完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール

文字の大きさ
13 / 27

11話

 それから暫くして、本人達の意思は無視され、婚約の話しは進んでしまった。
 エマ嬢も私と同じ年齢なので、これ以上、自由に生きることは許されなかったという。
 お互いの両親の思惑通り事が運んだのだ。
 その後、何度か二人で会って色々な会話を楽しんだ。
 その頃には、当たり前のように婚約が交わされた。

 只、大臣と国王の周辺が、にわかに様子がおかしい。
 早急に手を打たなければいけない状況だ。
 婚姻は今回の件に片が付いてから行うこととなった。

 早速いつもの顔ぶれが集まった。
 今迄は五人での会談だったが、今日からは隣国リンドバーグ国に詳しいエマ嬢も参加することとなった。
 そしてルナ王妃にブラバント公爵は娘を紹介した。

「王妃様、次女娘のエマでございます、隣国のリンドバーグ王国に留学しておりましたが、この度、卒業して帰って来たところでございます。
 ご承知かとは存じますが、エマの姉シャーロットはリンドバーグ王国の第二王子に嫁いでおります」
 
 するとルナ王妃は静かに微笑み、願いを口にした。

「勿論、存じ上げております。どうかこの度の件、お知恵をお貸し下さい」
 
 そしてブラバント公爵はルナ王妃に伝えた。

「それから、この度、宰相殿との婚約が結ばれましたので、ここにご報告させて頂きます」
 
 ルナは心の動揺を必死で隠した。
 傍(かたわ)らに居たデイビスも同じく動揺していた。
 そんな二人の表情をエマは、見逃さなかった。
 しかし、エマは気づかぬふりをしながらルナ王妃に挨拶をした。

「お初にお目にかかります。ブラバント公爵家の次女、エマ・クライアンと申します。どうぞお見知りおき下さい」
 
 ルナは動揺を隠しながら静かに微笑み返した。

 それから、話し合いが行われた。
 その内容はどうも、大臣と国王は下院で、他国に対しての関税引き上げを容認させようと必死なようだが、中々賛成の人数が集まらず、王命を発動するか迷っているようだ。
 そこで国王をから金を引き出し、下院の者達に賄賂を渡すつもりらしい。
 もしそうなれば、今や絶大な力を持つ下院は無視できない。
 その法案が上院に上がってしまえば、決定せざるを得ない。
 そんなことになれば、間違いなく国は荒れる。
 この時ルナは直接、国王と対峙することを決心した。

 そしてひとまず、今回のことは自分に預けて欲しいと言って解散とした。
 正直、この場の雰囲気から逃げたい為の解散でもあった。
 今はデイビス様のことを考えている時ではないと頭では分かっていても、やはり心はざわついていた。

 それでもルナは気持ちを切り替え、すぐに国王に先触れを出した。

 心の中で(一応は夫婦なのに先触れとは)と思いながら。
 そして指定した執務室にやって来たのは国王だけではなく、大臣も一緒だった。
 ルナは大臣に毅然とした態度をとった。

「私がお呼びしたのは、陛下だけですが」
 
「私が頼んで来てもらったのだ」
 
 陛下は、ばつが悪そうに言う。

 本当に一人では何もできない人なのだとルナは呆れながら返した。

「分かりました」

 そして本題に入った。
 
「他国に対する関税の件、そう申し上げれば、私が何の為にお呼びだてしたのかお分かりですね」
 すると大臣は尋ねてきた。

「どこでそれを?」
 
「宰相の手の者が下院から得た情報なので確かなことです」

 すると扉がノックされた。
入って来たのは宰相のデイビスだった。
 ルナは驚きながら尋ねた。

「どうして?」

「書記官から陛下に出した先触れのことを聞いたもので、気になりまして」
 
「分かりました。話しの続きを致しましょう」

 そう言って、先程からの話しが始まる。

 ルナは大臣と国王を問い詰めた。

「何故、他国に急な関税の引き上げをしようとするのですか?」
 
 それに対し大臣は、我が国の貿易赤字を減らす為、関税を引き上げれば高くなった他国の物より国内の物が売れる。  
 そうなれば他国も高い税を払わずに済むように、我が国に生産拠点を移してくるだろう。
 そうすれば国民の雇用にも繋がる。
 今迄、我が国は他国に散々儲けさせた、これからは我が国も同じだけ関税を引き上げるだけだ。
 つまりは相互関税という訳だ。

