒たちは画像を加工して拡散したと注意された。
学校側は野田を1週間の停学処分にした。野田は憔悴しきっていたが、夏休みを前に転校していった。秋山と小沢のいじめはSNS上で暴露された。二人の親たちは子供の将来を心配したようだ。彼らもまた転校していった。
夏休みになり、お盆の最後の日に健太と真一を見送るため浩二と美緒は二人で墓参りに来ていた。二列ほど離れた場所に岩倉家、西原家の墓がある。健太と真一は偶然にもごく近くに眠っていた。
墓に添えられた花はまだしおれていなかったし、墓もきれいに掃除されている。浩二と美緒は花の水を取り替え、線香をたいて墓に向かって手を合わせた。
「兄さん、野田は父さんと母さんに何度も謝っていた。秋山と小沢はいじめがばれてさんざんだ。そして、三人とも転校していったよ。」
二人が墓を後にしようとした時だった。にこやかに微笑んで信一が手を振る姿があった。そばに健太も微笑んでいる。美緒だけでなく浩二にもその姿が見えた。
「お姉ちゃん、僕たちもう帰るね。でも、またきっといつか会えるから」
「僕ね、もうすぐまたお姉ちゃんに会えるよ」
目を大きく見開いている浩二のそばで美緒は言った。
「亡くなった家族が帰って来るのはお盆だけではないんだって。仏様に南無阿弥陀仏と唱えると帰ってきてくれるとおばあちゃんが教えてくれたの」
浩二は黙ってうなづいた。
「おばあちゃんが仏壇に向かって南無阿弥陀仏って唱えていた時、健太の位牌が倒れたそうよ。ちょうどガラスが飛び散ったあの時の事だと思うの」
「健太君が助けてくれた」
ゆっくりと言い聞かせるように浩二が続けた。
美緒は静かにうなづいた。そしてつぶやいた。
「転生......」
「二人が生まれ変わる日は近いのかしら。また健太はきっといつか会えるって言ってた」
「健太君はもうすぐ、兄さんにも少したったらきっと会える」
浩二と美緒は二人の立っていたあたりを見た。真夏の強い日差しとうるさいほどのセミの泣声が二人を包んでいた。
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