完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール

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22話

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 デイビスとルナの婚約が結ばれてから半年が経過した。
 隣接する国々とは良好な関係を築けていた。
 関税交渉に関しては、双方の利益が一致する形で三国共、ほぼ同じ条件で締結された。
 一つ心配があるとすれば、我が国の鉱物資源だ。
 輸出先での輸入関税は引き下げてもらったが、いずれは枯渇する資源だということだ。
 その時までには代替となる輸出品を考えなければいけない。
 最も、その頃には今ルナ嬢が取り組んでいる学校の卒業生達が技術革新をもたらし、安心安全で高度な製品を生み出し、国内は勿論、他国も欲しがる商品を開発できているかもしれない。
 そうなれば雇用も増え、国内需要も増加して、本当の意味で国力が強くなるといえる。
 なんとか、実を結ぶように期待をしよう。
 とにかくその為にも国を挙げて人を育てなくてはいけない。
 大国だと胡座(あぐら)をかかず、日々努力を怠らないようにしなくてはと強く思う。

 いつかの大臣や国王のように、大国だからといって武力や経済力を盾にした一方的な関税引き上げは、ただ軋轢(あつれき)が生じるだけだ。
 何故あの時二人は安易に関税引き上げという手段を取ってしまったのだろうか? 私への対抗心は感じていたがそれにしても焦りすぎだ。
 国力を上げるには時間を要する。
 それさえも分からず、目の前の結果だけで国民が騙せると思ったのだとしたらそれは余りに愚かだ。
 大臣や国王が建前上、自国の為として強引な税の引き上げを行ったことは、結果的には自国の首を絞め、最後には己の命までもを落とす結果となってしまったのだから。
 全てを踏まえ、これからこの国をエマ嬢が望んだ、皆が平等で自由を得られ、そして貧富の差がなく誰もが学べる国にする為、多くの人達の力を借りながらルナ嬢と共に支え合い、歩んで行こう。
 そしてエマ嬢がいつか、この国に住みたいと望んでくれる国を目指そうと、心に誓いを立てた。
 それが私達にしてくれたエマ嬢へのせめてもの恩返しになる、そんな気がした。
 あの時エマ嬢がいなかったら今、この国や自分達もどうなっていたかわからない。
 自らリンドバーグへ交渉に赴いてくれ、会談を成功へと導いてくれたのはエマ嬢の功績だ、そんな彼女に敬意と感謝を伝えたい。
 いつか会える日が来ることを思いながら。
 そしてその日がいつ訪れてもいいように今は只、この国の為に邁進(まいしん)して行こう。
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