 もっともそうに言っている。

 しかしそんなことをすればどんなことになるのか全く理解していない。
 宰相とルナは、その考えを真っ向から否定した。

 本当にこの国のことを考えるなら、品物にしろ、食べ物にしろ良質な物を作れる技術力を上げるべきだ。
 それに関税を引き上げるにしろ、急に上げては他国が我が国に生産拠点を移す資金を断つことになりかねない。
 確かに貿易戦争にでもなれば、貿易赤字国の方が有利なのは分かる。
 他国は、我が国が物を買うことによって潤っているのだから。
 しかし限度がある。
 こんな急な上げ方など。
 それに赤字だの物価上昇(インフレ)だのと二人は騒いでいるが、インフレには良いインフレと悪いインフレがある。
 我が国のように、賃金が高い場合は良いインフレだ。
 そもそも他国だって対抗措置として、我が国に対し関税を引き上げて来る可能性も十分ある。
 そう言い返したらなんと国王は馬鹿なことを言う。

「それではまた、それ以上に関税を倍に引き上げればよいではないか」

 もう呆れて言い返す気力もない。
 私の中で何かが切れた。
 それも音を立てて。
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう我慢の限界ですわ〜私は、ただの都合の良い婚約者ではありません――もう、二度と私に話しかけないでくださいませ

野良うさぎ(うさこ)
恋愛
男爵家令嬢の私には、婚約者がいた。 その婚約者は、公爵令嬢の護衛で大忙し。 その婚約者の家は、男尊女卑が強くて、私のことをただの便利で都合の良い令嬢としか見ていなくて―― もう我慢の限界ですわ

選ばれなかったのは、どちら?

白瀬しおん
恋愛
「あなた、本当にうちの家にふさわしいと思っているの?」 その一言で、すべては終わるはずだった。 婚約者は沈黙し、公爵夫人は微笑む。 わたくしはただ、静かに席を立った。 ――それで、終わりのはずだったのに。 届いた一通の封書。 王城からの照会。 そして、夜会に現れた“迎え”。 その日、選ばれたのは――どちらだったのか。

婚約破棄されたので、もう頑張りません 〜静かな公爵に放っておかれたら、本当の人生が始まりました〜

あう
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください

mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。 「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」 大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です! 男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。 どこに、捻じ込めると言うのですか! ※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

mios
恋愛
「さあ、侯爵家に関係のない方は出て行ってくださる?」 父の死後、すぐに私は後妻とその娘を追い出した。

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

「仕方ない」には疲れました ~三年続いた白い結婚を終わらせたら、辺境公爵の溺愛が待っていました~

ゆぷしろん
恋愛
 「仕方ない」と白い結婚に耐え続けていた伯爵夫人エリス。  彼女の誕生日、夫は幼なじみのセシリアを屋敷に連れ帰り、エリスが大切にしてきた猫を彼女に見せろと言う。冷めた晩餐の前で心が折れたエリスは、ついに離縁を宣言し実家へ戻った。  彼女の薬草知識と領地経営の才は、北方を守る公爵ディートリヒが目を留める。流行り病に苦しむ公爵領を救うため奮闘するエリスは、初めて努力を認められ、大切に扱われる喜びを知っていく。一方で彼女を失った元夫の伯爵家は傾き、身勝手な幼なじみの嘘も暴かれて――。  我慢をやめた傷心令嬢が、辺境公爵に溺愛され、自分らしい幸せを選び直す逆転愛されファンタジー。

【完結】で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?

Debby
恋愛
 キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とその婚約者のシアン・フロスティ公爵令息の前に、昨年までシアンが留学していた隣国での友人が現れた。  その友人はロベリーと名乗り、シアン不在の時を狙い、キャナリィに何かと声をかけてくる。  キャナリィの幼馴染み兼親友のクラレット・メイズ伯爵令嬢の「必要以上にキャナリィに近付くな」と言う忠告も無視するロベリーと何故かロベリーを受け入れるキャナリィ。  キャナリィの不貞の噂が学園に流れる中開かれた新入生歓迎のガーデンパーティーで、ロベリーに心惹かれた令嬢によってそれは取り返しのつかない事態にまで発展してしまう。 「で、まずはあなたが私に嫌がらせをする理由をお聞かせいだいても宜しいかしら?──」  キャナリィに近付くロベリーの目的は?  不貞を疑われたキャナリィは無事にその場を収めることが出来るのだろうか? ---------- 覗いて頂いてありがとうございます。 ★2025.4.26HOTランキング1位になりました。読んでくださったかた、ありがとうございます(^-^) ★このお話は「で。」シリーズの第二弾です。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入りました。良かったら覗いてみてくださいね。 (*´▽`人)アリガトウ